「死にたい」と願う度に魔力が10倍になる令嬢のラスボス化をくいとめてみせる
6歳の洗礼の日、エレナ・ハーシェルの魔力値は10だと判明した。
王国では、魔力値が100あれば日常生活で困ることはない。300を超えれば魔術を専門に学ぶ道が開け、500を超える者は王宮や騎士団から声がかかる。歴史に名を残した大魔術師の魔力値は700程度だったという。
魔力値は生まれながらに決まっており、洗礼の際に初めて測定される。その値が後から増えることはない。
だから、10という数字を告げられたとき、神官は気の毒そうにエレナを見た。父は何も言わず、母は屋敷へ戻る馬車の中で、一度もエレナの顔を見なかった。
ハーシェル伯爵家は代々、優秀な魔術師を輩出してきた家だった。父の魔力値は512、母は396。2つ年上の兄は529だった。
その家に生まれた娘が、10。そして、その数字は一生変わらない。
エレナの生活が変わるには、それだけで十分だった。
翌日から、家族と食卓を囲むことを許されなくなった。
「お前を見ると食事がまずくなる」
父にそう言われ、朝も夜も自室で食べるようになった。運ばれてくる料理も次第に粗末になり、温かいスープが冷えたパンになり、やがて使用人たちの残り物が皿に載るようになった。
家庭教師は兄だけを教えるようになった。
母はエレナのドレスや装飾品を親戚の娘へ譲り、代わりに古い服を着せた。成長して袖が短くなっても、新しいものは用意されなかった。
それでもエレナは、いい子にしていれば、いつか以前のように戻れるのではないかと思っていた。
毎朝きちんと挨拶をし、食事が冷たくても残さなかった。兄が家庭教師から教わっている内容を廊下の向こうから聞いて覚え、母の誕生日には庭で咲いていた花を摘んで、小さな花束を作った。
「お母様、お誕生日おめでとうございます」
母は花束を受け取らなかった。
「エレナ。あなた、自分がどういう立場なのか分かっているの?」
伸ばしていた手が止まった。
「……ごめんなさい」
「謝ってほしいわけではないの。せめて目立たずに暮らしてちょうだい。あなたがいるだけで、私は周囲から同情されるのよ」
花束を持ったまま、エレナは部屋へ戻った。
翌年の誕生日には、何もしなかった。
7歳の冬、エレナは廊下で使用人たちの話し声を聞いた。
「魔力値が10しかないんでしょう? 平民でも、もう少しありますよ」
「奥様もお気の毒よね。あんな子を産んだせいで、ずいぶん恥をかかされたそうよ」
「だったら、どうしてまだ屋敷に置いているのかしら」
「さすがに実の娘を捨てるわけにはいかないでしょう」
笑い声が聞こえた。
エレナは足音を立てないように、その場を離れた。
自室と呼ばれているのは、今では屋敷の端にある小さな部屋だった。暖炉はなく、冬になると窓の内側に薄く霜が張る。
ベッドにもぐっても、指先はなかなか温まらなかった。
以前は母が寝る前に頬へ口づけてくれたことを思い出した。父の膝に乗って、兄と3人で絵本を読んでもらったこともある。
あれは、魔力値が10だと分かる前のことだった。
もし自分の魔力値が300だったら。せめて100あったなら、今も家族と一緒に食事をして、母は笑ってくれたのだろうか。
けれど、魔力値は一生変わらず、努力して増やすこともできない。自分にはどうすることもできなかった。
エレナは布団の中で小さく丸くなった。
この家では、誰も自分にいてほしいと思っていない。むしろ、いないほうがいいらしい。
「……死んでしまったほうが、いいのかしら」
声にすると、不思議なくらい納得できた。
自分がいなくなれば、父は恥をかかなくて済む。母も、もう周囲から同情されない。兄に迷惑をかけることもない。
きっと、みんなそのほうが幸せなのだ。
エレナは目を閉じた。
――その瞬間、エレナの魔力値は100になった。
しかし、この世界では、決して変わるはずのない数字が10倍になったことを、誰も知らなかった。
◆
10歳になったエレナは、王立学園へ入学した。
入学書類には、6歳の洗礼で測定した魔力値が記されている。
10。
貴族、それもハーシェル伯爵家の子女としては、ありえないほど低い数字だった。それでも王国では就学が義務づけられているため、父もエレナを学園へ通わせないわけにはいかなかった。
当然、魔力値10の伯爵令嬢を嘲る者はたくさんいた。
「魔術実技は見学なさったら?」
同級生の令嬢にそう言われても、エレナは笑って受け流した。
「お気遣いありがとうございます。でも、せっかくですから参加してみます」
魔力値が低いぶん、知識で補えばいい。そう思って、エレナは人一倍勉強した。
魔術式を覚え、魔石の性質を学び、魔力を効率よく扱う方法を調べた。実技でも諦めず、ほんのわずかな魔力で術式を成立させる練習を重ねた。
ところが、努力すればするほど笑われた。
「10しかないのに、何を目指しているの?」
「筆記だけなら宮廷魔術師にでもなれそうね」
「実際には蝋燭1本に火をつけるのが精いっぱいでしょうけど」
教科書を隠されたり、実技で使う魔石を捨てられたりした。机に「10」と大きく書かれていた日は、消えるまで黙って布で擦った。
それでも学園は、実家よりましだった。
それに、エレナには1人だけ、話のできる相手がいた。同じクラスのマリアンヌという少女だった。
「エレナ、図書館へ行くのでしょう? 私も一緒に行っていい?」
最初に声をかけられた日のことを、エレナはよく覚えている。
誰かと並んで歩くことに慣れていなくて、何を話せばいいのか分からなかった。それでもマリアンヌは気にせず、授業のことや好きな菓子のことを話してくれた。
エレナが教科書をなくしたときには、一緒に探してくれた。
「ひどいことをする人もいるのね」
そう言ってくれたことが、嬉しかった。試験でいい点を取れば、マリアンヌだけは褒めてくれた。
「また1位じゃない。すごいわ、エレナ」
「でも、筆記だけですから」
「それでもすごいことよ。私なんてあんなに勉強したのに、魔術史を3問も間違えたのよ」
エレナは笑った。家族以外の誰かと笑ったのは、ずいぶん久しぶりだった。
だから耐えられた。廊下ですれ違いざまに「10」と囁かれても、聞こえないふりができたし、学園へ来てよかったと思える日さえあった。
入学から2年が経ったころ、エレナは寮の自室へ戻る途中で、廊下の先にある談話室からマリアンヌの声が聞こえてくるのに気づいた。
「それで? 今日も一緒に図書館へ行ったの?」
「行ったわよ。毎日毎日、本当に飽きないんだから」
何人かの笑い声がした。
「よく2年も付き合えるわね」
「最初はちょっと話しかけてみようってだけだったのよ。魔力値10の伯爵令嬢がどんな子なのか、みんな知りたがっていたでしょう?」
「それが、ずいぶん長続きしたわね」
「だって面白いんだもの。何を言っても信じるのよ」
また笑い声がした。
エレナは動けなかった。
「この前なんて、教科書を一緒に探してあげたら、本気で感謝されちゃった」
「あれ、あなたが隠したんでしょう?」
「そうよ」
胸の奥が、すっと冷えた。
「エレナって私のこと、本当に友達だと思ってるみたい」
「かわいそう」
「やめてよ。笑っちゃうじゃない」
笑い声が重なった。
エレナは音を立てないようにその場を離れたが、自室までどうやって戻ったのか、よく覚えていない。
泣くこともできず、悲しいのか、恥ずかしいのか、それすらよく分からなかった。
家では、誰にも必要とされなかった。だから学園で初めてできた友人が嬉しくて、マリアンヌが声をかけてくれるたび、今日はいい日だったと思った。
2年間、ずっと。全部、自分だけがそう思っていた。
「……私、本当に馬鹿ね」
机に置いた手を見つめた。
エレナは12歳になっていた。6年前から、何ひとつ良くなっていない。
「……死にたいなあ」
今度は、自然にその言葉が出た。
――その瞬間、エレナの魔力値は1000になった。
歴史に名を残した大魔術師さえ、遥かに超える数字だった。
それでもエレナは、自分の中で何が起きたのか知らなかった。
◆
それからのエレナは、沈んだ気持ちで淡々と学園生活を送った。
そんなある日の魔術実技で、エレナの放った術が訓練用の標的を跡形もなく消し飛ばした。
エレナ自身、何が起きたのか分からなかった。
魔力値は生涯変わらないという常識がある以上、教師たちもエレナ自身の力だと考えるはずがない。不正な魔道具を使ったのではないかと疑われ、これまでの試験の成績にまで疑惑が及んだ。
エレナは否定したが、信じてもらえなかった。
学園から連絡を受けた父も、娘を庇おうとはしなかった。騒ぎが収まるまでという名目で、エレナは領地の外れにある別邸へ送られることになった。
管理人の老夫婦がいるだけで、周囲には畑と森しかない。学園から持ち帰った荷物も開けないまま、エレナはベッドに腰掛けて雨の降る窓の外を眺めていた。
学園には戻れないかもしれない。もっとも、戻ったところで何があるというのだろう。
家族には疎まれ、学園では笑いものになり、友人だと思っていた相手には騙され、努力してきた学業でさえ最後には不正を疑われた。
もう何かが良くなることを期待するのにも疲れていた。
「もう、死んでしま――」
「みゃああああああ!」
「!?」
突然、窓の外から大きな鳴き声がした。
エレナが顔を上げると、雨の中に小さな黒猫がいた。窓の下からこちらを見上げ、もう一度鳴く。
「みゃあ!」
「……猫?」
窓を開けると雨が吹き込んできた。黒猫はずぶ濡れで、細い体を震わせている。
「まあ、大変!」
エレナはすぐに外へ出て黒猫を抱き上げた。腕に収まった体は驚くほど軽く、冷え切っている。
「こんなに冷たくなって……。待っていてくださいね。すぐ温かくしますから」
「みゃ」
先ほどまで何を考えていたのかも忘れて、エレナは黒猫を抱いて屋敷へ戻った。
タオルで濡れた体を拭き、暖炉に薪を足す。何か食べさせなければと台所へ行き、牛乳を与えようとして管理人に止められたので、代わりに鶏肉を細かくして茹でてもらった。
黒猫は皿に顔を突っ込むようにして食べ始めた。
「おいしいですか?」
「みゃ」
「よかった」
あまりに夢中で食べるので、エレナは思わず笑った。
自分が笑ったことに気づいたのは、そのあとだった。
◆
黒猫にはクロと名付けた。
元気になればどこかへ行ってしまうだろうと思っていたが、クロにそのつもりはなかったらしい。初日の夜から当然のようにエレナのベッドへ潜り込み、翌朝には枕元で腹が減ったと鳴いた。
「あなた、帰るところはないのですか?」
「みゃあ」
「私の家に住むつもり?」
「にゃ」
「……そうですか」
返事をされているような気がして、エレナは笑った。
こうして始まったクロとの暮らしは、思いのほか忙しかった。朝は前足で頬を押されて起こされ、食事を用意して毛を梳く。天気が良ければ庭を歩き、クロが森へ入っていけば追いかけなければならない。
そのうち、森で見つけた薬草を庭に植えるようになった。
学園で覚えた知識が役に立った。種類ごとに育て方を調べ、小さな畑を作っているうちに、余った薬草を近くの村へ持っていくようにもなった。
最初はクロの餌を買うために訪れただけだった。
伯爵家の娘が突然やって来たことで、村人たちはしばらく遠巻きにしていたが、何度も通っているうちに顔を覚えられた。クロが店先で寝転がったり、エレナが薬草の育て方を尋ねたりするうちに、少しずつ声をかけられるようになった。
「エレナちゃん、この前の薬草、よく効いたよ。これ、持っていきな」
「こんなにたくさん?」
「畑で採れたんだよ。猫ちゃんも食べられるだろう?」
「ありがとうございます。クロ、お礼を言ってください」
「みゃあ」
「あら、お利口だねえ」
野菜をもらったり、手作りのジャムを分けてもらったりするうちに、エレナも自分で焼いた菓子や育てた薬草を持っていくようになった。
誰かに必要とされるという感覚を、エレナはほとんど知らなかった。
それは大げさなものではなく、薬草を少し分けてほしいとか、今度はこの本を貸してほしいとか、その程度のことだった。それでも頼まれれば嬉しかったし、次に村へ行く理由にもなった。
クロとの暮らしにも慣れ、むしろクロがいない生活のほうが思い出せなくなっていた。
「クロ。私の靴下を知りませんか?」
「みゃ」
「ベッドの下?」
「にゃあ」
「……ありました。どうして知っているのです?」
クロは知らん顔で毛繕いをしている。
またある日は、読みかけの本の上を占領された。
「クロ、そこを退いてください」
「みゃ」
「読めません」
「みゃあ」
「退く気はありませんね?」
「にゃ」
「分かりました。今日はここまでにします」
クロを抱き上げると、喉を鳴らしながら胸元に顔を埋めてきた。
「本当に甘えん坊ですね」
そう言いながら、エレナは嬉しそうにその背を撫でた。
もちろん、嫌なことをすべて忘れたわけではない。実家から手紙が届けば、封を切る前から胸が重くなり、学園の夢を見て夜中に目を覚ますこともあった。
ある夜も、エレナは眠れずに窓辺に座っていた。
「……結局、私は何もできなかったな」
学園を追われたことを思い出すと、自分には何の価値もないのではないかという考えが、今でもふとした拍子に顔を出した。
「私なんて、いなくても――」
「みゃ」
足元で声がした。
クロがこちらを見上げている。
「起こしてしまいましたか?」
「みゃあ」
クロはエレナの膝へ飛び乗ると、そのまま丸くなった。
「……重いですよ」
「ごろごろごろ」
「聞いていませんね」
背中を撫でると、クロは気持ちよさそうに目を細めた。
この子は、自分がいなくなったらどうするのだろう。
誰が朝ごはんを用意して、毛を梳き、雨の日に濡れて帰ってきた体を拭くのだろう。
少なくとも、クロには自分が必要らしい。
「あなたを置いてはいけませんものね」
「みゃ」
「私がいなくなったら、ごはんに困るでしょう?」
「みゃあ」
「ふふ。そんなに困りますか」
クロは立ち上がると、エレナの手に額を押しつけた。
明日はこの子の好きな鶏肉を買いに行こう。ついでに村へ寄って、頼まれていた薬草を届けよう。畑の手入れもしなければならないし、読みかけの本もまだ残っている。
やることはいくらでもあった。
エレナはクロを抱き上げ、ベッドへ戻った。
――彼女は、自分の魔力値が1000に達していることを、今も知らない。
そして、その数字が10000になる日は、いつまで経っても訪れなかった。
◆
――勝った。
黒猫こと俺は、エレナの腕の中で確信した。完全勝利である。
俺の愛読書に、『奈落の魔女』という小説があった。正確には、前世での愛読書だ。
その物語に登場するラスボスこそ、エレナ・ハーシェル。
魔力値10の落ちこぼれ令嬢として家族から虐げられ、学園ではいじめられ、最後には身に覚えのない不正を疑われて追放される。
不幸のフルコースを食らった彼女には、本人さえ知らない特殊な力があった。
――心から死を願うたび、魔力値が10倍になる。
10だった魔力値は、最初の絶望で100になった。学園で唯一の友人に裏切られ、2度目の絶望で1000になった。
そして原作のエレナは、領地の別邸へ追いやられた夜、最後の一線を越える。
『もう、死んでしまおう』
その瞬間、魔力値は10000に到達する。
人間が持つことを想定されていない膨大な魔力によって精神を侵食され、エレナはやがて王都を滅ぼす《奈落の魔女》となるのだ。
主人公たちとの最終決戦は凄まじく、王都は半壊し、騎士団はほぼ壊滅。メインキャラクターも2人死んだ。
仲間たちが死んだところでも泣いたが、後から明かされたエレナの過去を読んだときには、もっと泣いた。
誰か1人くらい、この子を助けてやれよ。
そう思ったことをよく覚えている。
それからどういうわけか、気がついたら俺は猫になっていた。それも、よりによって『奈落の魔女』の世界の黒猫である。
自分がどこにいるのか理解するまでには時間がかかった。人間の言葉は分かるのに、こちらからは「みゃあ」しか言えないし、腹は減る。知らない人間に近づけば追い払われる。転生したと分かったところで、猫には世界の情勢を調べる方法もない。
それでも町を渡り歩き、人間たちの会話を聞いているうちに、現在の年代と場所が分かった。
エレナが学園を追放される年だった。しかも、俺がいたのはハーシェル伯爵領だった。
血の気が引いた。猫だけど。
原作の記憶が正しければ、エレナが《奈落の魔女》になるまで、ほとんど時間がない。
俺は走った。
人間だったころには考えられないほど小さな体で街道を走り、何度も道を間違え、腹が減れば虫まで食べた。ようやく別邸を見つけたころには、雨が降っていた。
窓の向こうにエレナが見えた。
「もう、死んでしま――」
「みゃああああああ!」
人生、いや猫生で一番大きな声が出た。
エレナが顔を上げる。
「……猫?」
間に合った。
俺はその場でへたり込みそうになった。
危なかった。
あと2秒遅ければ、魔力値10000のラスボスが誕生するところだった。
◆
あれから5年。
俺はエレナのラスボス化を食い止めるため、日夜戦い続けてきた。
エレナが落ち込んでいたら膝に乗り、泣いていたら頬を舐める。実家から嫌な手紙が届けばその上で寝て、夜中に1人で考え込んでいたら腹を見せた。
人間だったころの俺なら、もっと気の利いたことを言えたかもしれない。大丈夫だとか、君は悪くないとか、そんな言葉をいくらでもかけられただろう。
だが、今の俺にできるのは鳴くことと、すり寄ることくらいである。
だから、できることは全部やった。
その結果が、これだ。
「クロ、今日はお魚ですよ」
かつて王都を滅ぼすはずだったラスボスが、台所で魚を焼いている。
王都は無事。騎士団も無事。原作の主人公たちがどうなったのかは知らないが、少なくとも世界を救うために命を懸ける必要はなくなったはずだ。
そしてエレナは今日も元気である。
最近の悩みといえば、薬草畑をもう少し広げるべきかということと、俺が少し太りすぎではないかということくらいだ。
完璧だ。
「クロ?」
エレナが不思議そうにこちらを見る。
「どうしてそんなに得意そうな顔をしているのです?」
「にゃあ」
世界を救ったからです。
とは言えないので、代わりに足元へすり寄った。
「もう。甘えん坊ですね」
エレナは笑って俺を抱き上げる。
そういうことにしておこう。
俺の使命は終わった。世界を救うために何かをする必要は、もうない。
ただ、エレナが二度と「死にたい」なんて思わないように、この人のそばにいようと思う。
「クロ、ごはんにしましょう」
「にゃあ」
腕の中から見える窓の外には、いつもの畑と森が広がっている。
王都を滅ぼす魔女も、それを倒す英雄も、この物語にはもう必要ない。
今日もエレナと飯を食って、暖かいベッドで眠る。
そんな毎日が続けば、それでいい。
―終わり―
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