14 王室
コロルとの話しをやや強引に切り上げ、王城に向かって走り始めた。
今日はゆっくりと趣味探しをするはずだったのにどうしてこうなった⋯⋯
やっぱりコロルが悪いよな。殴っとくべきだった。
とは言え、そもそもの根源は両親か? 考えても見てほしい。今まで自分が普通だと思っていた行動が変人だったらどうだろうか。
パンツをはかないのが当たり前だと思っていたのに、実ははくものだと後から教えられたら、俺なら間違いなく引きこもる。
そんななんとも言えない感情のまま王城に向かい走り続ける。
この全速力も他から見たら変な風に見られているのではないだろうか? と、頭によぎったがわからないことを考えていても仕方の無いことなので考えるのを辞めた。
王城に着いたあとも兵士達の事はスルーし、居るであろう王室の扉を開ける。
「おい、おっさん! 一個⋯⋯いや、いっぱい教えてほしいことがある」
「むっ、なんじゃ急に。というかお前から訪ねてくるなんて珍しい。今日は雷でもなるのかの」
「うるせーよ。そう言うのはいいんだよ」
ニヤニヤと窓から外を見ながら嬉しそうに話す姿は、まさに近所のおっさんのそれだな。やはり王様とは全く思えない。
「相変わらずせっかちな奴じゃな、茶でも飲むか
?」
「いやいいから。本当に」
「そうか」
「で、俺は変人なのか? コロル⋯⋯学生時代の同級生にお前は変わってると言われたぞ」
「ふむ⋯⋯何を基準にして言うかによるから、ハッキリとはこうだ。と言えないのが難しい。お前の行動の全てを意味するのか、また一部を切り取っての事なのか? でも変わってくるだろう。しか⋯⋯」
「あ、もういいや。額の汗見れば俺が変人なのを隠していたのがバレバレだ」
「むっ!? い、いや⋯⋯」
やっぱり王様なのだろうか? 隠していた事をバレても平然とたたずもうとするしな。まぁ、汗って言うのは嘘だけど、かまをかけて正解だった。大体、意味のわからない言い回しが始まったら怪しいと思えと昔、両親に習ったしな。
いや、両親が悪だから今ここにいるのか⋯⋯
「で、なぜ黙っていた?」
「⋯⋯わかった、話そう。ちなみにどれの事を言っているじゃ?」
「逆手で訓練していたこと、毎日ダンジョンに潜ること、毎朝走っていたことだよ」
「おっ、おう、それらか、ふむ。それは純粋にお前を少しでも強くしたいって言う親心だったんだろう」
「あぁ? 他にもあるんだな。言えよ」
まだ隠そうとするか。素直に教えてくれるような優しい王様はいないのか。
「⋯⋯⋯⋯。常に重力魔法をかけている」
「はぁぁ? なんだそれっ? なんでそんなことまでしてんだよ?」
「お前の両親は元勇者じゃ。他の両親とは違う。⋯⋯周りの期待もあったろう」
そんな事を言いながらまた窓から外を眺め始めるが、腑に落ちない点がある。
「周りの期待って、俺の同級生からも両親が元勇者なんて言われたことないぞ。理由は知らないけど、俺の両親が元勇者って知っていたのはそんなに多くは無かったんだろ?」
「そうじゃの、知っていたのはこの王城にいるもの達だけかのぅ」
「ならおっさんのせいじゃねーか! バカ野郎!」
何が、だけかのぅ。だ。諸悪の根源はコイツじゃねーか。
「大体、冒険者になるかどうかもわからないのに、そんな鍛練させるってどうかしているぞ」
「お、おう。そうじゃよな? わからないのにのにすまなかったな」
「全くだ。でもお陰で強くなれたのには感謝しなきゃな」
「そう言ってくれると助かるな。どうじゃ強さも分かったし両親の謎を調べにイコバガラに向かってみては?」
「えっ、あぁ。考えとく。まぁもういいや。とりあえずもう重力魔法をかけるなよ。じゃあな」
「そ、そうか。わかった、あと一週間もすれば解けるだろうから。今後はかけないよう伝えておく。ではまたじゃな」
そう言いながら、俺に向けて手を振ってくる。いつもなら少しでも引き留めようとするのだが、流石にバレた事が気まずいんだろうな。
そんな事を思いながら、俺は王城を後にした。さて、これからはどうするか。両親の事も気にはなるけど、そもそも俺がどれくらい強いのかも気になるからそれを確認してから決めても遅くはないな。
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「ルルよ」
「はっ、ここに」
「危なかったな」
「えぇでも重力魔法だけで済んだのは良かったかと」
「うむ。確かにな」