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1999年8月 大阪府大阪市

 草壁葉菜子は宗右衛門横丁にいた。


 葉菜子は大学の法学部を卒業見込みの4回生になっていた。相変わらず少林寺拳法は続けていたが、就職活動で忙しくなかなか練習ができずにいた。練習ができないとそわそわする。やはり精神安定上練習は必要なのだ。


 大阪府岸和田市にある「松崎土木」と「国広建設」に書類審査で通り、面接にこじつけることができたのは8月になってからのことである。一般的に就職活動は4月から5月までにある程度方が付いているものだが、この不景気のせいでどの企業も採用を絞っていた。葉菜子以外にも就職活動をしている同学年は多かった。


 葉菜子は社会人になったら一人暮らしをしたいと考えていた。実家から親が頻繁にこれない、それでいて遠すぎず、適度に帰省できるような距離として大阪を選んだのだった。20社ちかく応募したが、書類審査を通って面接までこぎつけたのは岸和田の2社だけだった。もうどこでもよいと思うようになっていた。


 あの人に相談すると、「自分の理想を最後まで追い続けた人が最後に勝つんだ」と返信があった。あの人とはもう高校時代から何年も連絡を取り合っている。一向に何者かはわからないけど。最近は忙しくてあまり連絡が取れてないけど。


 面接先から案内された場所は宗右衛門町という大阪・なんばからすぐ近くの商店街だった。周辺ではひっきりなしに軍歌が聞こえる。福岡でも盛んな右翼組織だ。全国展開しているのだろうか。


 そんな騒音に負けじとムーディーな曲を流し続けるメリーゴーランドが商店街の中心部にあった。なぜこんなところにあるのか。ヨーロッパには街角に突如メリーゴーランドが出現して日本人観光客が驚くことがあるというが、まさか大阪のバリバリの下町にこんなものがあるとは思わなかった。


 宗右衛門町の歴史は古く、江戸時代初期の道頓堀川開削とともに成立した。町名は開削に関わった人物の一人である山口屋宗右衛門に由来する。開闢当初から花街の性格を帯びていたが、江戸時代後期に茶屋や風呂屋が一旦整理されたものの、江戸時代の終わりの頃には茶屋株が免許され(要はお茶屋さんに見せかけた売春宿のこと)、以降昭和初期まで南地五花街のひとつとして繁栄した。


 1972年、この街を一躍有名にする名曲が発表される。平和勝次とダークホースの歌う歌謡曲「宗右衛門町ブルース」である。これが大ヒットを記録。それ以前にも奈美悦子の「大阪ブルース」やフランク永井の「大阪流し」など、歌詞に宗右衛門町が登場している名曲も数多かったが、曲名に用いられた例は珍しかった。


 葉菜子はそんな歴史ある商店街を歩いた。福岡市内にもあるような普通の商店街だった。


 商店街の一角にある雑居ビルが面接会場だった。面接まで1時間以上ある。観光がてらこの辺りを歩いてみたが、これといって何もない商店街である。この8月の暑い中、リクルート姿の女子大生はさすがに葉菜子しかいなかった。虎柄のワンピースにパンチパーマをした、少し小太りの典型的な大阪のおばさんからの好奇な視線をずっと受けていた。これは恥ずかしい。ちょっと早いけど面接会場に行ってしまえ、と思って面接会場へ向かった時である。メリーゴーランドに人影が見えた。動く馬に必死の形相で捕まっている。


 誰だろう、どこかで見た顔だが。メリーゴーランドを降りるとよたよたしながらも肩を右左に動かしながら、男が歩いてきた。薄汚れたTシャツには「1MARK」とある。あいつはもしや…。


 伊豆弓彦?


 葉菜子は一瞬目をそらした。


「おいって!ハナちゃんってもんよ!俺っち伊豆弓彦ってもんよ」


 男が寄ってくる。無視しようにもできない。周りのおばちゃんの目も痛い。


「ハナちゃん!お久しぶりってもんよ。元気にしてたってもんよ?!」

「え?あ、まあ」

「俺っちはそこにメリーゴーランドがあったから頑張って乗ったってもんよ!昔は途中で意識がなくなってたけど、今は泡吹きながらもちゃんと乗れたってもんよ。進歩したってもんよ」


 弓彦は嬉しそうに語る。そうか。この男はメリーゴーランドが苦手だったか。葉菜子が弓彦と会うのは二年ぶり、天神の雑踏で別れを告げて以来である。あのとき天神のメリーゴーランドに無理矢理乗っていれば、また別の人生が待っていたかもしれない。


「何でここにいるってもんよ?ゴモラ先輩に会いに来たってもんよ?」

「先輩とはとっくに別かれたわよ」


 葉菜子は弓彦のことで恋愛相談をゴモラ先輩によく持ち掛けていたが、いつの間にか仲良くなり付き合い始めた。しかし先輩は2年年上だった。彼は卒業後は実家の家業を継ぐと言い、大阪に帰ったのだった。結局卒業後、2、3回メールのやり取りをしたものの、それからは会っていない。


 先輩と付き合っていたのは事実だが、いつの間にか別かれてしまっていた。そう言えばゴモラ先輩の家は大阪の岸和田で建設業を営んでいたと聞いた。そんな理由からどこでもいいから建築学科のある大学を片っ端から受験して通ったという。受かったところがたまたま福岡の大学だった、とそんなことを話していた。葉菜子はつぶやいた。


「あの人も言っていたし、そろそろ行こう」

「おいって、あの人って誰だってもんよ?」


 弓彦が聞く。リクルートスーツの女と小汚いTシャツの男の会話をニヤニヤしながら見ている大阪のおばちゃんの姿がある。「若いわねぇ」「こんなところで痴話話?」そんな言葉が聞こえる。周りの視線がいよいよ痛い。


 葉菜子はおばちゃんたちの下世話な声を聴き、ちょっと感情的になった。


「そんなことどうでもいいでしょう?」

「でもなんでこんなとこにいるの?就職活動?」

「今日は旅行に来ているってもんよ」

「一人で?」

「友達とってもんよ」

「友達は?」

「京都に行ってるってもんよ」

「なんであんただけ大阪なのよ?」

「それは…聞くのはやめろってもんよ」


 葉菜子と弓彦が話していると、メリーゴーランドが回り始めた。きっと別の客を乗せたに違いない。5分ほどしてメリーゴーランドが止まると、カップルというか、夫婦らしき二人が降りてきた。関西人らしく早歩きで歩いてくる。男も女もそんなに身長は変わらないが、男の方はずんぐりした体格だ。目や口が大きく童顔で、怪獣の顔を思わせる。


「葉菜子ちゃん?葉菜子ちゃん?」


 怪獣が近寄る。もしやこの男は…、そして隣の女は…。弓彦を見ると、目をそらした。


「ゴモラ先輩、なんでここに?」

「ここは大阪や。言うてみればホームタウンや。どこにいてもおかしくないやろ」


 確かにそうである。ゴモラ先輩の実家はすぐ近くの岸和田なのだ。驚いたのはそれだけではない。弓彦が何も言わずにただ突っ立っているのだ。目を大きく開けて。


「弓彦君、どうしたの?」

「おいって」

「だからどうしたの?」

「おいって、おいって」


 ぶつぶつと弓彦はつぶやく。弓彦の目はゴモラ先輩の隣にいる女性にくぎ付けである。のっぺりとした印象を受ける女性は、少し私と似ている。ちょっとのっぺりとした、平安貴族にいそうな顔、そう葉菜子は自覚している。弓彦がゆっくりと話しかけた。


「おいって、キュン…」

「ソバット、元気?」


 キュンと呼ばれた女はにっこりと笑った。左手に指輪が光る。ゴモラ先輩が話しかけた。


「公子、そういうことやったんやな」

「全部話してしもたわ。テヘペロ」


 キュン、いや公子は笑った。弓彦は真っ青な顔をしてうつろな目をしている。


「おいって、キュン、そこにいるのはゴモラ先輩、じゃなくて、旦那さん、ってもんよ?」

「そうよ。うちの旦那様」


 公子はゴモラ先輩を抱きしめた。この2人は夫婦なのか。ゴモラ先輩はまだ卒業して1年ぐらいしかたっていないのにもう妻帯者なのか。そうなると弓彦はこの二人どどんな関係なのだろうか。

 登場人物が増えて、通行人も増えてきた。


 メリーゴーランドの可愛らしい音楽と右翼の軍歌が混じる、そんな商店街のど真ん中で四人はずっと喋っているのだ。大阪のおばちゃんたちがにやにやしながら見ている。公子に抱きしめられたゴモラ先輩が弓彦に話しかけた。


「コイツがソバットか。よく知ってるよ。公子。久しぶりやな伊豆」

「ゴモラ先輩…」


 弓彦は消え入りそうな声である。公子がニコニコしながらゴモラ先輩に言った。


「旦那様とソバットは大学が一緒やったんやね。なんて偶然」

「おいってキュン…」

「うちの名前はキュンやなくて公子や。少しだけいい夢見せてもろうたわ。でもね、少しだけ人生のセンパイから言わせてもらうと、不倫の恋なんて所詮夢や。うちも悪かった。ごめんな」

「不倫?」


 葉菜子は驚いて弓彦の顔を見る。弓彦は顔面蒼白である。


「飲塚くん不倫してたの?」

「おいって、これは純愛って」

「人妻に横恋慕して純愛も何もないやろ。手ぇだしてないだけや。手ぇ出してたら今頃大阪湾にコンクリ詰めで沈められとるわ。慰謝料請求せえへんだけでありがたいと思え。これ以上借金は増やしたくないやろ?」


 ゴモラ先輩は冗談なのか本当なのかわからないジョークを言ってひとしきり笑った。弓彦は顔面蒼白なままである。「不倫?あの四人何があったんや?」大阪のおばちゃんの声が聞こえる。ギャラリーが増えている。いよいよ視線が痛い。右翼の軍歌もうるさい。葉菜子が聞く。


「…弓彦君、ゴモラ先輩の奥さんと不倫してたの?」

「おいって、半年くらいメールのやり取りして1回だけスペースワールドでメリーゴーランド乗っただけってもんよ」

「ほう」


 ゴモラ先輩は弓彦をにらみつけた。


 弓彦は小さくなる。公子がすまなそうに言った。


「うちらもそのころ倦怠期でソバットといい感じになってしもうたわ。ごめんな。みんな旦那様に話したら3日3晩怒られたわ」

「おいって、今まで何度も大阪に来たのに、連絡もいっぱいしたのに、何だってもんよ」

「ナニワのことは夢のまた夢よ」


 公子はそういって笑った。陽気な音楽が流れ始めた。ちらりと見るとメリーゴーランドが回っている。誰か乗っているのだろうか。ゴモラ先輩は弓彦を一睨みすると、葉菜子に話しかけた。


「そういえば葉菜子ちゃん、うちの会社受けるんだって?」

「え?国広建設と松崎土木ですが…国広って…、え?ここゴモラ先輩の実家?」


 すっかり忘れていた。ゴモラ先輩の本名は『国広富幸』だった。父親が建設会社の社長だと聞いていたが。


「国広建設はオヤジの会社で、松崎土木は公子のオヤジの会社や。二人とも仲良くてな。オヤジと話して気に入ってもらえればどっちでも入社可能や」

「その娘気に入ったぞ!ワシの会社に入れ!」


 メリーゴーランドが止まり、また何者かが降りてきた。真っ黒な顔に真っ白な歯、そしてハスキーボイスである。それでいて真っ白なTシャツを着ている。何者だ?葉菜子たちはもう何時間も商店街のど真ん中で無駄話をしている気がするが、さらに登場人物が増えた。同じようにおばちゃんたちのギャラリーも増えてきている。


「お父さん!」

「お義父さん!」

「ここでは社長や」

「社長!」


 国広夫妻が声を上げた。お父さんということは建設会社の社長か?国広建設?松崎土木?まぎらわしい。


「これは初めてお目にかかります。私は株式会社・松崎土木で社長をやっとります松崎茂といいます」

「はい」


 社長は頭を下げて葉菜子に名刺を渡した。葉菜子はぺこりと頭を下げた。


「お父さん、取引先には高圧的なくせになんや、年下や社員には平身低頭なんや」

「これがワシの生き方や。社員に働いてもらわんと、ワシが休みとって旅行に行けへんやろ」


 公子はそんなことを言う父を睨みつけた。


「松崎さんというのは公子さんのお父さんになるんですね」


 名刺を見ながら葉菜子が尋ねた。社長は真っ黒な顔に白い歯を見せた。


「そうや。卒業したらうちの会社に来いや。あそこのビルでやる面接は中止や。他、面接する人が誰かいてるんやったら富幸君がやりなさい。そういうことで」

「はあ、わかりました社長」

「ここはお義父さんでいいんや」

「はあお義父さん」


 ゴモラ先輩=富幸はこんなものでよいのかと思っている。社長はぶつぶつと何かを呟いていたが、途端に目が輝いた。


「あんたは…」


 社長は弓彦の顔をまじまじと見つめた。浅黒い顔にギョロギョロした目である。


「例の福岡のコンビニオーナーのご子息じゃありまへんか」

「おいって、あんた、おれっちにTシャツくれた…」

「あれはあいさつ代わりや」


 社長は笑った。ゴモラ先輩が言う。


「今あんたのお父さんがコンビニ建てとる土地はうちの取引先の、日本青年社というところが、施設を作る土地やったんですわ。そこを何故か大手のコンビニチェーンが借り受けてコンビニ建てることになってやな」

「日本青年社って、最近あちこちで騒いでる…」


 葉菜子が尋ねた。さっきも近くで大音量で軍歌を流していた。ゴモラ先輩が答える。


「それがうちらの大切なお客さんや。一時期噂されたUFO騒動で出てきたあの白装束の格好は日本青年社の正装でな。ちょくちょくワイドショーでみたろ?その簡易バージョンが、この1マルクシャツや。マルクは日本青年社の総統がドイツ好きな台湾人だ、ってことでついたらしいで」

「うちらは会社の利益のために身を削ってあれこれやって、この一マルクシャツを着とるんや」


 社長が言うと公子が聞く。


「じゃあ、いままで子供そっちのけで出かけてたのはみんなその日本青年社の会合のため、だったってこと?」


 ゴモラ先輩が謝った。


「すまんな。UFO見ようと天体望遠鏡買ったのはほんまや。でも、こうもして入り込まんとこの不景気の中、建設業は利益獲れんのや。うちの会社の利益の半分が日本青年社のや」

「うちらほっぽり出して、だんじりの代わりにずっと街宣車乗って岸和田の町走り回ってたの?」


 公子がそう言うと、社長が浅黒い顔をさらに光らせた。


「そうや。ワシも台湾の本部行ったり大変だったわ。青年社の誰かがUFOが日本中飛来してるって話を3年前からリークしてたから、騒ぎも2分してやりやすかったわ。おかげで日本全国施設作り放題でがっぽり儲けさせてもろうたわ。しかし福岡の!あんたの!オトンはなんで頭を下げんのや!」


 急に社長はいきり立って地団太を踏んだ。弓彦は困惑した顔をした。たしかに父のコンビニの話をこんな大阪の宗右衛門横丁でされても困るだろう。葉菜子は少しだけ弓彦に同情した。


「こうなりゃ人質や。富幸君、こん男連れて福岡行くぞ」

「え?って、わかりましたお義父さん」

「ここでは社長と呼ばんか」

「わかりました社長」


 二人はそういうと弓彦を羽交い絞めにした。そして近くを走っていたタクシーを呼び止めた。無理矢理に乗り込む。


「おいって!それは困るって!友達と旅行に来ているってもんよ!」


 弓彦はじたばたした。ちょっとその光景が面白いので葉菜子は笑ってしまう。「不倫の話だと思ったら今度は拉致よ。一体何があったのかしらね」とギャラリー話しているのが聞こえた。社長が弓彦に言う。


「ここは先に帰ったと言えばいいやろ?」

「それだと怪しまれるってもんよ」


 弓彦は必死の抵抗をする。たしか弓彦は京都に友人と遊びに来ている。ところが弓彦だけ別行動で大阪の宗右衛門横丁に来ているのだ。その段階で友人には十分怪しまれていることだろう。弓彦自体は単純な男だが、周りの友人は癖が強いと噂で聞いた。突然いなくなりもしたら何を言われるかわからない。ここは拉致されるだけされてしまって、早いとこ帰ってきた方がよい方が世間に波風立てないんじゃないか、と葉菜子は思った。


「あのセンパイ」

 葉菜子はゴモラ先輩に尋ねた。先輩はにやけた。


「どうしたハナちゃん。先輩なんて言われると照れ臭いやんか」

「連れて行くのはいいと思うんですけど、早いとこ返した方がよいと思うんですよ。弓彦君、友達と京都に旅行に来ているから急に帰ったとなると怪しまれますし」


 社長が白い歯を出して、ハスキーボイスで笑う。


「おお、ええこと言うやないか。今から伊丹や。あれに乗れば時速1000キロやから30分で着くぞ」

「おいって!やめろってもんよ!」

 

 弓彦がじたばたする。ゴモラ先輩が言った。


「わかりました社長」

「ここはお義父さんでええぞ」

「わかりましたお義父さん」

「おいって!」


 じたばたする弓彦をタクシーに乗せた。ずいぶん待たされて、うんざりした顔のタクシー運転手が言う。


「あの方抵抗してるでしょ?これ犯罪ですよ」

「これでどうや?」


 社長が封筒に入った札束を渡すと、運転手は無言で受け取った。


「どこ行かはるんですか?」

「伊丹」

「ちょっと飛ばしますよ」


 タクシーはそのまま横丁から消えた。


 男たちが消えた。葉菜子と公子が2人取り残された。終始葉菜子たちを監視していたおばちゃん達の姿もない。もう興味を失ったのだろう。


 人通りの多い商店街で拉致事件が起きたというのに、行きかう人々はあまり興味を示さないのか普段通りのような生活をしている。これが大阪の日常なのだろうか。


 メリーゴーランドが回り始めた。今度は子供たちがたくさん載っている。本来この遊具はそういうものなのだろう。大人がはしゃいで乗る遊具ではない。公子が話しかけた。


「メリーゴーランド乗る?」

「いや、いいです。二人で乗るのもなんですから」


 葉菜子はそう公子に言った。ふと思う。そういえばこんな時、いろいろと相談していたあの人はどう思うんだろうか。葉菜子はメールを開く。あれ?メールがない。そういえばあの人は誰だっけ?急に思い出せなくなった。葉菜子は公子に尋ねた。


「あの、いつも相談していた人のメールが急になくなっていて、しかもメアドも何者かも思い出せないんですけど…。3年前からいろいろと相談に乗ってもらっていた…」

「そうなの?きっと宇宙人じゃないの?私も最近ソバットは宇宙人だったって思うようにしてるわ。あんな小汚いTシャツ着てるんじゃない別の人。惚れ惚れ星から来て変な誘惑させる宇宙人よ。きっとあなたの『あの人』も宇宙人よ」


 公子は笑った。そうかな、と葉菜子は思った。 

 そんなことより、松崎土木への就職はあきらめよう。福岡で堅実に仕事に着こう。そう葉菜子は心に決めた。

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