お手紙とハンカチ
女子力高い・・・!マリアンナ、すごい・・・!
と、書きながら、つい思ってしまった作者でした。
よろしくお願いします!
「マリアンナ。王弟殿下から、お手紙が届いたよ。それから、花束も」
父の執務室に呼ばれ、メッセージカードと花束を渡されたのは、アルヴィンと会ってから、数日後だった。
わたしははっとして、手紙を受け取る。中を開くのは、部屋に戻ってからにしよう、と決めて父に向き直る。
「ありがとうございます、お父様。———その、読んできても?」
わたしの上目遣いに父は苦笑して、もちろんだと頷いてくれた。笑顔を浮かべて、お礼を告げる。それから、一目散に自分の部屋に下がった。もちろん、淑女の鑑と言われているわたしなので、優雅に見えるよう、速度はいつも通りだ。
部屋について、そっと扉を閉め、人払いをかける。一番庭園が見えるところである、ベッドに腰掛け、メッセージカードをかさり、と開いた。
『マリアンナ嬢へ
先日は、急な顔合わせに参加していただき、ありがとうございます。
また、貴女に会えるのを楽しみにしております。
追伸. 今、貴女のための庭園の設計をしているところです。お楽しみに アルヴィン』
思わず、最後の行で目を見開く。
まさか、あの口約束のようなことを彼は実現するつもりでいてくれるのだろうか。
「冗談、かしら・・・」
ぽつり、と呟いたけれど、答えてくれる人はいない。取り敢えず、お返事をかかなければ。
届けられた手紙と同じ位の大きさのレターセットを、机から取り出す。インクは、少しキラキラと光るグリッターの材料が入った紺色のもの。光にかざすと、美しくきらめく特注品である。
なんて書こうか、迷いに迷ってもう一度、彼の流れるように美しい筆跡を眺める。
ふうぅっ、と息をはいて、漸くペンを持って書き始める。うんうん唸りながらも、なんとか手紙を完成させ、封筒に蝋印をしたのはそれから一時間後のことだった。
「よし、これで完璧ね。お父様に預ければ良いわよね」
呟き、あっと思わず声をあげた。
そう言えば、彼からは、花束もいただいたのだった。何か、わたしもプレゼントをした方が良いのだろうか。
「う〜ん、何が良いんだろう・・・」
辺りを見回して、考え込む。同じように花を返すのでは、芸がないし、ものも大抵は王弟なのだから、簡単に手に入るだろう。
「あっ、刺繍入りのハンカチはどうかしら。けれど、気持ち悪いかな」
流石に、結んだばかりの婚約の相手から刺繍入りのハンカチをもらうのは嫌だろうか。けれど、それくらいしかあげるものは思いつかなかった。
「捨てられても良いから、つくってみるだけつくってみようかしら」
そうと決めたら、すぐに糸をそろえ、真っ白のハンカチを侍女に用意してもらう。返事を贈るのは、きっと三日後とかになるだろうけれど、許してくれるはずだ。
「できた・・・」
なんとか仕上げたのは、ラベンダーの刺繍が刺してあるハンカチだ。
ラベンダーの花言葉には、『幸せが来る』という意味がある。アイヴィンの幸せを祈り、心を込めて縫い上げたものだ。そして、わたしの瞳は紫色なので、少し恥ずかしいものの、ぴったりのお花だと思ったからだった。
もう渡したら、あとは彼の采配に任せ、捨てるなり煮るなり焼くなり、好きにしてもらえれば良い。
「よし、お父様に渡してきましょう」
自分でも知らない間に微笑みを浮かべ、父に預ける。父は刺繍を見ると、笑顔になっていた。
「綺麗だな。ラベンダーか」
「ええ。『幸せが来る』という花言葉がありますの。彼の幸せを祈って、つくったものです。もちろん、捨てるなり煮るなり焼くなり、どうぞお好きになさってくださってかまいません、とだけはお伝えくださいませ。では、お願い致します」
わたしは、父が微妙な顔をしていることに気づかないまま、執務室をでた。
引き続き、読んでくださり、ありがとうございます٩(๑❛ᴗ❛๑)۶
まだ、続きます!
投稿は不定期に行いますが、頑張るので、読んでくださると嬉しいですᕦ(ò_óˇ)ᕤ