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主人よ、私は信じる

28 主人よ、私は信じる


その日、曇天の空からは雪がちらつき始めていた


ここウェスタ・ロレーヌでは早くも冬の足跡が聞こえ始めていた


シンメトリーをきっちりと遵守した左右対称の堅牢な建物は、すべて同じ形をした建物が立ち並ぶ殺風景な街並みに異様な存在感を放っていた


「同志書記長、A・ヤコブ少佐です!ご報告がございます」

逞しい身体つきをした凛々しい軍人は、語気に人匙の喜びを混ぜた様な声色で執務室を訪れた


「入れ」

扉越しにくぐもった返事が聞こえる


「失礼します、先程、国家保安部の部隊が、勇者カイゼルと思われる男を拘束、帰還いたしました」


「…!ご苦労だった 至急尋問にかけろ 私もすぐに行く」


「はっ!了解致しました!イワノフも同席させますか?」


「無論だ、本人かどうか確かめたい」

ウェスタ・ロレーヌの最高指導者であるゲーショフは重い腰を上げ、制帽を被りコートを着た



ここはウェスタ・ロレーヌ人民保安省、第3課(政治警察)の取調室


セバスチャンは天井から吊り下がる鎖に両手を繋がれ、吊るされながら尋問に掛けられていた


「いつまで黙っているつもりだ」

頬を叩かれる

セバスチャンは沈黙を貫く


「話さないとより厳しい取調をすることになるぞ」

一言も言葉を発しない


「お前はヤルム村にいたな?答えろ」

沈黙を貫いている


尋問官は水が入ったバケツをぶっかけた

室温はわずか2度である


「ヤルム村に居たのはお前だな!違うか!」


セバスチャンは苦悶の表情をしたが口を開く様子はない


すると、奥から足音が聞こえて来る


「同志、どうかね?」


「これは同志書記長!いえ、全く吐きません」


「ではコイツから話を聞いてみよう」


尋問室に拘束された半裸の男が投げ込まれた


「んっ!んんー!!」

男は床で苦しそうにもがいた


「とってやれ、本人に聞こうか」


尋問官が口に噛ませてある猿轡を外すと男は荒々しく息をした


「ブハァ!ゲホッ!…ど、同志ゲーショフ!!どうか!どうか寛大な、お慈悲を!!」

血と青タンだらけの醜い顔から涙と涎を飛ばして命乞いをする男を

ゲーショフは一瞥して一言


「…分かった お前がそこの奴が誰なのか教えてくれたら考えてやるイワノフ」


イワノフはバッと後ろを振り返るとこちらを睨みつけるセバスチャンがいた


「お、お前は……コイツは!ヤルム村に居た……カイゼルです…カイゼルです!!あの化け物を倒した男です!!」


セバスチャンは苦虫を噛み潰したような顔になり俯いた


「そうかそうか、間違いないのか?」


「はい!間違いございません同志!!アイツが勇者カイゼルです!!」


「…だそうだ 何か反論はあるかね?」


セバスチャンは何か言いたいことがありそうだったが終始黙っていた


「…ふん! 尋問するまでも無かったな コイツをブーフェルトの特殊試験施設に送れ 色々試したいことがある 殺すなよ?」


「は!了解致しました!同志ゲーショフ!」


セバスチャンは目を見開くと必死で抵抗したが、無慈悲にも拘束具はびくともしない


「せいぜい死なない様に頑張るんだな勇者カイゼル様…」


ゲーショフとヤコブは尋問室を後にした……


(………ご主人…様……)



………………………………………………………………


一方その頃、クラインフェルト領国 カイン商店では会議が行われていた


「皆んなも知っていると思うが、何者かにセバスチャンが誘拐された 行き先は分からない 少しでも情報が欲しい!」

カインは進行役を務めていた


そこにはナターリア、エマ、フューイ、アーシャ、そして先日の使者3人が同席していた


フューイはエルフの里にいたが、魔族側に緊急招集をかけた際に使者3人と一緒についてきて貰った


「皆目検討もつきません…」


「ちょっとセバスチャン、セバスチャンって一体誰のことなのよ!」


「そうか、エマ お前には教えてなかったな お前がカイン様と呼んでいる男の本名はセバスチャンと言うんだ そしてこの俺がカインだ」


エマはキョトンとした顔をした


「は?何言ってんのよ カイン様が…セバスチャンって…はぁ!?」

明らかに狼狽している様子のエマにカインが諭した


「ちょっと言葉が足りなかったな 俺たちはお前と会う前に身分を偽ってウェスタ・ロレーヌに入国していたんだ

セバスチャンは俺の影武者としてカイン伯爵と名乗り、俺はその息子としてカザックと名乗っていた

ナターリアは御者としてそのまま同行してた

もちろん、俺がセバスチャンの息子なんて話は嘘だ

実際はセバスチャンもナターリアも俺の召使いだ そしてこのカイン商店は俺の店だ!名義は親だがな」


エマは驚愕の表情でカインとナターリアを見た


「そ、そんな…そんなことって……ってことはカイ…セバスチャンが攫われたって事なの!?」

エマは冷や汗を流して慌てふためいていた


「…その通りだ ご理解感謝するよ って事で続きだ セバスチャンの攫われた原因を探りたい 今一度これまでの行動を洗ってみよう」


1人で何か慌てているエマを尻目に話を進ませた


「ちょっと宜しいでしょうか?」

悪魔族のアスタロトが挙手した


「何でしょうか?」


「そもそもの話なのですが、セバスチャン様とナターリア様、そしてそこのアーシャ様も人間ではありませんよね? 何者なのか説明して頂きますか?」


エマとフューイはポカンとした様子で2人を見た


「それは私から説明しましょう」

ナターリアが話を切り出した


「私達はカイン様が召使いとしてお造りになられたメイドロイド… 魔力で動く人形で御座います 人間ではございません」


「え!?人間じゃないって…どういう…」

混乱しているフューイはもっと話を聞きたいと言わんばかりに身を乗り出してきた


「その通りだ その3人は俺のこの力を使って生み出した高度な知能を持つ人形達だ 見ろ」


カインは机に手をかざすとそこからフューイの姿をした小さなリアルな人形が現れ、ぴょこぴょこと動きだした


一同は驚きの表情を見せた


「俺の能力はもう魔王に知られているがお前達にも話そうか 俺の能力は『万物を創造する力』だ 思い浮かべたものなら何でもその場に作り出すことができる 制約はあるがな…」


(サタン様が仰っていた…あの力か…)


「これは…見たこともない力ですね…非常に興味深いです…」

エルミールは物珍しそうに可愛らしく動くフューイ人形の頬を突いた


「俺はこの力を生まれた時から使って色んなものを創り出してきた それを商品として売り捌く様になってから建ったのがこの店だ」


「…なるほど 通りで珍しい品ばかり置いていると思っていましたが…そんなことが…」

シャミールが感心した様にカインを見た


カインは、猫じゃらしを創り出すとシャミールの前で振ると、ソワソワして目で追い始めた


「…これは……なかなか………通りで………ニャッ!」

シャミールは堪らずシュッと猫じゃらしをパンチした


「………頭が追いつかないわ……つまり、あんたは…私達にそんな大事な隠し事をしていたの?」

エマは席を立ちワナワナと震えながら向かってきた


「すまなかったな 機密情報だったんで言うわけには行かなかった…」


パァン!とエマはカインの右頬を叩いた


「どうして!どうして私にも隠してた訳!!あたしとあんた達は仲間じゃなかったの!?」


カインは突然のことに理解が追いつかなかったが…

パァン!!とエマの左頬を平手打ちした


「馬鹿野郎!!お前みたいに口が軽い奴にこんな大事な秘密なんか喋れると思うか!!このアホ!!」


カインはスパァン!!と今度はエマの右頬を平手打ちした


エマはまさか2度もやり返されるとは思ってなかったのか、目尻にジワリと涙を浮かべて震え出した


「……!ちょっと……打たないでよ……ごめんなさい………」

頬を押さえながらしゃがみ込んでしまった


フューイとナターリア、3人の使者はドン引きして固まっていた



「まったく!!なんて奴だ!!そもそも!お前がなんかやらかしたからセバスチャンが攫われたんじゃ無いのか?今までのアイツとの会話を振り返ってみろ!!」


「うぅ…グスッ………振り返ろって言われても………はっ…」


半泣きのエマは何かを思い出したか固まってしまった


「ん?どうしたエマ?」


「話したわ………あの方に………」


エマは頬を押さえたままカイン目を見つめた


「…………何を誰に話したんだ?」

カインはまさかと言う顔をしてエマを見つめ返した


「あんたが寝てからセバスチャン様と一緒に…クラインフェルト様にあったのよ…それでセバスチャンのこと自慢したら 何だかクラインフェルト様の様子が余所余所しく……」


「………そうかそうか、勇者カイゼルのことあの領主に話したのか………

…ってそれだァァァァァァァァ!!

このドアホがァァァァァァァァ!!

オメーはなんて事してくれたんだァァァァァァァァ!!!」


カインの罵声が店中に響き渡ったのだった………



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