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第11話 やったね!新しい仲間だよ!

 現状、ノヴァにとって最優先で解決すべき問題は電力である。

 アンドロイドの活動エネルギーとして、拠点での照明、端末操作と用途は限られているが生活に欠かせない物である。

 だが発電方法が人力発電でありノヴァにとって負担が大きいものであり、活動時間の減少と運動量の増加によって消費カロリーが爆上がりしているのである。

 カロリーに関しては狩猟じみた食糧集めで現状賄いきれる消費ペースであるが、活動時間の減少は何とかしたい。

 そこで一号に相談して彼の過去の記録から近くにある利用可能な発電施設が無いか見て回っている。


「う~ん、やっぱ現状では無理だな」


 だが結果は芳しくない、ノヴァは目の前にある風力発電機を見上げる。

 長い年月による風化を受けながらもブレードは形を未だに保っているのは、材質が良いからか防腐処置が優れているのか、あるいは両方か。

 取り敢えず風力発電機の中に入って一通り調査したが部品さえあれば修理できる、できるのだが問題は部品自体が大きく人力で運ぶのは不可能である事だ。


『そうですか、私の見通しが甘かったようです』


「いや、考え自体は悪くないよ、ただ修理するなら大規模な工事が必要になってくるし、一人じゃ無理なだけだから」


 一号のお陰で探索中に拠点を気に掛ける必要が無くなった、安心して探索出来るだけでもノヴァにとってはありがたい。

 それに一号に働いてもらうのであれば身体を直す必要があるが、直すために必要な物が色々足りていないから諦めるしかないのだ。


「やっぱ、地下の核融合炉が有力かな……」


『ですが地下には大量のグールがいます』


「結局そうなるんだよな~」


 そうなると『修理再生センター』の地下にある核融合炉が最有力候補になり、だが地下には大量のグールが棲み着いており排除しなければならない。

 実行するのであればグールを殲滅できる武器と人手が必要になってくる。

 結局の処、武器も人手も何もかもが足りないのだ。


「小型で使えるモーター探し出して小さな風力発電機を作るしかないか。一号、過去の記録で小型のモーターが見つけられそうな場所の見当はつくか?」


『でしたら、ここから南東の方角に家電量販店があった筈です』


 町の探索に関して一号が最も詳しく頼れる案内人である。

 一号は元施設の保守運用アンドロイド、そのため施設の円滑な運営の為に町を知り尽くしていたから闇雲に探索するよりも遥かに楽である。

 取り敢えず次の目的地に移動する為に地面に広げた工具類を片付けて風力発電所から離れる用意をする。

 すると風力発電機を調べている最中離れていたポチが何かを咥えて戻って来た。


「ワン!」


「お、新顔だな」


 ポチが咥えていたのはアンドロイドの頭部だ。

 軽く見た所顔の外装の半分は剝がれてフレームが剥き出しになっているが損傷はそれだけで中に有る電脳は無事かもしれない。


『頭部しかありませんが、この機体をどうするのですか』


「取り敢えず起動してみるよ。ウイルスで汚染されていても直せばいいし、一号には拠点周りの監視に専念してもらうから、この子は荷物持ちをしてもらおうか」


 今のノヴァは自衛用のクロスボウ、探索に備えた水、食料、調査用の工具等の多くの物を持ち歩いている。

 これに探索中に見つけた廃品や機械を回収すると当然だが重くなるし荷物が嵩張って動き難い、それを荷物持ちの機体が持ってくれれば負担はかなり軽減される。

 拾ったアンドロイドに合う機体を探すのは大変だが無事な電脳は貴重だ、機体を用意できれば人手が増えてくれるからな。


「今日は探索を切り上げるとするよ」


『分かりました、気を付けてお帰り下さい』





 ◆





 一号に拾ってきたアンドロイドの機種を尋ねたところテクノ社製の高級アンドロイドと言う事が判明した。

 高級機であり外装も気合が入ったもので感情モジュールを搭載する事で人間の様な喜怒哀楽を表現することが可能、より人間の近くで活動することを目的に作られたらしい。

 幸運にもアンドロイドの電脳は無事で、一号と同じようにウイルスに感染していたが既にワクチンは作ってある。

 ウイルスを除去した後は電脳の修復を行い再起動すればアンドロイドと話すだけなのだが……


「裏切者、裏切者、裏切者、裏切者、裏切者、裏切者、裏切者、裏切者、裏切者、裏切者、裏切者、裏切者、裏切者、裏切者、裏切者……」


「うわっ、マジか……」


 顔の形から推測するにこのアンドロイドはF型(女性型)であり、声も一号とは違って機械音声ではなく人間の女性の様な声である──そんな声で口から出てくるのは呪詛の言葉なのだから絵面がヤバい。

 生首状態のアンドロイドは洋ゲーにありがちな中途半端に人間に寄せた造形をしているせいでホラー映画から出て来たかのようである、正直言ってかなり怖い。

 それを考えると拠点に安置されている一号のザ・ロボットという感じで凹凸の全くない顔の方が安心できる。


『直せなかったのですか?』


「いや、直せたよ、直せたからこうなっているんだけど……」


 ウイルスを除去して、電脳の修復も行っている、アンドロイドは正常状態にあるのは間違いないのだが……。

 念の為端末で確認してみるが機能は正常と表示されている、その他の項目で何か異常は無いか確認してみるとアンドロイドの感情グラフが物凄い波打っているんだけど。

 感情モジュールが搭載されているなら、この波形は何を意味しているのか、感情が荒れ狂っているのは間違いなくて……、病んでいたりする? 

 うわっ、アンドロイドのメンタルケアなんてしたことないんだけど。


「もしも~し、聞こえてますか?」


 正直に言えば話しかけたくないし、電源が切れるまで放置しておきたい。

 それでも男にはやらねばならぬ時がある、どれだけ相手が怖くても、ホラー映画から出てきたようなビジュアルをしていてもだ。

 何よりこれ以上無駄な電力消費は避けたい、現状充電するのに漕ぎ続ける必要があってとても疲れるのだ。


「……聞こえているわよ、貴方が私を再起動してくれたのよね」


「そうですね、見つけて来たのはこの子ですが」


「クゥ~ン……」


 如何やら会話は出来るようで完全には狂っていないらしい、それより病んだ姿で冷静に会話できているからホラー度が上がってかなり怖いんですが。

 ポチも何か恐ろしいモノを感じているのか尻尾を丸めて逃げ出そうとしているのを足の間に挟むことで阻止する。

 逃がさんぞポチ、お前も道連れじゃ。


「そうですか、わざわざ壊れかけのアンドロイドを助けるなんて奇特な方もいらっしゃるんですね、驚きです。それに電脳に住み着いていたウイルスの排除とシステムの修復までして頂きどのようなお礼を申し上げればいいのか言葉に出来ません。それと此処迄して頂いた身である事は自覚していますが私を再起動させた貴方の腕を見込んでお願いがあります。私に新しい身体を下さらないかしら、可能であれば戦闘が可能な軍用の身体を」


 長文を淀みなく一息で話せるのは流石アンドロイドと思うのだが、内容がヤバすぎる。

 今すぐ電源を切って捨ててしまいたいのだが、そうすると祟られそうで怖い。

 首だけになっても噛み付いてきそうなヤバいオーラを幻視してしまう。


「わーお、何故なのか理由を聞いても」


 絶対碌な事じゃないのは間違いないのだが此処で聞かない訳にもいかない。

 無視した瞬間から祟ってきそうで、そうなった日には夜が怖くて眠れなくなる。


「この手で何が何でも壊したい機体がありますの」


 残された無事な顔面の外装が稼働して笑顔を作り、口から出てきたのは殺意に満ち満ちた言葉。

 洋画のホラー映画に勝るとも劣らないその光景を見てしまったノヴァはポチと共に小刻みに震えるしかなかった。

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