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01 四月一日早朝

楽しく読んでいただければと思います。

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 今日は誰が決めたか知らないけど【春風の息吹】なんてカッコイイ名前のおめでたい(・・・・・)日になっているが、当事者の俺達からすれば、人生最大の恐怖でしかない。


 街は一ヶ月も前から今日のこの日の為に連日盛り上がっている。


 今日行われる【春風の息吹】は、午前十時から始まるから寮生活の俺にとっては一時間前の九時に起きれば余裕で間に合う。

 にもかかわらず、緊張のあまり眠りについたのが深夜にもかかわらず起きたのは、午前七時だ。


 時計の針を何度見ても午前七時。


 いつもの朝ならあっという間に出掛けるまでの時間が過ぎていくのに、今日は時計が壊れているんじゃないかって言うくらい時計の針は動きゃしない⋯⋯


 だからと言って二度寝も出来ない。落ち着く事も出来ない俺は、気晴らしにジョギングをする為に街へ繰り出した。走っていると嫌なことは忘れられる。



 街を走り始めてしばらくすると前を走るクラスメイトのアディを見つけた。きっと彼も俺と同じなんだろうな。


「おはようアディ。お前も寝てられなかったのか?」


 俺はアディに近づき、肩をポンっと叩きながら話しかけた。


「おはようシュウ。まあな⋯⋯流石に期待以上に恐怖が強いぜ」


 チラッとアディの顔を見たが、やけにゲッソリしている。まぁ俺も同じような顔をしてるんだろうけど。


 アディは、クラスでは超が付くほどの優等生。学校で習う初級の剣術、武術、の二項目を全て完璧にマスターし、魔法だってある程度は使える。


 でも優等生だからこそ恐怖の何者でも無いんだろうな。

 ちなみに俺は全てにおいて平均値で、昔はアディよりちょっとだけ魔法が得意だった。


「おい、あそにいるの料理長だぜ」


 アディが前方に見える学校食堂のドアから出てきた、料理長を見つけると、走る速度を上げて近づいていく。俺もそれについていく形で後を追う。


「「おはようございます。料理長」」


「やぁ、おはよう。二人ともゆっくり寝てられなかったのか?」


 料理長はいつもの笑顔で挨拶をしてくれる。歳は三十才になろうとしてるが見た目は全然若く、体は武道家と遜色無いくらいに引き締まっている。


「はい、ついに今日が来てしまいましたから⋯⋯」


 アディはさっきまでより更に落ち込んだトーンで料理長に答える。


「ん~⋯⋯まぁ気持ちはわかるぞ。俺もあの時は恐怖で一睡も出来なかったからな」


 一回空を見上げそう言った後に、料理長は俺達の肩に手を起きながらニカッと笑い話しを続けてくれた。


「でもな、望んじゃいないジョブになったって、そのジョブで頑張れば良いことだって沢山あるぞ。

 勿論、その逆もそうさ。俺は望んじゃいないジョブ(調理師)にはなったが、綺麗な嫁さんと可愛い子供に恵まれて幸せだ。他のジョブになってたらこうはなってなかったろうしな」


「そ、そうですよね! ジョブで全てが決まる訳じゃないですし」


 俺は空元気でそう答え、朝の準備の邪魔をしちゃ悪いと思って、アディと二人で挨拶をしてまた走り始めた。


「俺も料理長みたいに、望んでいないジョブになったとしても笑えっかな⋯⋯」


「アディ元気にいこうぜ! 今の料理長は笑顔なんだ。あの人より下って事はまず無いだろう?」


 料理長は俺達の先輩にあたり、当時は【学校歴代最強】と言われた伝説の先輩だ。

 冒険者ジョブならどのジョブでも多大なる功績は確約されている。と言っても言い過ぎって事は全くない。


 それがまさかの調理師と来たもんだ⋯⋯


「なぁ、シュウ。もし俺達のどちらかがハズレで、どちらかがアタリだとしても、俺達の仲はそのままだぜ!」


「当たり前だろ! もしも俺が漁師になった場合は毎日新選な魚を当ての家まで届けるさ」


 俺達はそんな話しをしながら走り続け、気が付けば九時半を過ぎていた。


「それじゃ行くぜ」


「そうだな」


 こうして俺達は学校へと向かったが、ここからが地獄の始まりだった―――

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