依存がにじむ夜
眠る直前、
迅はもう一度、スマホを手に取った。
もう、通知は来ない。
分かっている。
それでも、
画面を見てしまう。
(……何してんだ、俺)
時計を見る。
いつもより早い。
夜は、まだ長い。
昨日までなら、
この時間は落ち着かなかった。
今は違う。
理由は、
分かっている。
(あいつが、
どこかで寝てる)
それだけで、
夜が形を持つ。
不意に、
昼間の玲奈の声が蘇る。
「今日は、進路の話しません」
あの一言。
救われた、と思った。
(……違う)
救われてはいない。
ただ、
安心してしまった。
その事実が、
胸の奥で鈍く光る。
迅は、天井に向かって小さく息を吐く。
「……依存すんな」
声に出して、
自分に言う。
でも、
その言葉には力がなかった。
依存は、
相手を求めることじゃない。
相手がいる前提で、
自分の感情を組み立て始めることだ。
夜が静かなのは、
自分が強くなったからじゃない。
誰かが、
同じ時間に呼吸していると
思えるからだ。
迅は、目を閉じた。
この穏やかさは、
手放さなければならない。
そう思っているのに——
失う想像をした瞬間、
胸がきつくなる。
(……やべぇ)
これは、
もう始まっている。
依存は、
音を立てない。
ただ、
夜を基準にする。
そして気づいたときには、
戻れなくなる。
迅は、
それを知っていた。
だからこそ、
目を閉じたまま、
何も選ばなかった。




