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26 【閑話】ダンジョン内

 シュウもそうだが、冒険者というのは、自分がどのくらい強くなったのかを一番気になる人種だ。その強さの確認として冒険者同士の模擬戦がある。しかし、やっぱり魔物との戦いが一番わかる。


 冒険者同士だと、どうしても致命傷を与えないようにと、心にセーブがかかってしまうが、魔物相手ならそんなことは無いからである。


 そして、今この状況は、シュウにとって何物にも変えがたい幸せな時間だ。


「おいおい、まだ一階層だって言うのにオークかよ。まぁ今の俺ならいけるだろ」


 シュウはオーク三体を目の前に落ち着いて⋯⋯いや、興奮していた。

 以前のシュウならオークとの一対一が丁度良い勝負となっていたが、ガーラで二体を難なく倒せた記憶から、三体だとしても余裕だと認識していた。

 実際は後ろにクレインがいるのだが、誰もいない環境と考えているシュウは、普通に倒すのでは無く、色々と試してみたい衝動にかられていた。


「んじゃまずは、ファイアー3連発といきますか」


 威力、速度ともに上がっているファイアーをオークは避けることが出来ず、三体それぞれが悶え苦しむ。


「避けられないってか。なら一筆書きで決めてやるっ!」


 そう言いながら、右端のオークの側面に瞬時に移動すると、ダッシュジャンプしながら右端から左端のオークまで一直線に首を狙い切りつける。

 ボトっ、ボトっ、ボトっ。と、ほぼ同時にオークの首が落ちた。


「うん。いい感じだ!」


 その後も、オーク、オーガ、ナーガ、サラマンダーと、呪文や剣術だけでなく、打撃なども試しながら次々と倒していく。


「⋯⋯俺の強さって、おかしくなってない?」




 クレインはメモを取りながら、シュウの一つ一つの戦闘に驚きを隠せなかった。オークは良いとしても、数体のオーガやサラマンダー相手に戦えるだけでも一流なのに、シュウは全て一撃で倒し続けているのだから仕方ない。


「重力魔法で押さえつけるのも納得だわ⋯⋯」


 クレインの独り言が漏れた。この時点ではシュウの本気の強さがわからなかったが、それでも怒りに任せて暴れられたらイエーサが大打撃を受けるくらいの事は理解できた。


 *   ※   ※   ※   ※



「なんだあれ? クレイン見てみろよ、見たこと無い魔物がいるぞ」


 四階層の中盤まで来た二人だったが、急にシュウが魔物を指差しながら、クレインに言った。魔物までの距離おそよ100mだ。


「えっ!? ⋯⋯嘘」


「ちょっと殺ってくるわ」


「ちょっ、ちょっとーー!」


 クレインの返事も聞かず、初めて見る魔物に興奮し全力疾走をするシュウ。


「キメラくらい知っときなさいよ! 死ぬわよあのバカ。ったくもう! こんなところで、なんで能力使う羽目になるのよ⋯⋯」


 クレインは危機感から()()を解放し、()()でシュウの後を追う。





 だがしかし⋯⋯





「はあっ?」


 先にキメラに到着したシュウの戦闘シーンを目撃し、クレインは途中で足を止めた。それは仕方ない事かもしれない。


 キメラと言えば、ライオンとサラマンダーを足して二で割り、二足歩行にした様な姿。上位種もいるが、このキメラですら上級冒険者が二人でなんとか倒せるレベルである。

 そのキメラ相手に、魔法や剣技で完全に遊びながら戦っている。


「コイツめっちゃ硬いし、魔法もそんなに効いてる感じしねーぞ。もしかしてコイツ強いんじゃね?」


 その言葉で、クレインは走る事を思いだし、今度はシュウにはバレないように普通に走り始め、シュウとキメラの近くまでたどり着いた。


「キメラよっ! バカなの? 強いに決まってるでしょうが!」


「あぁ、コイツがキメラっていう魔物か。始めてみたから知らなかったよ。まぁ十分に楽しめたし、もういいや。んじゃな!」


 弱りきったキメラの頭上に飛び、そのまま剣をキメラの頭に突き刺しトドメをさしたシュウであった。


 その後も、今までのシュウではイエーサの洞窟で目にしたことが無い魔物を見るたびに興奮、そして自分の力を確かめるように戦い、終わってみれば圧勝。そのままダンジョンを全て網羅し満足したシュウと、今後の事を必死に考えるクレインはギーラと足を進めた。


 シュウの強さを周りに知られたら、どんなことに使われるかわかったもんじゃない。この世の住人が全て善人では無いのだ。シュウが世間知らずで、自分の力を理解していないし、周りも気づいていないから平和なのである。

 このどれかが崩れたらと思うと⋯⋯。クレインは冷や汗が自然と流れた。


「報告は私がするからシュウは宿屋でゆっくり休んでて良いわよ」

(こんなバカみたい強さを報告できるわけがない。強敵に関しては隠れて進み、見つかった場合も全て運良く逃げれた事にしよう)


 こうして、シュウの強さのおかしさを知ったクレインは、自分が何とかしなければと強い責任感を持つことになるのであった。


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