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いざ行かん、エルフの里へ!

緑の軍服に身を包んだ筋肉質な体付きをした男は軍靴を鳴らしながら廊下を歩き、執務室の扉の両脇に立つ兵士に敬礼した


「同志書記長に報告がある通してくれ」


「どうぞ」

男の顔と胸と肩の階級章を一目見た兵士はすぐに許可を出した


ドアをノックする

「失礼します同志ゲーショフ、A・ヤコブ少佐です ご報告にあがりました」


「入れ」

中からくぐもった声がした


「失礼します」

執務室に入ったヤコブは、視線を落としたまま豪華な机の上でペンを走らせている恰幅のいい男に挨拶した


「同志ゲーショフ、先程第25農業分画区に派遣されていたロレーヌの春風 第23番隊が帰還致しました」


「そうか ご苦労だった」

相変わらず視線もくれずペンを走らせている


「それが…隊長のイワノフ中尉から気になる報告を受けまして… ヤルム村で新種の魔物と遭遇した模様です」


ピタリとペンを止めようやくこちらを見たゲーショフは続けろと言わんばかりに黙っている


「中尉率いるロレーヌの春風は魔物の襲撃を受け損害を被り一時後退したところ、突然現れたカイゼルと名乗る剣士により討伐されたそうです」


「何だと…?中尉の隊はみすみす戦果を逃したのか?」


「は、はい…報告はまだ御様います これは私の言葉ではないのでどうか寛大にお聞き頂きたいのですが……」

冷や汗が頬を伝う


「構わん 続けろ」

ゲーショフはフンっと鼻を鳴らし促した


「はい、どうやらその男曰く、その魔物は…圧政に苦しむ人民の血と涙により生まれた新種の魔物…辛苦のカリファーと言うらしく、このままだと国土全域に出現すると言ったそうです…」


ダンっ!と机を叩いたゲーショフはあからさまに不機嫌になり、ヤコブはビクッと身体を震わせた


「…下らん!そんな下らん茶番を報告しにきたのか?同志ヤコブ?」


ヤコブは緊張のあまり頭痛がしてきた


「い、いえ!これも全てイワノフ中尉の報告をそのまま読み上げただけです!」

奥歯をカタカタと震わせるヤコブは必死に堪えていた


「同志ヤコブ…イワノフを連れてこい…詳しく話を聞きたい 分かったな?」

ギロリとヤコブを睨みつけたゲーショフは再びペンを走らせ始めた


「は、はい!了解致しました!同志ゲーショフ万歳!」

敬礼すると逃げるように執務室を後にした…



一方その頃、ヤルム村を出たカイン達はアンヌの森の入り口付近まで近付いていた


「地図だとこの辺のはずだが……」

緩衝地帯の切れ目を探していたカイン達はそれらしき場所を探していた


「ねぇ、カイン様?あなた達はどこに向かってるの?」

エマがキョトンとした様子でセバスチャンに聞いてきた

あれ以来エマはセバスチャンにとても懐いてしまった 今も隣に寄り添ってベタベタしている


セバスチャンはチラリとカインの方をみると話しても良いのかと目線で訴えてきた


カインは頷いた エマは完全にこちら側に付いた 何とかなるだろと思ったのだ


「はい、実はアンヌの森に入るつもりです」


「え!貴方達もなの!?」


「「「は?」」」


てっきり人類の敵〜とかエルフの手先はここで成敗してやる〜とか言い出すと思った一行は予想外の回答に驚いた


「そ、そうだったのか〜ってそうなるかぁ!!」

カインはノリツッコミした


「うわっ!急に大声出さないでよ!何よあんた達!エルフの里に何するつもりなのよ!まさか……」


あらぬ誤解が生じそうな予感をビンビンに感じ取ったカインはすぐさま説明した


「違う違う!お前が想像してるようなことじゃない!俺たちはエルフ達と…仲良くなりたいんだよ!」

ちょっと違う気もするが合ってる


「仲良くって…そう…そうなのね!話の分かる奴ね〜!見直したわ!」

エマは嬉しそうにバンバンとカインの背中を叩いた


(なんなんだコイツ…)

若干苛つきながらも、何やらエルフと友好的に通じてそうなこの女と接触できたのは好都合だったと考えた


「ところでエマ どうして人のお前がエルフと仲が良さそうなんだ?」

カインは尋ねた


「あー話してなかったわね 私のお義父さんエルフなのよ」

エマは唐突に爆弾発言を放ってきた


「「「は?」」」

一同は目が点になった


「は、はぁ〜?どういう事だ?」


「興味深いですね」

ナターリアが食いついた


「詳しく聞かせてくれませんか?」

セバスチャンが続いた


「うーん詳しくは後で聞かせてあげるわ!ほら!あそこの林に入って!崖があるはずよ!」

エマは一瞬だけ少し憂いを帯びた瞳になったが、すぐにいつもの感じに戻った



言われるがままにナターリアが馬車の方向を変え獣道を走らせる事15分


言われた通りなんの変哲もない崖の下にたどり着いた


「ちょっと待ってて!」

馬車を飛び降りると岩肌にかけより、胸元から取り出したのは…エルフの飾り羽だった


飾り羽を岩壁にかざすと、淡い緑の光が岸壁に灯った


エマが岸壁に手を突き出すと、まるで吸い込まれるように手が飲み込まれた


「なるほどな…こうやって隠してたのか…」

カインが感心していると


「早く入って〜すぐに閉じちゃうから〜」


ナターリアは馬を再び走らせ岩壁の中に入ったと同時に穴は閉じてしまった


カインの作った強光ランタンを付けると辺りが昼のように明るくなり、洞窟の全貌が見えた


壁は何かの文字が一面に彫られ、道は綺麗な石畳みで舗装されていた

人工物であることは明らかで、洞窟というよりはトンネルだった


「これは…興味深いな…エマ!道案内してくれない?」


「了解よ!このトンネルは色々罠があるからね!正しいルートでいけば大丈夫よ!」


(……と言うことは……エマがいなきゃ俺たち詰んでたかも知れないってことか……良かった…あそこでナターリアにセクハラしといて…)


「助かったぞ!ナターリア!」


「?」


カインはロクでもないことを考えながら胸を撫で下ろした



しばらくエマの案内通りトンネルを進むと光が見えてきた


期待と緊張に胸を膨らませた一同は光の先へ進んだ



トンネルを抜けるとそこは……エルフの里だった…



「こんにちはシルフィ!帰ったわよ!」

エマが声をかけた先には槍を携えた美しいエルフの少女がいた


「あら!エマじゃない!久しぶり!」

シルフィと呼ばれたそのエルフとエマは嬉しそうに抱き合い再会を喜んだ  


「こっちはねカイン様達よ!良い人たちだから通してあげて!」


「……そう…ちょっと待ってて」

カイン達に懐疑的な視線を向けたシルフィは、近くにいたガタイの良いエルフの男を呼んだ


「エマのお友達ですかな?何用でここに?」

威圧的な態度でズイッと目の前に立ち塞がったエルフの男はここは通さんとばかりだった


すかさずカインがセバスチャンに目配せするとセバスチャンは男の前に出向いた


「これは失敬、私カイン伯爵と申します」

魔族手形とエルフの飾り羽を見せるとシルフィとその男は驚愕した様子でお互いを見ていた


「…!確認しますので少々お待ちください!」

魔族手形とエルフの飾り羽を受け取ると奥の小屋にシルフィと入っていった


数分後、小屋から出てきた2人は態度が急変していた


「失礼しました!私サルーと言うものです!ささ!旅の方!どうぞ旅の疲れを癒して行って下さい!エルフの里は初めてですか?」

ガタイの良い男は愛想良くサルーと名乗った


「エマのお友達が来るなんて初めてだわ〜まさか同族を救ってくれた恩人様だったなんて

ゆっくりしていってくださいね!」


エルフの飾り羽には色々な情報を加えることができようで、どうやらフューイが経緯を記録していてくれたらしい


「いや〜歓迎してくれてありがとうございます!よし!お言葉に甘えて宿屋に案内してもらおう!そうしよう!」

カインはすぐさま乗っかった



宿屋に案内されたカイン達は馬車を置き、大きめの鞄にサンプル品を入れて外で待ってたシルフィ達と合流した


「サルー殿、シルフィ殿お待たせしました 実は先に頼みたいことがあるのですがよろしいでしょうか?」


「ん?何ですか?」

シルフィが答えた


「是非族長にご挨拶と友好の印をお渡ししたく思いまして…」


「族長に?良いですよ!ただ、いまの時間は…」


「寝てると思いますね」

サルーが付け加えた


「ね、寝てる?」

今はまだ15時 おやつの時間のはずだが…


「はい!族長はちょっと寝る時間が遅くてですね…あと2時間もしたら起きると思いますよ!」


「は、はぁ…ではそれまでこの里を案内して貰えますかな?」


「ええ!是非!このエルフの飾り羽を見えるところにつけておいて下さいね!」

シルフィから新しいエルフの飾り羽を人数分受け取ったカイン達は髪や服に刺した


「うん!皆さんとてもお似合いですよ!では!行きましょうか!」

シルフィに誘われるがままエルフの里の観光が始まったのだった……


ここまでお付き合い頂いた皆様、ありがとうございます!

「アンヌの森編」突入です!


ユニーク人数も増えて喜んでます!


ここからカインの人生は大きく変わります!


次回も是非ブックマークと評価ポイントを入れてからお楽しみください!

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