29 都市サビベール
「ねぇ! あそこ、あそこにしましょう!」
国境から徒歩で五時間ほど歩き到着した都市サビベール。このサブール共和国は、都市が五つが集まっており、イエーサの様に王城がある中央都市のみが発展してると言うわけではない。
それぞれの都市の中央に立派な建物があり、そこにその都市一の権力者が住んでいるそうだ。そして、何かあった場合はその五人が集まり決定するという。
このサビベールで暫く情報収集し、次の都市へと向かう事にした俺達の拠点ともなる宿屋をクレインが俺の服を引っ張りながらすすめてくる。
にしても、やけにテンションたけーな。まぁ機嫌が良くなったならそれはそれで良いけどさ。
「別にどこでも良いけど、あそこの宿屋はいいのか?」
「前に停まったことがあるんだけど、お風呂が大きくてご飯も美味しいのよ。町にいるときくらいしかお風呂に入れないんだから、少しでも良いお風呂に入りたいじゃない?」
別に体が綺麗に出来れば、お風呂の大きさなんてどうでもいいけど、女性には違うのかな? まぁなんにせよ、俺達は拠点となる宿屋を決め、情報収集の日々を送ることにした。
* * * * *
宿屋に着いた俺達は、今後の活動のすり合わせをするために俺の部屋にクレインがやってきた。
「なぁ、俺の両親が勇者だってバレたらマズイって言ってたけどさ⋯⋯」
「はぁ?」
「違う! 違うよ。そうじゃない。
そうじゃなくて、俺の両親の事を聞き回ってたらそのうちバレるんじゃないのか? 俺が勇者の子供だってさ」
眉間にシワを寄せて顔を近づけてきたクレインだったけど、俺が聞きたいことを理解してくれて、いつものクレインに戻ってくれた。
「あぁ、それなら大丈夫よ。勇者に憧れている冒険者と、色々なダンジョンを見て回りたいっていう冒険者のパーティーって事にするから。
だから、シュウは一切の聞き込みはしなくて良いわ。ダンジョンの事でも聞いて潜っててよ」
「おぉ! それは良いアイデアだな! せっかくここまで来たんだし、潜れるなら潜っておきたい」
「でも絶対に! ぜーったいに! 力は押さえなさいよ。
力を押さえないで戦ったりしたらすぐにバレて面倒なことになるのはわかりきってるんだからね」
クレインの話しだと、とんでもない力を秘めているらしい。確かに、重力魔法から解放された俺自信、強くなったとは思うけど、それがどれくらいなのかはサッパリわからない。学生時代のアディーよりは間違い無く強いのは確かだ。
あくまでも学生時代の記憶だし、今のアディーはペット使いなので比べようがない。
ペット使いって女子受け間違いなしだよな。
『君にぴったりの小動物はリスかな?』とか。マジで笑える。
「なに急にニヤニヤしてるのよ?」
「あぁ⋯⋯。ちょっと昔の同級生を思い出しただけだよ。
ってか、クレインは俺の両親に詳しいのか? 憧れているって言うなら詳しくないと、わざわざここまで調べにくるのは不審がられるだろ?」
「それなら大丈夫よ。他の人達より全然詳しいわ。だって⋯⋯」
「だって?」
「⋯⋯っ。はぁ? 何でもかんでも女性から情報を聞き出そうとするとか気持ち悪いからね! 病気なの?」
今後の活動のすり合わせをするために、聞いたのに何て理不尽なんだろ⋯⋯。
まぁ何かしら大丈夫な理由があるみたいだし、これ以上はさっきの二の舞になるから、質問をするのを止めた。
「とりあえずそう言うことだから。シュウは力加減を気をつけて、バレないようにしなさいよ。それじゃ、私はお風呂に入ってごはん食べるから、じゃあね」
と、クレインは俺の部屋から出ていった。勝手すぎやしないかな? 今に始まったことじゃないけどさ。
明日からの活動方法は決まったし、何かあれば隣の部屋なんだし、夜にでも相談すればいいか。情報収集はクレインに任せて俺は久しぶりのダンジョンを堪能しよう。




