49 階段の途中
コツコツと、今まで次の階層へ向かうような速度では階段を降りる速度とは異なり、一段一段慎重に階段を降り始めた。何となくこの重い空気感にやられているのは自覚しているが、流石にこの感覚を無視して進む気にはなれなかった。
「ねぇ、シュウの両親ってどのくらい強かったの?」
俺の降りる合わせ、横にいるクレインが突拍子も無く、そんな事を俺に投げ掛けてきた。なぜこのタイミングで?
「いえ、話しはよく聞いていたけれど、実際に戦ってる姿は見たことが無いのよ。訓練所の出入りは父達から禁止されていたし⋯⋯」
俺の目線で気まずくなったのか、後半は申し訳なさそうにうつむき、言葉がつまったようだった。
「ん~、そう言われても俺も全然だぞ。よく訓練はされていたけど、実際に戦ってる姿なんて魔物を倒し方を実際に見せてもらう時くらいだったしさ」
「そうなのね」
「ってか、なんでこのタイミングでそんな事を聞いてくるんだ? 今更どーした? って感じだぞ」
体感的にそろそろ階段が終わろうとしているこの状況で、そんな事を話してどうしたいのか。クレインに限って話題作りをするような奴ではないし。
「気を悪くしたらゴメンね。何て言うかさ。
勇者、勇者って言われてるけど、実際にどの位強かったのかわからないじゃない? 過去の偉業ってどうしても着色されて、話しが膨れ上がったりするじゃない。
って考えたら、今のシュウより弱い可能性だってあるわけで⋯⋯
で、でね! もしそうならここからのダンジョンだって余裕かも知れないじゃない? いつもみたいにちゃっちゃと攻略みたいな」
あ~、あるほど。この状況で急に何を言い出すのかと思えばそう言うことか。はぁ~全くまったく⋯⋯
「つまり、ここまで来たものの、この空気感に当てられてビビってると?
んで、ビビってる私を安心させてってことだな。⋯⋯ダッサ」
ズドンっ!
にやける口許を押さえながらクレインをバカにしたら、横腹に激痛が走り、思わず片膝を着いてしまった。階段で足を踏み外さなかった自分を誉めてあげたい。
「次、ふざけたこと言ったらぶん殴るわよ」
この横腹の激痛がぶん殴られた痛みじゃなければ、何の痛みだと言うんだろう⋯⋯
むしろ、そんだけの攻撃力があるならば前衛でガンガン攻めてくれよ。
「ほら、階段の終わりが見えたわよ。さっさと立って行くわよ」
クレインはどう考えてもビビってたくせに、怒りのせいかスタスタと足早に歩き始め、その後ろを横腹を押さえながら追いかけた。




