表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/54

第三十八話 中学校での初めての友達

 結局私の家に泊まりに来たレイレンは、流石にこの歳で一緒の部屋で寝るなんて私でもしたくないから、客間で寝かせる事にした。


 そして一晩経ち、私はレイレンを起こしに行った。襖を開けると、布団にうずくまって寝ている姿があった。




「レーイレンっ! 起きた? ......もう全く、こいつ可愛くないねぇ」




 妙な雰囲気を出しているな、という私の感は当たった。布団の中にいるのはダミー人形。本物は......私の後ろだ。




「可愛くなくて構わねぇよ。寝顔なんか見せてたまるか......やっぱり護身用術教室の娘だけあって、そう見分ける力は衰えてないようだな」


「当たり前だよ。にしても、タンスの中でワクワクしているレイレンを想像するだけで笑っちゃうね。ガッカリした?」


「んなわけ......」




 恥ずかしそうな顔をしているレイレンは、ホクロがある訳じゃないのに頬を爪で撫でた。オリジナルはやっぱり可愛いもんだね。




「さて、そろそろ失礼させて貰おうか......」


「待ってよレイレン、まだお礼がないじゃない。せめて礼を返してからここを去るべきだと思わないの? 部下に厳しくて、自分には甘いんだ?」


「わかったわかった! ......いくら欲しいんだ?」



 レイレンは財布を取り出そうとした。......私はそれを阻止した。



「いらない。レイレンから貰いたいのはお金なんかじゃないから......私の部屋に来てくれない?」



「何だよ、変なやつ......」





 面倒な顔をしているレイレンだけど、お金よりももっと欲しい物があったから、私はレイレンを部屋まで案内した。



 ここの階段を最後にレイレンに上がらせるのも、もう随分と前だよね。前は毎日のようにレイレンは来ていたのに......ううん! レイレンがここにいるだけでも嬉しいのに、こんな事思っちゃダメだよね。





「お邪魔します......変わってねぇ」


「な、なにさ、たった数年なんだから変わるわけないじゃん」


「そりゃそうだな......なあ、まさかとは思うが、お礼ってのは【バトルステージキング】をやろうってことじゃないだろうな?」


「そのまさかだよ。なあに、これだけは私に勝てないって弱気になってんの?」


「......ははん、俺を煽って来るとはな。いいだろう、受けて立つ。現実況ゲーマーを舐めんなよ?」





 いつも通り、口だけは強気になっちゃって。手先が震えているじゃん。まあ、私は勝っても負けてもどっちでもいいんだけど。......ただこれをまた、レイレンとやりたいって思ったんだ。







 夏音市のゲーセンに行って、咲斗くんと一緒にこのゲームをやって思い出したんだ。中学に入って、仲のいい友達は他校に行っちゃって、私はボッチになってしまったことをね。


 おしゃれもあまり詳しくなかったし、話題の俳優とかも興味がなかった。私が好きなのはゲーム、格闘術の二つだけ。ちなみに今だってそうだけど。




 そんな私には、気になっている人がいた。そいつは私と同じように、休み時間はうつ伏せになって寝たふりをして時間を潰していた。

 

趣味は合わなくても、彼となら仲良く出来そうだな、なんて思ったりもした。だけど、私にはそんな自信はなかった。


「仲良くなりたい!」という気持ちよりも、「もしも変な風に思われたらどうしよう......」という気持ちの方が勝っちゃって、結局言わずじまいのまま一日が終わっていく......これが何日か続いた。




学校で上手くいかなかった日、私は久しぶりにゲームセンターに行くことにした。家にも【バトルステージキング】の筐体はあるのだが、知らない人と対戦するのも有りかなと思ったからだ。


店内に入ってすぐ右に曲がり、そして左に曲がった所にバトルステージキングはある。(以下BSTと称するね)


 そして筐体まで辿り着くと、私は目を疑った。幽霊の仮面を付けた青年が、BSTを遊んでいたのだ。......何だコイツ、って流石に私でも感じた。


 でも裏を返せば、こんな変わった覆面レスラー的な奴と戦えるなんて、とっても面白そう! と思った。気づいたら私は100円を投入して、彼に対戦を申し込んでいた。




 開始してから20秒、青年は私に舐めプしてるのがわかった。......確かにこんな過疎ゲーなんてやってるの私らだけだろうけど。だからこそ彼には、現実ってやつを一度見せてやろうと思い、ガチプで戦ってしまった。


 当然、私の勝ちだった。彼は初心者だったのかな? 一応名前だけでも見て帰ろう......そう思って画面を見ると、『REIREN』という名前が表示されていた。レイレン......もしかして、あいつかな?




 そんな探求心から、後日店長にこんな提案をすることにした。確か、『古参勢・新規勢大歓迎! 格ゲーNo.1 決定戦』って名前だったっけな? こんな大会を計画をすれば、幽霊仮面の彼は必ず来るだろうと考えた。


 そして当日、16人のエントリー者が現れた。その中に、私の考えどおり、彼も大会にエントリーしていた。


 そして登り詰めた決勝戦、相手はもちろん、幽霊仮面の彼だった。対戦前、私は勇気を振り絞って、彼にこんな事を言った。




「ねぇ、私その仮面の下を見てみたいな。そうだ! 私が勝ったら、そのお面外してよ!」




 彼は暫く硬直していた。今考えて見たら、確かにおかしい事言ってた気がする。覆面レスラーだったら、もう引退宣言をしろみたいな事言ってるもんだからさ。


 でも彼はOKを出してくれた。でも、条件が与えられた。彼が勝ったら、何か隠している事でも話して貰うというものだった。


 私の中ではもう、彼に言う事は決まっていた。()()()()()()()()()()() って事だ。でも、ここでわざと負けるだなんて彼にとっても失礼だろう、そう考えた私は、今回もガチプで挑むことにした。




 彼のプレイスキルは遥かに上がっていた。私のプレイスタイルを見透かされていて、次々とコンボを決められた。やばい、マジで負けそう......そう思った私は、昔よく使っていた秘伝の裏ワザをここで使うことにした。


 家にある筐体を買い取った時に、一緒に説明書が付いてきた。そこには業務専用ワザが書いてあって、それを知れるのは数十人ていどしかいなかった。それがこの前咲斗くんに使った、『上上右下右上上下左回転上下左回転』のコマンドだ。


 そんなのを一般プレイヤーの彼が知るわけもなく、彼はまたしても私に負けてしまった。ズルをしてしまった罪悪感もあるが、知識量の勝利ってことにしておいた。




 そんな事よりも私は早く、彼の仮面に隠された素顔を見たかったのだ。そんな勢いが余って、手は勝手に仮面に持って行っていて、仮面を外した。その先にあったのは......私と同じボッチの、幻霊 蓮の姿だった。


 私はそこで、ホッと胸を撫で下ろした。安心したんだ、蓮くんであったこと。




「......サキアイ、よかったらまた対戦してくれないか?」


「うん! いつだって相手になってあげる!!」




 その時から私たちは、仲良くなっていった。性別なんて関係ないさ。中学で初めての()()が出来たのだから。






「......おいどうした。基盤の調子でもおかしいのか?」


「ううん、昔の事を思い出してただけ。さて、起動完了!」




 今ではこんな口調で、あの日のオドオドさなんて見られない。やっぱ、中学三年の夏辺りからこんなトゲトゲしちゃってさ。


でも今はお互い敵同士なのに、こんな風に遊んでいるなんて、なんだか不思議。学校では会えるようになったけど、今この瞬間を味わえるのは当分来ないだろう。



 だからこそ、私はこの貴重な休みに、心に残っていたモヤモヤした気持ちを晴らすのだ。レイレンと何かをするだけでいい。レイレンの傍に少しでもいたい。......こんな気持ち、自分の口から言える訳がないから、このBSKを通して少しでも私の今の思い、伝えられたらな......なんてね。





「ほら、早くキャラ選べよ。......何俺の服掴んでるんだよ」


「えっ!? はわわわっ!! ごめんごめん!! さ、さあやろっかぁ......」


 


 顔から煙が出そうな勢いだった。私もレイレンの事言えないね。考えてた事をすぐ行動に移しちゃってさ。こんなの敵にやる行為じゃないからねぇ......。


 そんな行動を紛らわす為に、いつものように上からの態度で、こう言った。





「さあ、"あの日のリベンジマッチ"を設けようじゃない!! かかっておいで、レイレン!!」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ