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35 【閑話】ザッパ

 俺はザッパ、よくおっさんに間違われるが、これでもまだ28歳だ。結婚してるわけじゃねーから、まだって言い方が正しいかどうかはわからん。冒険者やってて、結婚する奴ってのはどこで出会ってやがるんだ。まったく⋯⋯


 俺のパーティーは、ガージン、ダッド、ラブーの四人。俗に言う腐れ縁ってやつだ。気がついた時にはいつも四人だったからそのまま冒険者パーティーになったって感じだ。


 そんな俺達がいつものように十階層で狩りをするために魔物を捜索していると、女性の悲鳴が聞こえた。俺達は顔を一瞬見合わせ即座に声の方へと走り始める。長年付き合ってりゃ、わざわざ言葉なんて交わさなくったって即座に行動に移せる。逆にそれが出来なきゃこの階層じゃ生きられないってもんだ。


「なんだこれ?」


「んなもん気にしてる場合じゃねー! ガージン、ラブーは右だ!」


「嬢ちゃんは?」


「まずはキメラを分配させろ! 流石に同時に三体は無理だ。嬢ちゃんっ! もうちっと粘れるか?」


 流石にこの状況をどうにかするには、俺達だけじゃ荷が重すぎる。他にも声を聞いて助太刀してくれるパーティーを願うしかない。嬢ちゃんだってここまでこれる程の強さはあんだろう。倒すんじゃなくて、生き延びる事に集中してりゃある程度は⋯⋯


「はいっ!」


 両手で杖を握りしめ、涙を流しちゃいるがキメラからは目をそらさない。まだ、心は折れちゃいないな。


「よし! 本当にヤバくなったら遠慮なく言え。なんとかしてやる!」


 嬢ちゃんに向かってニカッと笑ってみせるが、本当はどうすることも出来やしない⋯⋯。俺達じゃキメラ一体倒すのだって、やっとの思いだ。


 一秒でも長く持ちこたえ、一秒でも早く助けが来るのを願う。俺達だってこの状況じゃいつ死んだっておかしくはねー。


 俺もダッドもキメラに近付きすぎず、離れすぎずの距離を保ちながら、たいしたダメージにもならない攻撃で意識をこちらに向かせ続ける。


「気合い入れろよっ! 出来るだけ耐えるんだ」


「ははっ、あと三十分は余裕だぜっ!」


「すまねーが、そっちにまで意識を向けられねぇ。傷を負ったら直ぐにいいな。ダッド様があっという間に治してやっから」


 顔を見ればわかる。内心じゃギリギリだって事が。それでも、ここから逃げたんじゃ冒険者として終わっちまう。


 早く来やがれ。クソッタレ⋯⋯


「おいっ! これどういう状況だよ!?」


 助かった⋯⋯そう思い声のする方へ一瞬視線を向けるが、どう見たって駆け出しの冒険者のガキだ。それでもいないよりかは全然マシだ。


「んなもんあとだっ! そこの嬢ちゃんを助けてやってくれ! 俺達は目の前の魔物で手一杯だ!」


 嬢ちゃんは魔力がいつの間にか尽きようで、キメラの攻撃を避けるだけで、反撃は一切できていなかった。致命傷にはなってないようだが、身体中に傷が出来ていた。


 それでもこっちに助けを求めねーとは、きもが座ってやがる。


「了解した!」


 これで嬢ちゃんの方はもう少しもつだろう。あとはそれまでに他のパーティーが助けに来てくれるかだけだ⋯⋯


 ズンッ。


 んっ?


 何かが倒れる音に目を向けると、嬢ちゃんを襲っていたキメラの首が地面に落ちている。


「お邪魔しまーす」


 ズンッ。


 はぁ?


 さっきのボウズがとんでもない早さで、俺達が戦っていたキメラの後ろに回り、首を落としやがった。


 ズンッ。


 そしてそのまま速度を緩めることも無く、ガージン達の方へ走っていったかと思えば、最後のキメラも一撃で首を落とす。


 何が起きてやがる?


 俺達があんだけ苦労して時間稼ぎをしてたって言うのに、ボウズはあっという間にキメラ三体を倒しきっちまった。


 とりあえずは、キメラの脅威が無くなったことは事実で、一段落したからまずは嬢ちゃんに何でこうなったかの説明を求める。このボウズに聞きたいことはあるが、状況把握が最優先だ。


「で、どうしてこうなったんだ!? どう考えたって無茶苦茶だ。無茶して死んでちゃ話しになんねーだろうが⋯⋯」


 四人の遺体は無惨な状況だ。怒りもあったが、悲しみも怒り以上にあった。同じ冒険者の遺体なんて見たくはなぇ。嬢ちゃんだって仲間を失った悲しみはあるだろう。


「キュア!」


 あぁん?


 嬢ちゃんに話してる最中に、なんの突拍子もなくボウズが回復魔法をかけた⋯⋯


 いや、そりゃ見りゃわかる。だが、回復速度が早すぎる。ってか、このボウズは戦士じゃなかったのか?


 むしろ、駆け出しじゃねーのか?


 俺達は嬢ちゃんに確認する事を投げ出し、ボウズに詰め寄る。こんなバカみたいな状況に理解が追い付きやしねぇ。


 そんな俺達の形相が悪かったのか、ボウズは慌てながら話しを流しやがる。冒険者相手に根掘り葉掘り聞くのはマナー違反だ。俺だってそんな聞かれても、素直に答えるわけがない。


 ただ、このボウズは別だ。無茶苦茶すぎる。「どうやって強くなった?」なんて生易しい質問が出来ないほどの強さだ。あり得ねぇ⋯⋯


 とりあえずはダンジョンから嬢ちゃんを救出するのが最優先だが、それが終わったら聞いてやる。マナー違反だと言われても、キメラ三体を一人で倒しきり、回復力の高い回復魔法まて使うんだ。マナーなんか知ったことじゃない。



 ただ、なんだ⋯⋯


 ああやって、女性と出会うって事は教えて貰えたし、助けられた事には変わりはないから、あまり無茶な質問は止めておいてやろう。

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