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31 ダンジョンの会話のマナー

 ダンジョンに入る俺に対して驚いた顔をして凝視する冒険者がいる中で、話しかけてきた冒険者もいたが、やはり一人でって言うのは非常に珍しいらしい。


 心配の声をかわし、予定通り一人でダンジョンへと足を踏み入れた。別に自殺願望があるわけじゃないから、身の安全は十分に確保しながら潜るって。


 まぁみんな優しい冒険者なんだろうな。


「なんかあったら直ぐに助けを呼べよ!! 絶対だぞ!」


 と、後ろから声をかけられたので、軽く右手を挙げて答えた。誰が言ってるのかはわからないし、ここでちゃんと受け答えなんてしたら、また時間がかかるよな。



「ファイアー」

「よいしょっと」

「これで終わり!」


 と、独り言を良いながら迫ってくる魔物を倒しながら進む。口に出すこともないけど、声を出した方が気持ちも力も入るので、わざわざ我慢ることはしない。


 横目で見えた他の冒険者達も同じようなもんだし、このまま進もう。



 三時間ほどで冒険者と会う機会も減ってきた。そりゃ下に行けば行くほど魔物が強くなるから、当たり前って言えばそうなんだけど、それが達成感に繋がってくる。それに冒険者が多い階層だと魔物の取り合いになったりもするから、今回は出来るだけ早く下に進んだ。常連も多く、どこに下に行くための階段があるか聞けば、降りる速度も早くなる。その結果、五階層までは魔物と戦わず早歩きで進んだ。


「お前、仲間とはぐれたのか? 今日会った冒険者なら身なりで分かるが、特徴はあるか?」


 またか⋯⋯。すれ違う冒険者はみんな同じような事を言ってくる。だからと言って無下な対応は出来ない。冒険者が心配をするのは優しさだし、それにちゃんと受け答えをするのがマナーだ。

 ダンジョン以外なら、素っ気なく対応することもあるけど、ここはダンジョンだ。


「いや、仲間とはぐれた訳じゃないよ。元々一人で潜ってるんだ。心配してくれてありがと! お互い頑張ろう!」


 自然と笑顔で答えられる。


「一人っ? おいおい、ここはもう五階層だぞ。危険だ。それにお前さんの強さはわからないが、変則的な事態はどうするっていうだ?」


 もう一種のテンプレートだ。驚かれる顔も、忠告を受けるのも。

 イエーサの頃ならば、『どうせ逃げられるから大丈夫だろ』と、周知の事実だったから、『今日もダンジョンか。頑張れよ』位しか声をかけられなかった。


「はははっ。大丈夫! 逃げ足だけには自信があるし、逃げられなかったことなんて一度もないからさ! じゃあまた!」


「お、おい⋯⋯」


 あっけらかんとした顔で呼び止められそうになったけど、右手を上げて挨拶を終わらせ、走って逃げる。マナーと言っても流石に何度も何度もこのやり取りをしていると疲れてしまうから仕方ない。

 そう仕方ないっ! 俺はちゃんと対応してるし、悪くない!


 事前の話しでは、このダンジョンは二十階で、十階まで行ける冒険者は一握りって話しだった。ここまでの魔物や、魔物と戦う冒険者を観察してきたけど、あまり強そうな感じはなかった。


「まだまだ行けそうだし、七階位から周りの様子を見て魔物と戦うかな」


 一人でっていうので目立ってしまっているので、襲われていると勘違いされて、下手に戦い中に助太刀されても困ってしまう。

 目立たない所でのんびり戦おう。戦うのも好きだけど、ダンジョンを見てるだけでも楽しいから、最悪戦わなくてもいいしな。


 そんなわけで冒険者を見かける事が、かなり少なくなって来たので、歩く速度を落とし、周りを見ながら進めるほど余裕ができた。

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