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47 クレインの戦い

 クレインがただのビビりだと発見出来たことで、マウントが取れないかと考えながら二人で15階層を探索しているものの、母の強さを常に見てきた俺には、クレインをどうこうする決意にはなれなかった。


 力で押さえつけるのは屑の男だからな。

 職権乱用する姫より屑だ。


 勿論、職権乱用する姫は屑である。


「⋯⋯何か言ったかしら?」


「いや、別に」


 こいつ、何者だよ⋯⋯。喋っていないことを関知するとか。

 もしくは【暗殺者】のジョブを授かると相手の心が読めるようにでもなるのか?

 なら、心を無にして争いは避けよう。




「なぁ、もし本当に更に潜る道があったとして、クレインは着いてくるのか? それとも離れて報告しにイエーサまで戻るのか?」


 今までの階層とは違って、歩く速度を落として慎重に隅々まで調べながら歩きながら、ふと疑問に思ったことを口に出してみた。


「⋯⋯戻らないわよ」


「あぁ、一人で戻るのが怖いか⋯⋯」


「はぁ?」


「⋯⋯いや何でもない」


「ここからイエーサまで頑張って戻ったところで一年はかかるのよ。その一年でシュウが何をするかわかったもんじゃないでしょ?」


 クレインは俺の方へと向きを変え、ため息混じりにそう答える。絶対に一人で戻る事にビビってるくせに⋯⋯


「なに?」


「いえ⋯⋯」


 このまま話し続けるのはよくないと思い、俺は話しをすり替えることにした。


「なら実際に戦っている姿を見せてくれよ。俺の両親が身の危険を感じる程の事って事は、クレインを守りながら戦うって事になるだろうし、それならどこまでクレインに意識を向けなきゃならないのか知っておく必要があるからな」


「⋯⋯ひかない?」


 さっきまでの顔つきから、目線をそらしボソッと確認してくる。


「ひかないよ」


 強いのか弱いのか。まぁ弱すぎるって事は無いだろうけど、ひくくらい強いってのもの想像がつかないしな。


「じゃあ、いいわよ」


 ちょうど一体だけのキメラが前に見えた事もあって、あのキメラを倒してきてと指を指すと、クレインはキメラに向かってとぼとぼと歩き始めた。


 歩きながら、両腰にさしているナイフを構え、キメラとの距離が5m程になった瞬間にクレインが消えた。

 集中していなかったから、一瞬クレインを見失ったが、俺は即座に集中しクレインを目で捕らえた。


 目で捕らえたクレインは、既にキメラの後頭部に回り込み首筋に二本のナイフを突き刺し、そのまま首を切り落とした。


 スタっと、地面に着地すると二本のナイフを両腰にしまい、俺の方へとぼとぼと近づいてきた。


「⋯⋯ど、どう?」


 心配そうな目で俺を上目遣いで見てくるが、どうとかのレベルじゃない。


「むしろ、そこまで戦えるなら戦えよ」


「いやよ! 私は女の子なのよ。それなのに、戦い方が可愛く無いじゃない。俊足で回り込んで首を落とすって恐怖でしょ?」


 ⋯⋯何を言ってるんだろう?

 戦いにカッコイイも可愛いも無いだろう。ノーダメージで瞬殺出来る事が出来ればそれでいいじゃないか。


「強ければ何でもいいだろ」


「却下! なのでシュウが危なくまでもう戦わないから」


 クレインがこうなってしまってら、もう戦わないだろうな。一度ヘソを曲げると、暫くは治らないのは経験済みだし。


 それでも、ここまで戦えるってわかったことだし、多少危険な状況になったとしてもどうにかなるだろうとわかったのは大きな収穫だ。

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