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それは雪だるま柄だった

作者: 沼スノキ

 

 俺のにいちゃんは頭がおかしいやつだ。

 村の中では親の職を継いでいくのが普通で我が家であれば農民になるはずなのに、はーれむもののゆうしゃになると言っていた。


 確かににいちゃんは勇者になれそうなくらい強い。ここら一体どころか冒険者の人だって剣技では、にいちゃんに勝てない。これで傲慢で性格が悪かったら、村八分にされそうだが、にいちゃんは優しい。俺はにいちゃんの弟だから、きっとできると剣技を教えようとしてくれることもあるが、にいちゃんの教えは教えじゃなくて見本を見せるだけだった。ちょっと無理ですねと俺は諦めた。


 にいちゃんというやつは阿呆だった。賢さの話ではない。学会の偉い人が辺鄙なこの村にやってくるほど、にいちゃんは賢い。でも阿呆だから、巨乳なお姉さんにデレデレになるし、息を吸うようにハニトラに引っかかる。引っ掛かりすぎて、その頭脳で集めたお金を散財しちゃうくらい。でも、散財し過ぎて金がない、と言っていた割には、俺によくお菓子を買ってくれた。


 にいちゃんは軟派者でノリ軽めなチャラ男だけれど、とても真面目だ。言いつけられた、畑の世話や家事の手伝いはしっかりこなす。俺はたまにサボる。そういう時、にいちゃんは少し怒って、それから内緒なと言って一緒にやったことにしてくれる。ちょっと優しすぎる。父さんが母さんに隠れて酒を飲んでいても黙っている。その件は結局、母さんの嗅覚では誤魔化せずにバレた。


 にいちゃんは魔王を倒す旅に出て、帰ってこなかった。


 倒し終えた後に、お嫁さん探しの旅をしているらしい。

「あの性じゃあ、良い女がいても良い友人止まりだろ」

 父さん曰く、阿呆から馬鹿に進化したらしい。俺には差がわからない。ただ、はーれむが叶わなかったのは理解できた。


 そのにいちゃんが久々に帰ってくる。雪降る白銀の村は寒かったが、俺の心はワクワクで暖かい。

「ただいま、弟。大きくなったな」

 にいちゃんは一人じゃなかった。隣に綺麗な女の人と、小さい子供がいる。俺より小さいその子は、雪の積もる地面に慣れないのか、にいちゃんのズボンの裾を握っている。

 驚いた父さんと母さんが駆け寄る中、俺は確かに見た。

 とうとう滑った小さい子が握っていたズボンをずり落として、剥き出しになったパンツを。

 公道でパンツ一丁にされた兄の姿を。

 にいちゃんは今日もいつも通りだった。

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