21 新しいダンジョン
「あれってダンジョンだよな?」
「まぁそうだと思うけど、まさか潜るの?」
宿屋を後にした俺達は、次の町へと歩き始め2日目が経過したある日、ダンジョンを見つけた。ダンジョンと洞窟の見た目の違いは、『なんとなくそう思う』と言うだけで実際に潜ってみなければわからない。
昼間は明るいとか、魔物が次から次へと沸くとか、下に降りる階段があるとか。他の冒険者達が狩りをしているとか。
「そりゃ潜るでしょ? 知らないダンジョンがあるんだよ。逆に聞くけど、潜らない理由ってなに?」
「両親の謎を探すから。でいいかしら?」
「何年も前に死んだって言われてるんだから、今さら急いだって、なんも変わらないよ。ちょっとだけだし、さぁ行くぞ!」
まぁ付いてこなければ、付いてこないでも良いと思った。向こうが勝手に付いてきて、勝手に離れるんだ。賠償金が浮くってだけだしな。
「も~! はいはいわかったわよ」
あ、付いてくるんだ。
* * * * *
洞窟に潜り始めてから、すぐに沸いて出てきたポーンラビットやファングコウモリ、ゴブリン等を俺達は⋯⋯いや、俺が倒しながら下へ降りる階段を見つ下り始めた。
「なぁ、一個聞いていいか?」
「⋯⋯いやらしいことですか?」
ブッ!
「な、なわけあるか! なんでクレインは一切戦わないんだ? 僧侶って言ったって回復だけじゃなく、ある程度はその杖で殴ったり払ったりするだろ?」
「⋯⋯」
俺の質問に対して杖を両手で持ち、斜め上を見ながらとぼけようとしている。
「あれ、もしかして戦闘能力ゼロ?」
「そうじゃないわないでしょ! シュウが速すぎて付いていけないだけよ。少しは自重しないとパーティーとして成り立たないわよ」
ん~⋯⋯あっそうか! 重力魔法から解放されたから、速すぎるのか。でも、年上なのにそれで怒るって恥ずかしくないのかな?
「ま、まぁ。私に合わせちゃうと遅くなっちゃうだろうから? いいわよ好きにして」
「おっ、そうか! ならはぐれたら勝手にダンジョンから出てしまってもいいぞ⋯⋯ぐぇっ!」
そう言って走り始めようとする俺の襟元をクレインは引っ張った。それ、間違ったら死ぬからやめた方がいいよ。
「そんなのダメに決まってるでしょ! はぐれない程度に好きにしていいって言ってるのよ。もし、置いていったら王国へ帰ったあと、あることないこと言いふらして回るからね!」
コイツ最低な奴だ⋯⋯
こんな奴がいるから冒険者を変な目で見る町人が現れるんだよ。ダンジョンに潜り続けてたせいもあるだろうけど。
「はいはい、わかったよ」
それからはちょくちょくとクレインの存在を確認しながら、一人で黙々と魔物を狩り続けた。
土や岩の仄かな匂い。自然に出来た彫刻美。先がわからないドキドキ感。一言で言うなら最高である。
「ダンジョンって良いな!」
「変態じゃん」
久しぶりに声をかけてみたら、まさかの罵倒⋯⋯
さっきはパーティーとか言っておきながら、コミュニケーションを取るつもりは無いのかね。
結局、このダンジョンは三層までしかない野良のダンジョンだった。目新しいものは無いし、出てくる魔物も三層まで全て同じの雑魚魔物。長居をしても仕方ないので、一通り探索して地上に戻ってきた。
ダンジョンから出る頃には日が落ち始めており、八時間近く潜っていたんだろか。
「ねぇ、もう暗いけど。どんだけ潜ってれば気がすむのよ。
何がちょっとだけなの? ちょっとのレベルはあっという間に過ぎたわよ」
「まあまあ、たまにはそんな日もあるさ、満足したしさっさと飯食って、明日に備えて寝よーぜ!」
怒ってる人に話しても、疲れるだけだ。ならばさっさと飯食って寝るに限る。久しぶりに潜れた高揚感で、野宿が出来なかったのが嘘のようにぐっすり寝れた。
俺達はこの日から、日がくれたら野宿する。という当たり前のことがスタートした。




