第四十四話 三月の失踪
長く感じる学校が終わり放課後、月魄のみんなに会いに行く前に、ゲームセンターのショットに立ち寄る事にした。
今日はリズムトレジャー目当てで行く訳では無い。ただ、気になる事があって……。
「いらっしゃいませ......あ、咲斗。学校お疲れ様」
「おう......なぁ友梨、三月は今日来てるか?」
「三月ちゃん......? 今日はお休みの連絡を貰ったけど......?」
ああ、やっぱりか。思わず俺は、溜息を吐いてしまった。
「でも、いつも一緒に学校まで来てるんでしょ? なら、三月ちゃんがここに来てない事も知ってるはずなんじゃないの?」
「それが......今日も三月と一緒に学校までいたんだよ。だから、ここにも来てるはずだと思って......」
「そんな......何か思い当たりはないの?」
「ある。めっちゃある。実はな......」
(三分後)
「──へぇ、そんな事があったんだ......。花宮さんねぇ......私が知ってるのは、よくスーパーに行ってるって事だけど......」
「そっか......地元の人でも分からないって、益々謎が深まっていくな......」
「そうだね......とにかく! 今日はこんな所いないで、早く三月ちゃんを探してきなさい! もし迷子になってたら困るでしょ!」
「勿論、そのつもりだよ! じゃあ、見つかったら連絡入れるから!」
友梨に伝言を残し、自動ドアを抜けて、三月を探すのを初めた。
──とは行っても、一体何処に行ったんだろうか? 花宮さんの過去を知る、とは言ってたけども、ならその過去を知る事が出来る場所なんてあるのだろうか? ......駄目だ、全く思いつかない。
そんな時、ポケットに入っていたスマホがブルブル振動を起こした。急いで取り出し、ロック画面を開くと、愛佳から電話が掛かっていた。
「──もしもし? 」
〔あ、柳水くん! 二人が帰って来てないから、心配になって......今どこに居るの?〕
「卯月商店街だけど......それよりも大変なんだ! 三月がいないんだ! 今日、ショットに行く素振りをして、花宮さんの過去を知るためにどこかへ行っちゃったみたいなんだよ!」
〔......マジで? 三月ちゃんが仕事を休むまで花宮の事を......とりあえず事情は分かった。でも、どうすればいいのかな......あ、今コミュバン持ってる?〕
「コミュバン? えっと......あ、たまたまカバンに入ってた!」
〔ホント? 良かった! じゃあ私も今からそっち向かうから! ショットの前で待ってて!〕
という言葉を最後に、愛佳との通話は切れた。探してくれる人が一人でも増えたら百人力だ。
──でも、何故コミュバンを持ってるか確認されたのだろうか? 一体どこに関連性が......?
※
およそ十分後、近くのスーパーで買った紙パックのミルクコーヒーを飲みながら待っていると、左から制服姿の愛佳が必死に走ってきた。
「お待たせー! 待たせてごめん!」
「大丈夫、それ程待ってないから。それで、コミュバンの事なんだけど、これが何に役立つんだ?」
「忘れたの? こ・れ」
愛佳は左手に持っていたスマホを、ヒラヒラと俺の方に向けてきた。画面を見ると、【発明品解析アプリ 】というアプリが表示されていた。
「これで、何かコミュバンに隠し機能が探せるかも知れないと思ってね。じゃあ早速、私のスマホの裏にコミュバンをかざして!」
言われた通りにコミュバンをかざすと、スマホの画面には、コミュバンの解析図が表示されていた。
「えーっと......あー駄目だぁ。まだ完璧に解析出来てないや。このコミュバンの内部のセキュリティ、すっごく硬く設定されているからねぇ......」
「じゃあ、コミュバンには何も手掛かりは見つからなかったって事か?」
「か、可能性がある事からやった方がいいでしょ!? 早とちりしないで!」
「ご、ごめん......あれ、愛佳、ヘアピン付けてるの珍しいな」
「え、これ? ......気づいてくれてありがと……」
学校では付けなかったから、何だか新鮮な感じがする。カバンに入れてあるのなら、学校でも付ければいいのに......ん? ヘアピン......?
「──そうだ! もしかしたら、三月も今日GPSヘアピンを持ってるかもしれない!」
「それだ! よし、今から追跡アプリを起動するね!」
GPSヘアピン......それはその名の通り、GPS機能が搭載されているヘアピンである。
春平町へ行った際、愛佳から三本ほど貰ったのである。その後三月に二本あげたのだが、その時の三月の冷たい目線が今でも忘れられない。
「柳水くん! 三月ちゃんの居場所がわかったよ!立間市の住宅街にいるみたいだけど......」
「立間市......何故そこに?」
「考えるのは後! バスが無くなる前に早く停留所行くよ!」
「あ、待てよ!」
停留所へ急いで走る愛佳の背中を、俺は追い掛けた。さっき走ってきたばかりなのに、疲れてないのが凄いよなぁ......。
※
バスに揺れて20分後、俺らは立間駅で降り、スマホが示す位置へと向かっていた。
「立間市かぁ......柳水くんはよく来るの?」
「ゲームソフトとか買いに行く時くらいしか来ないかな......愛佳、さっき乗ったバスにって最終バスだよな?」
「うん、そうだよ。帰りは歩きかタクシーになっちゃうねぇ......最悪、蓮くんに頼もうか」
何故ここで蓮くん? 愛佳は蓮くんを財布扱いしてるのか?
......そう言えば、あまり愛佳と蓮くんの話をした事ないよなぁ。この際、色々と話してみようかな。
「愛佳と蓮くんってさ、結構仲がいいよね。何か共通する趣味とかあるの?」
「......えーっと、格ゲ......特にないよ? なんか、普通に仲良くなった感じかな?」
「へぇ......そうだ、今日蓮くん、氷蘭々ちゃんと一緒にいたじゃん? それはどうなうぐっ!?」
「柳水くん? 氷蘭々の話はしちゃ駄目だよ? あんなロクでもない女、相手にしないでね?」
愛佳は俺の口を手で塞ぎ、話せなくしてきた。NGワード:氷蘭々ちゃんを俺の辞書に書き込んでおこう。
「ほら、着いたよ」
愛佳が指さした場所は、何処にでもありそうな住宅だった。表札には、「清永堂」と、聞いた事がない名字が書かれていた。ここに、三月がいるのか......。
「んじゃ、柳水くんチャイム押して?」
「なんで? こういう時は愛佳がやればよくない?」
「逆になんで? 私だった女子なんだから躊躇う所はあるよ? 男として恥ずかしくないの?」
「......誰? うちの前で騒いでるのは?」
玄関先のドアから顔を覗きこませてきたのは、20歳は過ぎているだろう女性だった。
「あー......もしかして君達、三月ちゃん迎えにきたの? ウチに居るからさ、とりあえず上がって」
意外にも、簡単に俺達を上がらせてくれた清永堂さん。この人、何も怪しいとか感じないのかな?
※
階段を上がり、右に曲がってすぐの部屋が、清永堂さんの部屋らしい。案内されて中に入ると、布団で身を隠している何者かが居た。
「ほら三月ちゃん、お迎え来たよ」
「......今更、咲斗くんと顔を合わせられません。朝、嘘をついてしまった私に、迎えに来てもらう権利なんてありません」
「三月......」
どうやら、心が沈んでいるようだ。今の三月に何か慰めの言葉を話そうとも、全部受け入れてくれないだろう。
「みーつーきーちゃん!」
「うわっ! あ、愛佳さん! 抱き着かないでください!」
「でも、こうしてると、何だか安心してくるでしょ?」
「た、確かにそうですけど......」
なるほど、言葉で伝えるのが駄目なら、体で伝えればいいという事だな。女子にしかできないそのやり方を、愛佳はやってくれたというのか。
「......二人は怒ってないですか?」
「ううん、全然怒ってないよ。三月ちゃんが見つかって安心したよ!」
「そ、そうですか? でも、何で私がここに居るってって分かったんですか?」
あ、しまった。三月にはGPSヘアピンの事を教えてなかったんだ。やっべ......。
「とにかく三人とも、香織の事を聞きに来たんでしょ? ならさ、近くのレストランに行って話してあげるよ」
「か、香織? 誰ですかその人?」
「誰って、そりゃあ花宮香織の事だよ。......あー、もしかして二人は知らなかった感じ? まあそれもそうか......その話も、後で話してあげるよ」
俺と愛佳は、花宮さんの過去を知る前から既にもう驚いていた。花宮さんと仲良くなって約3か月が経とうとしてるのに、下の名前は知らなかったのである。
”花宮さん”というので定着してるから、下の名前に触れる機会も無かったのだ。まさか、こんな所でわかるとは......。
「あ、まだ私の自己紹介してなかったね。私、桜堂子。ほぼ無職に近い23歳。香織の同級生だよ。さ、店が混まないうちに早く行こうか」
と言って、桜堂子さんは一番に部屋から出て行った。薄々気付いてはいたが、この人がよく三月の話に出てくる人なのか。
そんな桜堂子さんに続き、俺らも部屋から出て行った。俺がドアを閉めるときに、何故か魔法少女のステッキが目線に入った。......まさか、ね。
投稿遅れてすみませんでした!!!!!!!!!




