12 勇者の息子
ダンジョンでの一件を他のやつらに任せて報告に行かなかったら、兵士が家まで押し掛けてきて、それを逃げたら兵士長自らが俺を王城まで拉致。
ここまでで既にツッコミたい気持ちが全面に出て散るのに、その上で俺の両親が勇者だと?
ははっ⋯⋯俺の記憶じゃ両親は他界してるはずなんだけど。
冒険者が死ぬと勇者って呼ばれるようにでもなるのか?
「まぁ急に言われても頭が追い付かんじゃろうが、正しくは元勇者じゃな」
「ちょっ、ちょっと待ってくれ。ちゃんと説明してくれ。随分前に両親は死んだと聞いてるんだぞ」
「だから、元勇者じゃよ。確かに二人とも死んだんじゃろう。その予兆もなく、そして原因もわからずな⋯⋯」
オッサンは次第に声が小さくながらも、喋り続けた。
「結局、何もわからずじまいじゃった⋯⋯」
そうだ。俺が学校に通っているときの急な知らせがきた。
死ねば遺体が残る。誰だか分からなくても、王城から支給された首から下げるネックレスに個人名が記載されているから分かるようになっている。
ただ両親の場合は、遺体はなくネックレスだけが見つかったと聞いてる。
なかなか帰ってこなかった事を心配し、派遣チームが組まれ調査の結果だった⋯⋯
「あれから何度も調査団が調べに行ったの。私も何度も行った。でも手掛かりは掴めなかった。私も調査団と組めば行けるダンジョンだから、あの二人がモンスターに殺されるなんて考えられない」
「そんなに両親は強かったのか?」
両親が冒険者だとは知っていたが、勇者とは勿論知らなかった。それに、そもそも強かったこと事態を始めて知った。
「強かった。強いと言うの言葉以外が見つからない位に」
「だから、定期的に王城の兵士を稽古してもらっておったんじゃよ。生まれたときから王城にお前が来ていたのはそういうことじゃ」
確かに、気がついたときには王城へ自由に出入り出来ていた。物心ついてもオッサンが王様だとは思えず、王様と呼んだことは一度もない。今さらって感じだ。
それにここにくるたびに両親の話しを聞かされ、死んでしまった両親と比較されているようで、呼ばれてもなるべく行かないようにしていたくらいだ。
「で、それがなんだって言うんだ?」
両親の思い出話しはもういい。さっさと本題に入ってほしくて、そう二人に伝える。
「ふむ、つまりじゃ。死ぬはずの無いダンジョンで死んだ二人も、今回と同じ状態だったとしたら見えてくるんではと考えておる。勿論、今後の冒険者への注意喚起もあるんじゃな」
「私達としても出来るだけ詳細な情報がほしい。あのもの達では感じなかった事や、気づいたこと。勇者に育てられたからこそ気付ける点もあるのではと考えている」
勇者に育てられたと言われても、特別何かやってきたことなんかないぞ。冒険者として育てられる子供なんてどこも同じ様なもんだと思う。
俺だって物心つく頃には、山の中に一週間放置されるとか。中級ダンジョンを初級ダンジョンだと嘘をつかれ放り出されるとか。
にもかかわらず、その期待を膨らませた目で見られてもな⋯⋯
「いや、普通だよ。学校の成績だって報告にきた奴らとほぼ同じだし」
「いや、それは⋯⋯ま、まぁいいや。で、なにか無い?」
「やっぱりさっき言った通りで何も無いな。倒す事で必死だったし」
「そう、じゃあ何か思い出したら必ずここにきて教えてね」
そう頼まれればちゃんと答えなきゃならない。
「あぁ、わかったよ」
答えはするけど、絶対にいかない。
こうして俺はやっと王城から解放されたのはもう夜も耽り、焼肉は閉まっている。まったくたまったもんじゃない⋯⋯
――――――――――
「両親と関係があると思いますか?」
「直ぐに決めつけるのは安直すぎるとは思うが、卒業して直ぐのことじゃしな」
「では今後としては?」
「気付かれないようそれとなくフォローしながら、状況確認じゃな」
「畏まりました」