55 油断
ここはどこだ⋯⋯
頭がぼーっとしているのか、なぜここにいるのか思い出せない。⋯⋯クレインはどこだ?
俺は、立ち上がり辺りを見渡してみたが、クレインの姿は見つけられない。というか、何も無い⋯⋯真っ白な空間と言えばいいのか。ダンジョンを攻略していた記憶はあるのに、ここには薄暗いダンジョンのとはかけ離れた場所が広がっている。
⋯⋯夢か。
ならばまた寝るに越したことはない。
ただ、それにしては意識がハッキリしすぎている。こんな夢ってあるのか?
⋯⋯もしかして、俺は死んだのか? だったら何となくだけどこの状況に納得は出来る。死んだ衝撃で記憶の一部が欠如してしまっていたとしても不思議じゃない。
立ちながら考えるよりは、座っての方が考えやすいだろう。その場に座り、最後に覚えている所から今に至るまでの記憶を遡ろう⋯⋯
「そろそろ何かしらの手掛かりが見つかっても良い頃だろうに、いまだに何も見つからないとか。もしかしてここハズレだった?」
未だに寝ては、あの声のせいで起こされる状況でゆっくり睡眠が取れないせいもあって、このダンジョン攻略に嫌気がさしてきた。
「ん~⋯⋯それは最後まで行ってみなきゃなんとも言えないけれど、あの声からして絶対に何かあるわよ」
「だよな~、あの声さえなきゃダンジョン攻略を楽しめるのに。でもあの声があるからこそ、このダンジョンに何かあるって感じの手掛かりだし。なんなんだまったく⋯⋯」
「それはそうだけど」
クレインの顔には疲労が蓄積されているのが一目瞭然だ。あれからも起こされ、手掛かり無し。じゃダンジョン慣れしてないクレインにとっては地獄だろう⋯⋯
「まぁ行くしか無いわよ。それで万が一、万が一よ。何も無かったら私は泣くわね⋯⋯」
相当に堪えてるんだろう。クレインが訳のわからない事を言い出すのだから。
「ま、まぁ。行こうぜ! 絶対に何かあるはずだしさ。ここの魔物にも慣れたし、問題点があるとすりゃ睡眠がゆっくり取れな⋯⋯」
⋯
⋯⋯
⋯⋯⋯
あぁ、そうだ⋯⋯。睡眠不足を言い訳にしたくはないが、完全に俺は油断していた。クレインの変な発言に気を取られていたって言い訳して、クレインのせいにする事も出来ない。
魔物が複数体で襲ってこられたって、大きなダメージ無く倒しきっていた。
ある程度の軽症覚悟なら瞬殺だって出来るほどに俺は強くなっていた。
強さからくる油断。
初めてのダンジョンじゃ絶対にやっちゃいけない行為⋯⋯
突如、目の前に現れた見たことも聞いたことも無い魔物。
いや見たことはあるな、書物では見たことがある魔物。
たしか、名前は【ドラゴン】
それが脇道から出てくると同時に、全てを飲み込むようなブレスを吐き、一瞬にして俺達は飲み込まれた。
言葉を発する時間も、行動に移す時間も無く。
目の前が真っ白になり、そこで俺の記憶は途絶えた⋯⋯




