ラベンダーの花言葉
婚約者の交流お茶会タイムです〜。
よろしくお願いします!
「お久しぶりです、マリアンナ嬢」
にこやかだけれど、特別何かを感じていなさそうな目をしたアルヴィンに出迎えられる。
刺繍入りハンカチを父に渡してもらってから、三日後。婚約者としての交流の一つに、お茶会を開く、というものがある。今日はそれを実践しようと、王宮にある庭園にお邪魔させていただいているのだ。
今回の庭園は前回のような、ニホンの庭園ではなく、こちらの世界様式の庭園だった。美しい薔薇が咲
き乱れ、目に鮮やかに映る。
わたしは、アルヴィンに微笑みかけながら、カーテシーをゆっくりと披露した。
「お久しぶりです。本日はお招きいただき、光栄ですわ。本当に、ありがとう存じます」
そう言って、微笑を控えめに浮かべてみせた。アルヴィンは、同じようにうっすらとした笑みを顔にのせると、どうぞと椅子に座るよう促す。
「そう言えば、先日の刺繍ですが、ありがとうございます。本当に、綺麗で美しい刺繍でした。ラベンダーを刺してくださっていましたよね?」
用意された紅茶を静かに飲みながらも、ええとわたしは穏やかに頷いた。アルヴィンは破顔する。
「あははっ、よりによってラベンダーとは。いいセンスをなさっていますね」
「え?どういう意味ですの?」
「ラベンダーには、『疑惑』といった花言葉があるのですよ。ご存知ありませんか」
「まあ!存じませんでしたわ!そのような、失礼なハンカチを贈ってしまっただなんて・・・。申し訳ありません、ハンカチはお手数ですけれど、破棄していただけますか?ラージェント公爵様、申し訳ありませんわ・・・」
まさか、そのような花言葉があるだなんて、知らなかったのだ。かといって、知らなかったは言い訳にならない。仮にも、王族の一員に名を連ねている彼に、疑惑のハンカチを贈るなんて、不敬罪も良いところだ。
わたしが平謝りするのに対して、アルヴィンは明朗な笑い声をたてた。
「気になさらないでください。幸せが来る。貴女は、そう言う思いを刺してくださったんですよね?」
「ええ、そう言うつもりでしたの。けれど、あまりにも失礼でしたわ。お許しいただけるなら、破棄していただきたいのですけれど。あ、それとも、もう破棄してくださったのですか?」
わたしが目を輝かせて尋ねると、アルヴィンはぐふっと吹き出しながらも、首を横に振った。
「まさか。あんなに面白いものは捨てるわけが・・・。いえ、失礼。あんなに素敵なものは捨てる気にはなれませんよ。何しろ、優しい婚約者殿が刺してくださった刺繍ですからね」
「そう、面白いもの、ですか。人が一生懸命作り上げたものをそのように仰るんですね。わたくし、学びましたわ。ラージェント公爵様。どうぞ、お持ちになれば良いのだわ。わたくし、もう知りません」
ふいっ、と顔を背けると、アルヴィンは吹いた。それはもう、盛大に。
「もうっ、いい加減にしてくださいます?わたくし、今日はもう帰りますから。失礼致しますわ」
立ち上がろうとするわたしの腕を、慌てたようにアルヴィンが掴み、座らせる。
顔を背けるわたしに、アルヴィンはすまなさそうにいった。
「本当にすみません。貴女が可愛すぎて、調子に乗りました」
その言葉に、顔が赤く染まる。なっ、とアルヴィンを見ると、余裕の笑顔でこちらを見ていた。
「もうっ!」
「ふはっ、そう言う貴女も、可愛いですね」
「わざとですね!?もう、乗りませんから!」
「あははっ、残念です」
わたしがすねたのを、その後アルヴィンが王家特製マカロンで、機嫌を取ろうとするのにまんまとはまってしまった。そして、わたしは悔しがりながらも、マカロンを味わうのだった。
引き続き、読んでくださり、ありがとうございます٩(๑❛ᴗ❛๑)۶
まだ、続きます!
投稿は不定期に行いますが、頑張るので、読んでくださると嬉しいですᕦ(ò_óˇ)ᕤ




