18 ガーラ
二日間も夜通し歩いて、次の日のお昼にはガーラの町にたどり着いた。途中途中で小休憩を挟んではいたけど、はっきり言って眠い⋯⋯すぐにでも宿屋で眠りにつきたい!
本来予定していた一人旅であれば、日が沈んだ頃に安全そうな場所を確保して、簡単な寝具を用意すればゆっくり寝れたはずだった。ダンジョンに潜ってるときだって戻るのが面倒くさいときは、安全そうな場所があればそのまま眠りについていた。
しかしだ。
会ったばかりで知りもしない女性と、野宿なんて出来るわけがない。何もない。それはわかってはいる。
だとしても!
綺麗なだけならいざ知らず、あのけしからん物を持っているとなれば、落ち着いて寝れるはずはない。
『俺、いつもダンジョンに潜ってるから月明かり適度の光さえあれば、全然明るいよ』
と、誤魔化して平気な顔をして歩き続けた。初めて通る道が暗闇の中というのは恐怖でしかない。道もよくわからないし、どんな魔物が襲ってくるかも、どこから襲ってくるかもわからないんだ。
俺はこの日を機会に、【けしからん物にも馴れる!】を心に決めたのは言うまでもない。
「まさかガーラまで二日で着くとは思っていなかったわ。馬車だとしても普通は4日とかかかるし、なんだか久しぶりに歩いたわ~」
クレインは町につくなり、疲労感はありそうだが、達成感のような顔で背伸びをしている。
「へぇ、こんな田舎町にもクレインは来たことあるんだ。俺は初めての町だからなんだかワクワクするよ!」
「ん~。そうなんだ。私は、にむ⋯⋯げほんげほんっ。に、にっ。日常の暇潰し! そう日常の暇潰しで来たことがあるのよ! わかった?」
「お、おう⋯⋯」
日常の暇潰しってなんだよ。冒険者になってから日常の暇潰しなんて経験したこと無いぞ。まぁダンジョンが日常だったから、暇潰しに魔物をどれだけ倒さず鬼ごっこ出来るかってやってたの同じかな?
多分、違うだろうけど⋯⋯
「まぁでも、まさか着いてこれるとは思わなかったよ。小休憩を挟んでいたけど、途中でへばるもんだとばかり思ってたさ」
「へぇ、じゃ少しは見直したかしら?
冒険者は技術もそうだけど、体力が重要だからね。こう見えても普段から体力作りは怠ったことないのよ。私のが先輩って言うのもあるけど、シュウには負けないわよ!」
町についた為かやたら上機嫌な笑顔でそう答えてくる。
「なるほどね~。ちなみに、ここはどんな町なんだ? 言いたくは無いけど、俺の常識って少しあれだからさ。
知っておいた方が良い事は事前に知っておいた方が下手な揉め事も無いだろうし。教えてくれよ」
とりあえず宿屋に向かい歩き始めてから、ふと気になったので、この町の事を教えてもらおうもクレインに訪ねる。
「ん~。何も無いわね、ただの田舎町!
宿屋も普通だし、ご飯だって普通。お風呂だって田舎町だから景色が良いかと言えば、除き防止なのか、気で被われてて何も見えないし。だから今日一日ゆっくり休んで次の町って感じよ」
「へぇ~。じゃぁあの必死に走ってる人も普通なのか? なんか親近感を覚える良い町だな!」
「な、なわけないでしょうが! 助けるわよ!」
あぁ、やっぱり⋯⋯。無装備でオーク二体を引き連れて走ってるわけないか。