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月の夜に獣は笑う  作者: 綺羅
序章
1/4

プロローグ

風のない満月の夜、1匹の獣が丘の上からキラキラと灯りの灯る夜の街を眺めていた。

 月明かりに照らされて、金色の毛並みが艶やかに煌めいている。

「いい月だな」

 草を踏む音を微かにさせて、現れた何者かの声。

 艶やかな黒髪をオールバックにした、青い瞳の青年。

『留架か』

「その姿で彷徨くのは感心しないな。不用心すぎるぞ、バカ猫」

 呆れた様に溜め息混じりで告げられた忠告。

『わかってる、ってか俺は猫じゃねえ!』

「ミニサイズに変化してりゃ、猫だろうが。良いから帰るぞ」

 呆れたような皮肉るような青年の声を最後に、1人と1匹は丘から姿を消した。



 まぁ、ミニサイズの豹になってたのが俺なんだが。

名前は飛崎陽介ヒザキ ヨウスケ

 県立第一高校に通う二年生。

 獣に変身できる時点で普通じゃないけど、まあそれなりに普通に混ざって生活してる。

 人獣族ー人でありながら獣の姿を撮れるだけでなく、そのサイズも操れる能力者。人に混ざって生きる、人でありながら獣でもあるもの。最初から人獣族として生まれる者と、先祖が人獣族で突然変異する者がいる

「よ、おはよう」

「…おはよう」

 教室の自分の席に座って、隣に声をかけたら返ってきたのは静かな挨拶。

 昨夜、一緒に丘に居た-葉山留架ハヤマ ルカ

 昨夜は真面目くさって説教してきてたけど、俺は知ってる。

 俺より留架のが、夜の散歩が好きで出歩いてる。だって、こいつ狼っていうより犬だし。

「おはよー」

 留架の後ろの席から、間延びした声。

「おはよ、浅都」

 大柄な体格にふんわりとした声が意外と似合う赤毛のクラスメート、近野浅都コンノ アサト

 予鈴ギリギリでも、いつものんびりなんだよなぁ。

「また出たんだって?」

「ああ、3年の陸上部の先輩がやられたらしい」

「野良犬の仕業ってことらしいが、今時野良犬ねぇ」

 話題に上るのは最近起きてる事件の話。

 原因不明の襲撃事件、標的は運動部の生徒。

 暗闇で襲われるため犯人はわからない、獣の爪や牙が原因と思われる裂傷が酷いらしい。

 俺の散歩に留架がいい顔しない原因の一つ。

「裏で操ってるやつ、いそうだよな 被害者、運動部のエースばかりだし」

「偶然にしては出来過ぎだな」

 浅都と留架の会話に人獣族の可能性もあるよなぁとぼんやり考える。


 -昼休みー

「当分は獣変しない方がいい」

「月の夜に獣変して散歩するの、好きなんだけどなぁ。留架もだろ?」

 俺が留架を見ると、気恥ずかしげに咳払い。

 誤魔化せてねーからな?

「とりあえず、ホームに連絡入れるか?」

「ああ。どうせ師兄の誰か連絡してるだろけど、帰りに寄るか」

 ホーム-幼稚園から中等部まで一貫の私立桂川学園の通称。全寮制のこの学園こそが、人獣族が人として生きるために力の制御と必要な知識を学ぶ為の学園。

 俺と留架も、長期休暇で帰る以外はホームで生活してた。

「ま、お互いに自重するようにしよう」

「そうだな、一連の事件に巻き込まれるのはごめんだ」

 人獣族の仕業じゃない事を願い、教室に戻った。


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