【エピローグ】第三十九話 楽しかった祝日の最後に
BSKの勝負の結果は、引き分けだった。レイレンは暫くの間相当修行したようで、昔にくらべて凄く成長していた。
「はぁ......はぁ...... ゲームでこんなに息が切れるなんてな……」
「ホントだよ......強くなったんだね......レイレン......」
まだ早朝だと言うのに、もう服は汗で濡れてしまった。五月とは言え、暑いのは暑いもんだね。
「な、なぁ、シャワー借りてもいいか?」
「うんいいよー。逃げないように脱水所に居るね。あ、それとも一緒に入る?」
「馬鹿、スペースが狭くなるだろうが。じゃあお借りするぞ......」
あれ、私と一緒に入りたくない理由は "狭くなるから" なの? もしうちの風呂場が銭湯くらいの広さなら、私と入っていいって事なのかな?
そんなちょっとした疑問を抱きながら、レイレンの後を着いて行ったのであった。あ、別に裸見たい訳じゃないけどさ、ちょ、ホントこれは違うの!
「......おい、服脱ぐ時くらい外に出ろよ」
「やーだね。少しの隙で逃げられたら困るもーん。私別にレイレンのち〇〇んとか興味ないもーん」
「興味ないもーんじゃねぇよ! お前女としてどうなんだよ!? あと平然とち〇〇んなんて言うな! ホント絶対に見るなよ!」
......と念押ししながらも、レイレンはあっさりとパンツを脱いで籠に入れ、風呂場へと入っていった。
そして私はその籠に入った洗濯物を一つ一つ確認していった。本当に何も持ち歩いてないか確認する為だからね! そういう趣味じゃないから!
確認が終わった。危険な物は本当に何も入ってなかった。言った事は必ず守る、流石レイレンだね。
そんな私は風呂場のドアに肩を掛け、レイレンが風呂場から出てくるのを待った。パラパラと落ちていくシャワーの音が私の耳を擽る。
「......ねぇレイレン? この前の傷まだ残ってる?」
「その事か。もう治った」
「そっか......ごめんね、私あの時焦ってたみたいなんだ。理由は言わないけど......」
「はあ? 理由言わなきゃ許してやらねぇからな?」
だって言いたくないんだもん。色々対策を練ったけど全部上手く行かないから、とうとう体を傷付けるという真似までしちゃったから。
もっと一緒にいたい。この関係をもっと続けていたい。だからこそ、今出来る最善の事をするのだから......ああ! こんな事本人に言えるわけがないよ!
「......なあサキアイ?」
「ふぇ!? な、何?」
「何だよ情けない声出して......久々に遊べて楽・し・か・っ・た・ぞ・」
それは、最後にその言葉を聞いたのが分からないほどの、レイレンの優しい言葉だった。もう聞けないと思っていた、レイレンからの言葉だった。
「──何ヒックヒック言ってんだよ、泣くほどの事じゃねえだろ......」
「......泣いてないもん。ヒック......嬉しくなんかないもん......」
「この嘘つきめ......風呂、思ったより狭くなかったな」
もう......今更誘ったって遅いよ......バカレイレンめ......。
※
「はぁ〜、朝シャワー気持ち良かったぁ......あれ、......ふふっ、レイレンってば二度寝しちゃってる」
今度は間違いなく、レイレンその物が寝ていた。しかも私のベットで。まあレイレンならいいんだけど。
私はレイレンの顔の横に座って、じっとその寝顔を見つめた。
私が貸してあげた男女共通用のTシャツに、レイレンが着てもおかしくない短パンを身につけ、小学生のように可愛く寝ている。
よく見ると童顔で、ほっぺたはぷにぷにで、お腹は出しちゃって、ネマチみたいだ。
......さてと、そろそろ私も満足したから、レイレン帰してあげよう。私の為に時間を使ってくれて、ありがとね......なんて、本人には聞こえない程度の声で囁いた。
「......ボスの寝顔、可愛いものだと思いませんか?」
「まあねー。こんな子がボスなんて信じられない......里島さん!? いつからここにいたの!?」
「今来たばかりですが......ボスが迎えに来いと連絡を頂いたので、お迎えに参りました。あ、お母様からも了承済みですので、不法侵入と訴えられても論破できますから」
「えぇ......まあ良いよ、私はもう満足出来たからお持ち帰りください」
そう了承すると、里島さんはレイレンを起こさないように、そっと抱っこした。私が見ていたなんて言った日には、またDiversity gunで撃ってくるだろうね。
「里島さん、こういうの慣れてるの?」
「ええ。だって、元・家・政・婦・ですから。あ、ボスには内緒でお願いします」
へぇ......レイレンに内緒事をするなんて、里島さんなかなかやるなぁ......。
そう感心しながら、私も里島さんが乗ってきた車に向かって行った。
※
車に向かうと、何だか人影が見えた。窓に近づいてよく見ると、医療担当の田畑さんがパソコンをいじっていた。
「あら愛佳ちゃん、久しぶりね。元気してた?」
「......何で貴方までいるんですか。アジトにいるんじゃ......」
「GW中もずっと毎日アジトにいたら、吸血鬼体になっちゃうわよ。だから、昨日は里島先輩のお家に泊まらせてもらったの」
あ、そう言えばこの二人って仲良かったんだったよね。レイレンからも聞いてた。
「さて、あまり家の前で車止めてたら迷惑になりますし、そろそろ離れるとしましょう。......次に会うときは、こんな優しく接しないという事、忘れないでくださいね。」
「......ねえ里島さん、おかしな事聞いてもいい?」
「ええ、構いませんが?」
「もしメカ二ズミカルが解散しちゃったら、里島さんは何するの?」
「......私にそんな未来のプランはありません。ボスが私らを見捨てるような事はないでしょうし、もしその様なことがあっても、ボスが何とかしてくれるはずです」
......信頼されてるんだね、レイレンって。人間としては最高なのに、なんでこんな道に進んじゃったんだろう。
「今度こそお別れです。それでは、失礼させていただきます」
「じゃあ、また会いましょうね~」
里島さんは車のドアを閉め、北の方角へと車を走らせた。それはまるで、楽しい休日が去ってしまうようだった。
※
ベットの上で胡座をかきながら考えた。私がここでレイレンの活動を止めたら、レイレンの下で働いている人の行き先はどうなってしまうのか。
あんな下で働いている方が間違っている、とは分かっている。でも、その先の事も考えなきゃ、幸せなんか掴めない。
……高校生の私には難しい話なのかな。まだ働いている身でもないのに、こんな偉い事言っちゃってさ。何様って感じだよね。
「……GW最終日だけど、また、アジトに行くとしますか」
部屋には私しかいないけど、そう一人で呟いた。
今日は音楽を聴きながらでも、と思い、最近買ったワイヤレスイヤホンを耳に入れ、慣れないJPOPを流しながら、私は今日も合言葉を言う。
「リンク・オープン……」
私の今の気持ちを、月魄の皆に癒してもらおう。そう思いながら、私は光に包まれた。
きっとまた、あんな風に遊べる日が戻ってくる。そう感じた。
という訳で、2章はここで完結です。いかがだったでしょうか?
果たして愛佳ちゃんは、レイレンを元に戻せるのか? そして、みんなを幸せに出来る方法を見つけられるのか? 今後の彼女の活躍を見届けてください。
さて、次は3章に突入する訳ですが、メインとなる人物は、フラワーパレスの大家、花宮さんです。
色々と話したいですが、それは読んでからのお楽しみ、という事にさせて下さい。
そろそろ締めに入りましょう。1章から見てくださった人も、2章からの人も、今回の話からの人も、皆さま読んで下さりありがとうございました!これからも、宜しくお願いします!




