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量産兵のボクにチートなアドバイザー(オレ)がつきました  作者: 星野林


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戦闘訓練

 装置の置かれた部屋の外……廊下を歩きながら、周りを見る。


 ガラス……と思われる壁の中にはボクと同じ顔の個体が訓練を行なっていた。


(《オレ》……ちょっといい?)


 〈なんだ? 〉


(あそこにボクも行くってこと)


 〈ああ、そうだ。ここで兵士になるための最低限の訓練が施されるハズだ。でも恵まれている方だぞ〉


(これが?)


 壁の奥では剣を握りながらほぼ殺し合いの様な鍛錬が行われている。


 あ、今……胸に剣が突き刺さって……。


 〈《オレ》達は量産された兵士だからな。素材さえあれば量産できるってことだろう。胸糞悪いけどな〉


 まずはこの殺し合いの様な環境に適応しなければボク達2人も死んでしまうってわけ……か。


「怖気づいたか?」


 ロゼリー博士がいつの間にかボクの方を見ている。


「いえ……大丈夫です」


「ふむ……感情の起伏が激しい……確かPL358番は覚醒前から脳の動きが活発だったか……他の個体と違う部分があるのか?」


 ペラペラとボクのデータが描かれた書類をロゼリー博士は眺めている。


 すると、ボクの部屋に到着したらしく、部屋の中に案内された。


 それはまるで独房である。


 部屋の中にトイレと簡素なベッド、ちょっとした本棚に本が何冊か置かれていているのみ。


 ガチャンと中に入れられてから鍵をかけられる。


「PL358番部屋への案内完了しました」


『同ロットの個体が覚醒を終え次第順次訓練を開始する』


「了解……PL358番当面待機だ。休めるうちに休んでおくと良い」


 ロゼリー博士はそう言うと部屋の前から立ち去っていった。


 〈おい、速攻で本を読め〉


《オレ》が本を読むように勧めてくる。


 彼曰く、ゲームで人間側も人造人間を作っていて、似たような訓練施設があるらしいが、そこでは本が攻略の鍵になったのだとか。


 死にたくないのでボクは必死に本を読んでいくと、本はボクの理解できる文字で基本となる魔法について書かれていた。


「ファイヤーボール!」


 本を読み進めること1時間。


《オレ》の補助もあったけどファイヤーボールの魔法を覚えることができた。


 〈ちっ、これ以外の魔法については書かれてないか〉


(これだけで同族殺しをさせられるのかな?)


 〈いや、そんなことは無いはずだ……まずは試験が入るはずだ。ちゃんと訓練に耐えられる個体であるかどうかの……もしかしたら今この瞬間も研究者達に監視されているかもな。ファイヤーボールの魔法をすぐに覚えられたのは良かったかもしれないぞ〉


(そうかな?)


 さっき出入りした入り口ではなく、部屋の奥の扉が開いた。


『実験体PL358番通路を進み黄色の扉に入りなさい』


 アナウンスが入る。


 声はロゼリー博士だった。


 ボクは今いる部屋を出ると、幾つも色つきの扉が広がっていた。


 その中から黄色の扉を開けると、部屋の中には緑色の人型の小鬼……ゴブリンが肉を貪り食っていた。


 〈妙だ、この世界世界のゴブリンは子供と同じくらいの知能はある。それが無いってことは〉


(これもボクらと同じ作られた存在ってこと?)


 〈だろうな……最初の訓練はこれを倒せってことか? 〉


 ボクの前……ゴブリンとの間には鉄格子で遮れている。


『1度だけ話します。今から30分以内に横にあるスイッチを押すと、鉄格子が開く。部屋に置かれている武器を選んでゴブリンを倒せば今日の訓練は完了。部屋に食事が提供される。30分以内に倒せなかった場合食事が抜きとなる』


 説明だけ終わると、音声が切られ、砂時計がひっくり返った。


 砂時計の砂が落ち終わるまでに倒せば良いのだろう。


 部屋に置かれた武器はナイフ、ロングソード、槍、手斧、それに盾が置かれている。


 〈槍は論外だ。鉄格子の隙間からゴブリンを倒せるかもしれないが、今後の訓練も今回手に取った武器を使うことになる。ゲームだとそうなった。盾は絶対に持て。生存率が劇的に変わる……武器は手斧がいいだろう。ナイフは投げれるが、片手武器とするとリーチが短すぎる〉


 ロングソードは重いけど盾と併用は可能だが、それを考える個体は出てくるだろう。


 槍は部屋の中で戦うなら部屋が狭くて突きしかできない。


 ロングソードと盾がオーソドックスだが、だったら軽くて振り回しやすい手斧の方が盾と合っている。


《オレ》はそう判断したらしい。


 ボクもここは《オレ》の判断に従っておく。


 〈それに柵の外から攻撃できる手段は魔法が《オレ》達にはあるだろう〉


(う、うん!)


 ボクは手斧と盾を構えながら柵越しにファイヤーボールの魔法を連発する。


 すると柵の隙間からファイヤーボールがゴブリンに命中して火達磨になり、黒焦げになって事欠かれた。


 扉が開き、外にでられるようになる。


 〈ちょっと待て、ボタンを押してみろ〉


《オレ》に言われたので柵を操作するボタンを押すと柵が開いた。


《オレ》の案内でゴブリンがいた部屋側の扉を開いてみると、小部屋になっていて、そこに傷薬が置かれていた。


 〈ゲームで傷薬が置いてあったから……今回もあるとは思わなかったが、持って帰るぞ〉


(うん)


 傷薬……塗り薬タイプで、ボクの知識によれば、塗ればたちまち傷口が塞がる。


 ただ内臓とかには効かないのであくまで切傷程度の薬だ。


 傷薬の入った小箱と手斧、盾を抱えて部屋に戻ると、今日の食事が用意されていた。


 パンとちょっとしたスープ、何かの肉の塊。


(なんの肉これ?)


 〈たぶんだが……ミートスライムを培養した肉じゃないか? 〉


《オレ》に聞いても、流石に食事までは分からなかった。


 ただ思ったよりも美味しくて、何だか力が湧いてくるような感じがした。


 食事を終えたボクは疲れを残すとまずいからと《オレ》に早く寝るように勧められ、ベッドの上で眠りに就く。


(これ……あと何日続くんだろう?)


 〈魔王軍もそんなに余裕があるわけじゃないだろう。数日から数週間で卒業だよ。そしたら前線送りだ。最初は肉壁扱いされるだろうが、何とかして生き残るぞ〉


(ひい……この施設生き残っても外も地獄か……)










 翌日、《オレ》に起きるように促され、眠い目を擦って起きると、体操をするように脳内にイメージが送られてきた。


《オレ》によるとラジオ体操という体を解して、動きやすくなるのだとか。


 屈伸をしたり、手足を回したり、ジャンプしたり……心なしか体がぽかぽかしているような。


 すると朝食が部屋隅に描かれた魔法陣の上に転送されてきた。


 食べ終わった器とかを魔法陣に置いておくと勝手に転送されて片付けられるので便利だったり。


 朝食も昨日と似た感じでスープの味や肉の味付けが違った。


 手掴みで食べ終えてから、トイレの上にある洗面台で手を洗っておく。


 そして部屋の中で何度か斧と盾を持って素振りを繰り返していると、再びアナウンスが。


 武器を持って、青色の部屋に入るように促されると、青色の部屋は黄色の部屋よりも少し広く、部屋の中には木製の人型ゴーレムが何体か待機していた。


 どうやら今日はこいつを倒す必要があるらしい。


『目標の破壊、もしくは1時間生存で訓練を終了とする』


 アナウンスのすぐ後にウッドゴーレムが3体動き始め、ボクに襲いかかる。


 〈斧で狙うなら手足の関節部分だ。《オレ》がファイヤーボールで援護するから、気にせずに斧を振るうことに集中しろ〉


「う、うん!」


 襲いかかってくるウッドゴーレムの動きを観ながら、殴られるのを盾で受け流し、体勢が崩れたウッドゴーレムの1体の左腕に斧を叩きつける。


 ズバ! 


 思ったよりも簡単に腕を切断することができた。


 そして他のゴーレムには《オレ》がファイヤーボールを連発して牽制してくれている。


《オレ》に体の主導権は渡してないけど、魔法を使うことはできるっぽい。



 燃えながら襲いかかってくるウッドゴーレムをボクは尻尾を振り回して壁に叩きつける。


 片腕を失ったウッドゴーレムも《オレ》がファイヤーボールで燃やしてくれて、戦闘時間は3分ちょっとでウッドゴーレム3体を倒すことができた。


 するとガチャンって扉が開く音が響き、ボク達は青色の扉の部屋から無事に出ることができるのだった。

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