すみません、僕が呼びました
怪しい人だった。
不気味な人だった。
でも、信用できそうな人だった。
僕は今日、これから倒れるらしい。
すっかり忘れて、部屋でくつろいでいた。
何事も、早い方がいい。
僕は予言を信じて、受話器をとる。
そして、具合が悪くなる前に救急車を呼んだ。
脳を刺すようなサイレンが鳴り、家の前で止まる。
救急隊がゾロゾロと部屋に入ってくる。
「すみません、僕が呼びました」
来たときには何ともなかった。
救急隊が少し困った表情を見せる。
「ごめんなさい。まだみたいです」
そう言うと、救急隊は呆れた顔で僕に注意し、背中を向けて歩き出した。
その時、僕の胸はざわめき立ち、胸を押さえながら倒れた。
「大丈夫ですか?大丈夫ですか?」
その言葉が、ずっと鳴り響いていた。