表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隣に立つ  作者: 松本ゆきみ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/16

決定的な一線の直前

次の夜も、

会えなかった。

理由は、

特別じゃない。

試験前。

用事。

タイミング。

それだけ。

玲奈は、

短いメッセージを送った。

『今日は無理そうです。

 また明日』

それだけで、

画面を閉じた。

迅は、

その一文を、

何度も読み返した。

(……明日)

その言葉に、

縋りかける。

(ダメだ)

明日を、

約束にするな。

一度、

強く目を閉じる。

でも、

胸の奥が落ち着かない。

(……声、聞きてぇ)

気づいた瞬間、

自分で自分を殴りたくなった。

これは、

完全にアウトだ。

声を聞いたら、

安心する。

安心したら、

夜を越えられる。

それを、

「必要」だと思い始めている。

迅は、

通話ボタンの上で、

指を止めた。

一線。

ここを越えたら、

戻れなくなる。

呼び出して、

「少しだけ」と言って、

声を聞いて、

それで落ち着く。

それは、

甘えじゃない。

寄りかかりだ。

(……頼むな)

声に出さずに、

自分に言う。

玲奈は、

頼られることを拒まない。

だからこそ、

ここで頼ったら、

全部崩れる。

迅は、

スマホを机に置いた。

両手を、

膝の上で組む。

深く、

息を吸って吐く。

(……俺の夜だ)

(誰のもんでもねぇ)

そう言い聞かせながら、

震えが収まるのを待つ。

時間が、

ゆっくり進む。

しばらくして、

スマホが震えた。

——玲奈。

『ちゃんと寝てますか』

それだけ。

心臓が、

跳ねる。

迅は、

一瞬だけ目を閉じてから、

短く返した。

『ああ。大丈夫』

嘘ではない。

でも、

本当でもない。

その後、

何も続かなかった。

それでいい。

一線は、

越えなかった。

けれど——

越えなかったという事実が、

どれだけ近かったかを、

迅ははっきり自覚していた。

依存は、

まだ完成していない。

でも、

もう輪郭を持っている。

それが、

この夜の結論だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ