02 【開幕】春風の息吹
学校に付いた俺達は、教室へは向かわず、そのまま春風の祭壇へと向かった。祭壇へ向かう通路では、後輩たちが仲の良い先輩へエールを送っている。
俺やアディ。特にアディは優等生の為か、後輩が至るところでエールを送っている。
まだ結果が出たわけではないけど、不安からか通路で踞ってしまっている同級生や、エールを送りながら泣き出してしまう後輩もいる。
「ヤッホー! 元気無いんじゃない?」
俺達が、そんなことを思いながら通路を歩いていると、背中に張り手をしながら、クラスメイトのミャリルが話しかけてきた。
「いや、何でそんなに元気なんだよ⋯⋯? ミャリルには恐怖ってものが無いのか?」
「にゃはは。自分じゃどうにもならないんだよ。なら気にするだけ無駄って事でしょ?」
頭の後ろで腕を組ながら、その場でクルっと回りながらミャリルは答えてきた。
ミャリルはいつだって笑顔で、クラスのムードメーカーでもある。
「まーでも、レアジョブだけは勘弁してほしいよね。レアって殆どがハズレだもん」
「たしかに⋯⋯ここ数年で唯一のアタリはスプリンターだけたぜ」
二人ともレアジョブを懸念しているが、俺だってレアジョブだけは御免だ。レアって付くからアタリだと思いきや、殆どが希少種ってだけでハズレばかり。肩揉み師や清掃員。暗算マスターなんていうジョブかすら怪しいものものまである。
だからレアジョブを授かった殆どの人達は、レストランのウェイターや漁師の補佐などのサポート役に回って生活している。
「まぁそうそうに授からないからレアってわけだし。そんなに気にする事も無いと思うけどな」
「にゃはは。確かにね~」
口ではそんな事を言っても、やっぱり頭の片隅からレアジョブの存在は拭いきれない。今までの十年間を有意義にしたいって誰だって思うだろ?
祭壇に付くと、校長先生を始め諸先生方、今朝会った料理長や各役員、学校を卒業していった先輩方まで壁沿いに整列している。
真ん中に並べられた椅子が50個。俺達の席だ。
祭壇と言ったっていつもと変わらない普段から使っている木で出来た普通の椅子。
ただそれでも、この椅子に座るのもこれで最後だと思うと、心に何かが押し寄せる。
座り順なんて無いから、俺とアディとミャリルは適当に三つ並んで空いている椅子を見つけて腰を落とす。
先生達は誰も喋ってはいなかったが、生徒達は全員が椅子に付くまでの間、それぞれがそれぞれ好きなように喋っている。
不安な人もいれば、明るく振る舞っている人もいる。
でも、心のどこかではわかっている。今日が近づく度に嫌でも頭によぎるんだから、仕方ない。
今日からは、昨日までのようにはいかないと。
「ではこれより、春風の息吹を始める!」
校長先生の声で生徒は一斉に口を閉じ、校長先生の方を向く。
「皆も解っていると思うことだが、必ずしも望んだジョブが授かれる訳ではない。それでも与えられたジョブを受け止め新たなる一歩を踏み出してほしい!
そして、冒険者のジョブを授かったものは命の危機はあるものの世界平和の為に、頑張ってほしい!」
「「「はい!」」」
俺達はその言葉を受け止め全員で答える。
「それではまず始めに、今期最優秀生徒のアディは前へ!」
「はい!」
「行ってこい!」
そう言いながら俺はアディの背中を押した。
アディは俺と目が合うと、笑顔で親指を立て笑顔で教壇へ向かう。
教壇に着くと祈りのポーズをし、一言力強く呟く。
「私にジョブを」
その瞬間、アディが光輝き。暫くするとその光がアディの中に入っていった。
ゆっくりとアディは立ち上がると、その場でそのまま崩れ落ちた。
「アディ!!」
一瞬何が起きたかわからず、立ち上がって叫ぶ俺に気づくとアディは、今にも消えそうな声で口を開いた。
「⋯⋯ペット使い。な、なんだよそれ⋯⋯そんなレアジョブ聞いたことねーよ⋯⋯俺の人生が終わったぜ⋯⋯」
⋯⋯っ!?
嘘だろ⋯⋯一発目からレアジョブだと⋯⋯