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隣に立つ  作者: 松本ゆきみ


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9/11

夜が穏やかになる

夜が、少しだけ静かになった。

何かが解決したわけじゃない。

進路も、関係も、相変わらず未定だ。

それでも——

須郷迅は、その夜を「楽だ」と感じてしまった。

風呂から上がり、濡れた髪を雑に拭く。

テレビは点けない。

スマホだけが、手の中にある。

通知は、ない。

それでいいはずなのに、

画面を伏せることができなかった。

(……来ねぇか)

昨日までなら、

「来るな」と思っていたはずだ。

今日は、

「来なくてもいい」と思おうとしている。

それが、少しだけ楽だった。

ベッドに腰を下ろす。

天井を見る。

夜が、騒がしくない。

立てなかった夜は、

胸の奥でざらついていた。

でも今夜は、

ざらつきがない。

(……並んだだけだぞ)

朝、校門で並んだ。

それだけ。

手をつないだわけでも、

約束をしたわけでもない。

それなのに、

夜が穏やかだ。

スマホが震えた。

一瞬、呼吸が止まる。

——佐藤玲奈。

短い通知。

『今日は、もう寝ます。

 おやすみなさい』

それだけの文。

迅は、しばらく画面を見つめてから、

短く返した。

『ああ。おやすみ』

それで終わり。

なのに——

胸の奥が、ゆるむ。

(……危ねぇな)

これは、

安心していい状況じゃない。

依存は、

騒がしい感情だと思っていた。

怒りとか、

嫉妬とか、

縋りとか。

でもこれは違う。

何も起きない夜を、

 基準にし始めている。

それが、一番危ない。

迅はスマホを伏せ、

目を閉じた。

眠れる。

昨日より、

ずっと簡単に。

夜が穏やかになると、

人は油断する。

「このままでいい」と、

思ってしまう。

それが、

一歩目だと知らないまま。


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