11 いざ王城へ
⋯⋯ここは?
まぁ、ここが何処なのかを調べる為に辺りを見渡すまでもない。
目の前の玉座に座ったオッサンが、すぐ横に立っているルルさんと喋ってる姿を見ればここが何処なのかなんてのは直ぐに分かる。
せめて目が冷ますまではベッドに寝かせるとかあるだろうに。大理石の地面に枕も用意せずに寝させるかね。
ひんやりとしていて、気持ちいいのって言うのはあるけど、優しさが足りない。
それにこんな広い部屋に、オッサンとルルさんと俺しかいないし、三人って言うならもっと小さい部屋でも良かったんじゃないのか? ベッドがある寝室とか。
「おっ、目覚めたな」
「えぇまぁ。色々と言いたいことはあるんだけど良いかな?」
オッサンは俺が目覚めたことに気がつくと、ルルさんと話すのを止め、こちらに目線を移してくる。
「まずは聞こうか。なんじゃ?」
このオッサン妙に偉そうなのが好きになれない。
「なぜ俺は、ルルさんに拉致られて手足をロープで縛られているんだ?」
俺は悪人かなんかなのか? 何も罪を犯しちゃいないはずだぞ。強いていってもルルさんに精神的ダメージを与えたくらいだ。それだって、一種の優しさと思っていただきたいまであるから俺は無罪だ。
「そんなのは簡単じゃ。お前がここに報告へ来ず、縛ってなければまた逃げるじゃろ?」
そのニヤニヤした顔を今すぐ止めてくれないかな。寝転んだままの姿勢ってだけでも屈辱なのに。
「焼肉が俺を呼んでいるからね。ってか報告なら他の奴らがここに来ただろ? それで十分じゃないか」
「確かに来たことは来たんじゃが、緊張しているのか要領を得なくてな」
ため息まじりでそう答えられた。
マジか⋯⋯。
報告くらいはちゃんと出来てくれよ。こんなオッサンになに緊張してるんだか。
「え~っと。見た目はゴブリンなのに、色が黒で攻撃も体力も今まで戦ってきたゴブリンとは比較にもならないくらい強かった。以上!」
「うむ。それは聞いたんじゃよ」
ならいいじゃねーか。俺を拉致する意味が全くわからない。ここまでする意味はなんなんだ。
俺はなぜこうまでしたのかの説明を求めるように、ルルさんへ目線を向ける。
「あのね、黒いゴブリンなんて今まで報告も無かったし私自身も見たことが無かったのよ」
「うん。そうだろうね。過去に何かあれば周知があるはずだし」
「だからほら、戦った感想聞きたいじゃない? どれ程の驚異なのかを知っておく必要もあるし」
何を言ってるんだこの人は。そんなのアイツらに聞けただろう。緊張していたって言ったって話しは出来るはずだ。
「⋯⋯もしかして、なんか隠してないか?」
⋯⋯
⋯⋯⋯⋯
なぜ黙る。
「隠してるんだな?」
「そっ、そんなことないわよ」
「いやいや、考えてみればこの部屋に兵士とかもいないのが不自然すぎるだろ」
この国が安全だとは言っても、ルルさん一人の護衛って言うのは変だ。いつもは兵士だけじゃなく大臣とかもいるのに。
「ん~⋯⋯。まぁこんなことがあったんじゃ。いつかはとは思っておったしな」
「えっ。いいんですか?」
「良いタイミングかもしれんしな」
何を喋ってるんだ。この二人は? 嫌な予感しかしないぞ。
「うむ。⋯⋯お前の両親は、勇者じゃ」
「はっ?」
はっあぁぁぁ? 急にこのオッサンなに言ってんだよ。
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