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その先の輪郭
数年後のことを、
まだ誰も口にしていない。
でも——
輪郭は、もう見えている。
校舎の廊下。
卒業式の前日。
掲示板に貼られた紙が、
風で少し揺れる。
進学先。
就職先。
名前は、
隣り合ってはいない。
それでも、
どちらも「ここ」から続いている。
迅は、
ネクタイの結び目を少し直した。
慣れない動作。
でも、逃げない。
玲奈は、
スーツの袖を整える。
背筋が伸びる。
でも、力みすぎない。
「……なぁ」
迅が言う。
「俺らさ」
一拍。
「同じ場所には、
行かねぇな」
「そうですね」
玲奈は、
静かに答える。
「でも」
続ける。
「同じ方向は、
向いてます」
迅は、
少しだけ笑った。
それで十分だと、
分かっている顔だった。
この先、
忙しくなる。
会えない夜も、
増える。
それでも——
夜を越える方法は、
もう知っている。
隣に立つことと、
依存しないこと。
それを、
学生のうちに知った。
それは、
かなり大きなアドバンテージだ。
校舎の外へ出る。
夕方の空。
風が冷たい。
「行くか」
「はい」
それぞれの道へ。
でも、
別れじゃない。
これは、
生活になる関係への、
助走だ。




