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月の夜に獣は笑う  作者: 綺羅
第1章
2/4

1

 その日の授業が終わって、俺と留架はホームに来ていた。

 学校帰りなもんで、制服のままだからちょっと目立つ。

「よく来たね」

 迎えてくれたのは、学園長の沖原正也オキハラ マサヤ師父。

 黒髪はきっちりと後ろに流すようにセットされ、黒のスーツを見に纏った痩せぎすな師父。

 銀縁メガネも相まって、学園長というより営業マンな感じがする

 ホームでは学園長を師父、教師を師叔、先輩を師兄って呼んでる。

 学園が始まった頃に封神演義が好きな生徒が冗談半分で呼んだのが始まりらしい。

 響きが好きで結構気に入ってる。

 通された師父の部屋にあるのは、本棚にライティングディスク、テーブルにソファ。

「ご無沙汰してます、師父」

 挨拶を交わし、勧められたソファに腰をかける。

 相変わらず、ふかふかのソファだ。

「卒業以来だね、何か問題でも起きたかい?」

「俺たちの高校、運動部の生徒が襲われてて…。怪我の状況から野犬かと思われていますが…」

「人獣族の可能性、か?」

「はい…」

「調べておこう」

 師父はコーヒーを一口飲んで、続ける。

「事件の噂は、こちらにも届いている。今、未確認のはぐれ人獣がいないか、確認を急がせている。また話を聞かせてもらうことになるかもしれないが…」

「わかりました」

「くれぐれも自重するようにな?全力での獣変は勘弁してくれよ?厄介なことになる」

「はい」

 また、釘刺された。

 まあ、大型の肉食獣だし仕方ねえか。

「で、彼の様子は?」

「まだ気づいてないようです。」

「そうか、彼が獣変したのでなければ良いのだが…」

 あいつが獣変したら洒落にならん。

 ま、少し話してから、留架と2人してホームを後にした。


 ホームを出てしばらく、近くの公園に差し掛かった時…

 微かに聞こえる、唸るような獣の声…

「おい……」

「ああ、わかっている」

 答える留架の表情も厳しく、声も低い

『隠れてないで、出てこいよ』

 小さく漏れるのは、狼独特の声。

 声に導かれるように、現れたのは黒い犬。

「野犬か…」

「下がってろ、犬っころの相手は俺がする」

 皮肉げに笑う留架。

 ちょ、バーサクモード入ってません?


 飛び掛かってきた犬に首筋を狙われるが、左腕に噛み付かせて組み伏せてやがる。

 あほー、肉を切らせて骨を断つんじゃねーよ


「教えてやるよ、どっちがボスか」

 いや、押さえつけたまま言わんで?

 あ、なんか通報してる声聞こえてきた。


「懲りねえ奴…」

 暴れまくって組み伏せから逃れた犬を思いっきり蹴っ飛場してるし。無茶も大概にしやがれ、このアホ犬!



 ー数時間後ー

 救急車で病院、留架が治療中に警察からの事情聴取。

 んで、いろいろ終わって、今は留架んちの留架の部屋。

 留架の怪我は結局5針ほど縫う事になった。

 留架の家族には、病院から連絡はいってる。

 結局は俺からも説明しなきゃなんだよ、目撃者なもんで。

 これ、俺怒っても許されるよな?

 ソファに座ってる、留架の頭を軽く叩く。

 怪我人だからな、手加減大事。

「無茶をするなってのに、このアホ犬!」

「って〜、いきなり叩くな、乱暴猫」

「何か文句あるのか?病院に警察、事情を説明したのは誰だと思ってるんだ?師父に来てもらっても良かったんだぞ?」

「それだけは勘弁してください」

 はい、ホールドアップ。

 師父には弱いんだよな〜


  コンコン…


 響く、ノックの音。

「はい。」

 ルカの返事の後、扉が開いて見舞客が入ってくる。

 ウルフカットの焦茶の髪に黒い瞳、白いシャツの上に黒のライダーズジャケット、紺のジーンズに黒のブーツの青年ー俺たちの兄貴分である山辺春臣ヤマベ ハルオミ

「よっ」

「あ、山辺師兄」

「犬っコロと喧嘩したんだって?」

 山辺師兄ー春兄は人獣族を見極める目を持つ選別眼持ちで情報部に所属している。

 なので、耳が早い。

 今は大学に通いながら仕事をしているらしい。

 最近は個人で調べ物をしていて、忙しくしていると聞いていた。

「相変わらず、耳が早い」

「まあ、連絡きたからねぇ」

 ちろりと留架がこっち見たけど、何かあればホームに一報いれるのがルールだ。

「まぁ、猫っちも犬っちが心配だったってこったね」

「猫っちって呼ぶな、頭を撫でるな!」

 春兄って、いっつも俺や留架を揶揄うんだからなぁ。

「ヤツは白だ。昨日、犬っころと留架がバトってた時にはゲーセンに居た」

 ヤツ、俺と留架のクラスメートー近野浅都

「奴も人獣である以上、狙われる」

「人獣である以上…?」

「狙われたのは運動部の生徒じゃなく、運動部かつ人獣の生徒だ。ヤツは無所属でも、よく運動部の助っ人してたらしいな?狙われる可能性はある」

 沈黙がその場の空気を支配した。


 



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