誰か分かって!
ちょっとしたネタ回です。
どうぞ、気楽にお読みくださいませ笑
「とても良くお似合いですわ、お嬢様!」
「本当に。お嬢様の銀髪が良く映えますわね!」
いよいよ舞踏会の夜。この日のために、わたしは磨き込まれた。おかげで、肌は輝かんばかりに透き通るような美しさを放っている。髪の毛は、きらきらと輝きを放ち、艶に満ちていた。
今回、アルヴィンに贈られたドレスは、アルヴィンの色である、青色と金色をモチーフとしたものだった。青色を地としたラインがすっきりとしたドレスに、金色の刺繍糸が流れるように紋様を描いている。大人っぽいけれど、決して地味ではなく、むしろ華やかなドレスだった。それでいて、シンプルさもあり、生地や糸の質で勝負したものであることが分かる、上品なドレスになっていた。
「本当に、素敵なドレスね。ランジェール公爵様にお礼を言わなくては」
わたしは、ポツリと呟くと、口角をあげてみる。笑顔の練習だ。夜会は、どうしても疲れるし、かなりの疲労がたまる。そう言うときは、必ず笑顔がこわばってしまうので、わたしは絶対に夜会の前には笑顔の練習をするように、心がけていた。
笑顔の人がいると、自分の心も和むはずだし、雰囲気も明るいものになる。だから、わたしはなるべく笑顔でいることを自分に課しているのだ。
「お嬢様。旦那様と奥様がお出かけになる際、伝言をお嬢様に預けられています」
そう言って、執事が差し出したのは、小さなメモ用紙だった。二つ折りにされているそれを、かさりと開く。
『楽しんで、社交界の白梅』
・・・あんのぉお、父め!よりによって、自分が名付けた呼び名で!!
わたしは『社交界の白梅』にふさわしい笑顔を浮かべながら、目は鋭く手紙を睨んだ。
「お嬢様?一体、如何なさいましたか?急がれませんと、間に合いませんよ」
執事が少し愉快そうに、そして白々しくそう言ってくる。おそらく、伝言の中身を知っているのだろう。
そして、わたしの『謎の異名』の名付け親であることも。
「・・・分かったわ。行ってきます。留守を頼んだわね」
わたしがなんとか笑顔を顔にはりつけ、執事に留守番を命じると、執事は笑いをこらえたようなおかしな顔で頷いた。
それから、恭しく礼をする。
「お気をつけて、いってらっしゃいませ。お嬢様」
————今の執事の顔を見たいけれど、見たくない。この気持ち、誰か分かって!
まだ投稿します!!




