15 力加減
あれからの一週間は同級生達に出来るだけ会うことに時間を使った。
急にダンジョンに行かなくなるっていうのは気持ちが悪かったから、ダンジョンには毎日潜った。
ただ、潜る時間はかなり短めの六時間ほどに留めてはいたけど。
「気がつけば腹筋をしていた」
「何が入ってるのって位にバックが重かった」
「自由時間って言えば走ってた」
「気持ちが悪い位に真面目」
「ダンジョンをデートの場所として誘うのは気持ち悪い」
などなど。
総合的に言えば、筋トレバカ野郎だ。思い出しても、筋トレとダンジョンしか俺の青春時代には存在しない。
だから俺は、今日でダンジョンに潜るのを止める!
ダンジョンの筋トレバカ野郎の汚名返上だ。
そんなこんなで、必要最低限の荷物をまとめ両親の謎を調べにイコバガラに向かう準備をしている。
昔の思いでの品が全て筋トレ用品だと気づいたときは少しだけ涙が流れた。
「よし、こんなもんでいいだろう」
一通りの荷物を積めたバックを背中にしょって町の入り口へと向かう。勿論学生時代のバックではない。あれは、何も入れてなくても重い。間違いなく筋トレ用品だ。
「今日は遅いのね。そのぶん遅くまでダンジョンに潜るのかしら、気を付けてね」
「今日は荷物が多いな。ついにダンジョンに住むのか」
「そんなに荷物が多いとダンジョンはキツくないのかね?」
⋯⋯あぁ、とても実感する。何気ない言葉の一つ一つが傷つく。
気づいてしまえば、俺の評価はダンジョンの筋トレバカ野郎だ。声をかけてくれた人にはダンジョンにはもう潜らず冒険に出るむねを伝えたが、全員が驚いていた。中には、「ダンジョンと一体化するのが夢ではなかったのか?」とふざけた事を言ってくる人までいたから驚きだ。
人をなんだと思ってやがる。
町から出ることなんて今まで経験してこなかったから、期待以上に緊張感が半端無い。
そのせいあって、体が信じられないくらいに軽い。浮かれてしまってあるんだろう。緊張感を持たなきゃな。
⋯⋯
⋯⋯⋯⋯
んっ? 実際に軽くね?
バックは結構な量の荷物を入れているにもかかわらず、全く重さを感じないし。あれ?
あっ! 重力魔法が解けたのか!?
そういや一週間ほどだと言っていたしな。とりあえずどれだけ軽くなったか試しておこう。一種のパワーアップと言っても過言では無いからな。
荷物を肩からおろし、腰についていた剣を抜き素振りをしてみる。
ブンっ!
ブンっ!
⋯⋯おい。ちょっと待て。
「なんじゃこりゃ! パワーアップの一言で済ませられるレベルじゃねーぞ」
素振りをした延長上の地面が軽くえぐれてる。風圧でこんななるか?
ってことは、今までも走るのには自信があったがどれだけ速くなってるんだ。
*
町を出てからすぐの場所でかれこれ一時間ほど、走ったり飛んだり、魔法を撃ったり、筋トレしてみたりしたが全てにおいてぶっ飛んでいた。
マジであいつらどんだけ強力な重力魔法をかけてやがったんだ。
体感的にだけど身体能力がネネさんを越えているぞ。
そう、こんだけ上がっている能力にテンションが上がりすぎてしまったのがいけなかった。普段なら絶対にやらないが何気なく地面の石を拾い、物音のする茂みに思いっきりぶん投げてしまった。
50mほど離れていたから死んではいないよな。これで人殺しなんかになったら国家権力を使ってもらい逃亡しよう。