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32 軽食

「よかったらこれもどうだい? 疲れた体には甘味も取っておいた方がいいよ。あんまり食べると眠くなるだろうから一口食べる位がオススメかな」


 ここは、八階層の少しひらけたダンジョンの一角。魔物を倒しながらプラプラしていた俺に、昼食を取っていた冒険者のパーティーが話しかけてきた。ご飯を誘われたので、小腹が空いていたし、好意に甘えご飯を分けてもらっている。


「それにしてもここまで一人で来るなんて、キミは強いんだね?」


「ん~⋯⋯自分ではどれくらい強いか、よくわかってないんだよ。まぁそこそこって事にしておいてくれ」


 謙遜だな。と笑って一応は納得してくれたのは、このパーティーのリーダー、バールという男だ。彼らは四人パーティーでザンギ、ダザン、マールの男三人、女一人。どんなジョブを授かっているかは不明だけど、わざわざ聞くのはあんまり良い事ではないし、向こうも俺にはジョブの話しはしてこない。


「詮索はしないわ。でも、一人でダンジョンに潜っていたら色々と心配されるし、声を掛けられ続けて大変だったんじゃない?」


「まぁ、確かに⋯⋯新顔って事もあるだろうけど。ここの冒険者達は優しいんだろうなって、思うよ」


 マールはクスクスと笑いながら質問をしてきた。多分だけど魔法使いだろう。見た目はサキュバスだけど⋯⋯、そんなジョブは聞いたことが無いから魔法使いだと思う。


「ここの人達は確かに優しいわよ。私もよく声をかけられるし。良い人達に囲まれてるって実感するわ」


 ⋯⋯おいっ! なんでみんな下を向くんだ。

 多分あれだな。声をかけられるのは、アレがアレだからだろう。んっ? 待てよ。ってことは⋯⋯


「ちなみに、どんな経緯でパーティーを組んだの?」


 普通はそんなことは聞かない。ただ聞いてしまったのはあれだ。興味がマナーを上回ってしまったんだ。


「ん~⋯⋯。バールが最初に私を誘ってくれたのよ。当時の私は駆け出しで、たいした魔法も使え無かったのに、ザンギもダザンも是非って言ってくれて、頼らせて貰ってばかりで悪いと思ってはいるけど、優しいのよね。三人とも!」


「へぇ~駆け出しの時にね~」


 ふと三人の方へ目を向けると、三人とも照れ隠しの顔では無く、冷や汗をかきながらとぼけた表情をしている。アレだな⋯⋯


「まっ、まぁ。そうだ、冒険者は助け合ってこそだからな!」


「えぇ、そうですね。ご飯わけてもらったし」


 向こうは親切でご飯を誘ってくれたんだし、これ以上の話しは悪いな。なので話題を変えよう。


「みんなは何階層まで潜る予定なの?」


「十階層かな。俺達のパーティーで安全を保て無い所には行かないように心がけてるし。やっぱり命あってのものだし、誰も失いたく無いからね」


 話しを変えてよかった。みんなの顔が笑顔に戻ってくれた。マールは元々笑顔だったから、男達って意味のみんなだけどさ。


 それから、自分達の目標やら戦い方などの話しを聞き、話すのに夢中になり始め、話題はバール達がキメラと戦った時の話しに移り、興奮しながら喋り始めた。


「動きが速いし、攻撃力も強い。あれは俺が耐えられなかったら一瞬でやられていたな」


「確かにキメラの猛攻撃はとんでもなかった。何回、死んだと思ったことか」


「攻撃だって剣も魔法も効きづらいし、倒すまでにかなり時間かかったから、あれからは体力作りにも注力したしな」


 あぁ、確かにキメラと初めて戦った時は苦労するよな。と俺が初めて戦った時の事を思いだし、クレインに注意されていたのを忘れてポロっと喋ってしまった。


「確かに倒し方がわかるまでは苦労するよね。キメラって、裏に回って首筋に剣を突き刺せば、余裕って知らなかったし」


 と、言った瞬間に全員がえっ!? と驚いた顔をした。

 ヤバっ⋯⋯と、思った時にはもう遅かった。


「なんだそれ? そんな話し聞いたことがないぞ?

 どこの情報で知ったんだ? ⋯⋯まさかシュウが?」


「ははっ⋯⋯。ラッキーパンチってやつでたまたまねぇ~。たまたま知ってね」


「にしたって、あの素早いキメラの裏に回れるって凄いぞ?」


「そうだとも、俺達も色々考えて戦いはしたが、そんなこと出来やしなかった。いったい何人で戦ったんだ?」


「あ~⋯⋯、何人だったろ。あのときは回りのパーティーも協力してだったからな~」


 ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ! クレインに怒られる。


 とりあえず、死に物狂いにあの時は戦っていて、みんなも記憶が曖昧だったって事に無理やり納得させて逃げた。

 これ以上一緒になって話してたらボロを出しそうだったし。


 はぁ~失敗したな⋯⋯


 暫くは人と関わらないようにと、心に決めて更に下へ下へと向かった。人の目に付きそうな時には戦わず、人の目が無いときだけ戦う。と、進んできたけど。


 あれっ? そこまでしなくてもいいんじゃないか? どれだけ強いかはよくわからないけど、強い冒険者はごまんといるだろう。それに、ここまでの階層なら俺と対してかわらないのでは。と、バール達に驚かれた事を忘れ十階層で魔物を倒し続けていた。


 そんな時に叫び声が聞こえ、目の前のオーガを瞬殺し、悲鳴の声の方へ走り始めた。


 そういや、前もこんな事あったな。と、冷静な自分を客観視出来ている事に成長を感じた。


 まぁそんな場合じゃないけどさ⋯⋯

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