表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/54

第三十一話 VS 絵亜

約五十メートル離れた先の路地裏で、息を切らしながらも、俺は亮太くんと連絡を取っていた。


〔...... 状況はわかった。至急そちらに向かう。俺らがそっちに向かうまでに咲斗は、今自分が出来る最善を尽くしてくれ〕

「了解、ではお願いするよ。じゃあ、切るね」


と言って、俺は通話終了のボタンを押した。今俺が出来る最善の事...... 果たしてそれは何なのか? 一応ゴーグル、手袋を身に付け、イマグロガンをズボンのポケットに入れてはいるが、あんな激しい戦闘で、俺は絵亜にイマグロガンの弾を命中することが出来るのだろうか? もし一回も当たらなかったら...... いや、一か八かやってみる価値はあるだろう。


とりあえず、ウォーミングアップということで、試しにそこに落ちている空き缶に向けて、一発打ってみた。しかし...... いや、当然のごとく、何も反応がなかった。


「...... だよなぁ。なあ、そこにいる猫ちゃん...... ん? どうしたんだ?」


不思議な事に、近くでくつろいでいた野良猫は急に立ち上がり、缶に向かって威嚇をし始めた。まるで、幻覚を見ているよう...... いや、これは実際に見ているのか? まさかこれ、的の対象は人に限らず、物体でも効果が現れるという事なのか!? ...... よし! これなら行ける!!




「はぁ...... はぁ...... そろそろ限界かも...... 」

「あら、私はまだまだこんな物じゃないわよ? この二日間での疲れが出始めてるのかしらね。それにしても、咲斗くんは引き帰ってって来ないわね。サキアイがボスを見捨てたように、あんたも捨てられたんじゃない?」

「そ...... そんな訳...... 」

「ふん、今更あんな男が帰ってくるなんてあり得ないわ。誰にも助けられず、無様にやられるのがお似合いよ! アハハハハハ!!」

「...... 絵亜あぁ!! いい加減にしろおぉぉ!!!」


俺は愛佳と共に戦う覚悟を決め、再び戦場に戻ってきた。愛佳は足に切り傷が入っていて、大分苦戦している様子だった。


「...... や、柳水くん。来てくれたんだ......!」

「あらサキアイ、見捨てられた訳じゃなくてよかったじゃない。で、咲斗、あんたは私が想像していたよりは度胸があるようね。褒めてあげるわ」

「誉め言葉なんかいらねぇ! 絵亜! お前は愛佳が今、どんな気持ちでいるか分からないと思うが、簡単に人を見捨てるなんて言うんじゃねぇ! 本当に見捨てる奴は、俺や愛佳なんかじゃなくて、そういう発想しか出来ないお前だよ!!」


一瞬、場の空気はシーン...... と静まり返った。


「柳水くん…… 」

「な、何よ! 第三者の癖に偉そうに!!」

「偉そうが何だが構わない! とにかく、今のその発言は取り消せよ! いつかはその発言が絶対に自分に帰ってくるぞ! ......もしかしたら、そこの部下だって、嫌々あんたについてきてるんじゃないか?」

「う、うるさいわよ!! 私の文句を言うくらいなら、あんたも私のモーニングスターを食らって大人しくしてなさい!!」


するとまたしても絵亜は、モーニングスターを俺に向かって降り掛かってきた。だが、一度経験した事を学んで、すぐ様避けることが出来た。


「そんな偉い口聞けるようになりたいんだったら、俺を倒してからにするんだな。ほら、着いてこいよ」

「ぐぬぬぬ...... 部下共!! 今すぐ咲斗を追いかけなさい!!」

「「「はいっ!!」」」


 部下+絵亜がまんまと俺の挑発に乗り、ダッシュで俺に近づいてきた。所詮は子供だ。俺はすぐに後ろを振り返り、北の方向へ逃げ込むと、とある二人の姿が見えてきた。


「咲ちゃん、七咲さん! 遅くになってすまない! 」

「咲斗くん! 愛佳さん! 大丈夫ですか!?」

「は、花宮さん!! 三月!!」


辿り着いたのは、花宮さんと三月だったようだ。花宮さんは、今愛佳が疲れているから、接近戦ではとても最適なメンバーだ。三月は...... 目撃者という立派な役割をしてくれる重要人だ。


「部下共さんよぉ、咲ちゃんを追いかけたくば、私という壁を越えてからにするんだな! 七咲さんは休んで、咲ちゃんは早く逃げろ! 三月は私のスマホで映像を撮ってくれ! 他の人から見たら、アクション映画の撮影って誤魔化せるかもしれねぇだろ?」

「わ、わかりました!!...... 咲斗くん、絶対に捕まっちゃ駄目ですよ!!」

「そんな事、有り得るもんか!! 逃げ切って見せるさ!!」


花宮さんの助けを借りて、俺はさっきまでいた路地裏に逃げ込んだ。俺の後ろでは、モーニングスターが地面にめり込んでは引っこ抜く、の繰り返しをしていた絵亜が襲いかかってきた。


「──ちっ、仲間が応戦に来たか。花宮ってやつは初めてね。部下共に実力を調査させてもらうことにしましょう。...... あんた! ちょこまかちょこまか面倒臭い道を通って!! いい加減にしなさいよ!!」

「それが逃げるって動作だろうが! お前こそいい加減に謝れよ!!」

「はあ? 私が謝るなんて世界が滅亡しても絶対しないわよ。 もちろんあんたにも、サキアイにもね」

「...... そうか、器が小さい人間だなお前は。...... でさ、俺らを追いかけている理由って何なんだよ?」


 俺が急に問いかけると、ピタリと立ち止まり、顔を地面の方へ向けた。


「...... チャンスだったのよ、ボスに認められる。高牧幹部のせいで、私らのグループは周りからの評判が悪かったのよ。別グループと行動する時とかに、私たちは見捨てて、他のグループのお手柄になっちゃう。......全部高牧のせいよ! あいつの下で活動していたから、私たちはこんなダメダメグループになっちゃったのよ!」


 絵亜の顔は、眉が下がり、しわを真ん中に寄せ、今にも泣きそうだった。


「...... そして、高牧がいなくなった今、私がこのグループを引きずって、他のグループに認めてもらおうとしたのよ。そして、ボスにも認めてもらうように、まずはサキアイを潰すのが最善だと思って......」

「...... 愛佳を潰すだと? お前、本当にそれで認められると思ってんのか?」

「それが私のやり方よ。いい加減文句を言うのはやめてもらおうかし」

「文句で何が悪いんだよ! 俺はお前のやり方に不満があるから、文句を言ってやってんじゃねえかよ!!」

「......っ!?」

「人を潰してボスに認めてもらう? そんなやり方、誰も喜ぶわけがないだろ! 人を傷つける行為は、例え表で喜んでいる姿を見せていたとしても、心の何処かで絶対に嫌な気持ちがあるはずだ! あんたのボスだって、そう思っているんじゃないか?」

「...... 何よ...... あんたにボスの何が分かるって言うのよ!!! もうあんた、人間として許さない!! これでも食らえぇぇ!!」


絵亜は俺の言葉に反感を持ったのか、鉄球を俺の頭に向けて投げかかってきた。しかし突然、ゴゴゴゴゴゴゴ、という音がした。そして、岩が地面から出てきて、絵亜のモーニングスターを防ぎ、行く手を阻んだ。


「どうやら、昨日亮太くんが仕掛けたロックシードまでは把握出来てなかったようだな。そして、あんたはその岩に敵って判断されたようだ」

「......昨日夏音市を偵察していた部下達に聞かされたのがこの岩って訳なの!? ......まさか! あんた、これを考えて私をここまで誘導したの!?」

「ああ、そういう訳だ。あんたらと同じグループ、いや、組織はもうここは通ることは出来ない」

「...... ったく! ひとまずあんたは逃してあげるわよ!! ほら、さっさと逃げなさいよ!!」

「何惚けてるんだ? 俺はあんたから逃げる為じゃなくて、あんたの逃げ道を失くすためにここに来たんだぜ? 真実が知りたいのなら、後ろを向いてみな」

「う、後ろ? 何があるの...... い、岩がもう一つある...... ですって!?」


そう。もう一つの岩を生み出したのは、正真正銘この岩を作れる、白月亮太くんだ。俺のバックには、この前愛佳から貰った「GPS機能付きヘアピン」が入れたままになっていた為、俺の居場所が分かって、状況を判断して岩を生み出してくれた。


「よくやったぞ、咲斗。今、お前が思っている気持ち、そして思いを全部、絵亜にぶつけてくれ」

「──ありがとう。...... 岩越しでよく聞こえないと思うが、聞き耳をたててよく聞け。誠に残念だと思うが、お前はもう何処にも逃げられない。俺の仲間を傷つけて、そのまま逃げさせるなんて好都合な事をさせるには行くかよ。愛佳に精神的に攻撃してきた分、俺はあんたに同じ痛みを味合わせてやる。覚悟しな」


俺は銃の準備をして、いつでも攻撃出来る体勢をとった。......しかし不気味な事に、岩越しから笑い声が聞こえてくる。


「...... フフフ...... ハハハハハ...... アハハハハ!!! 本当に馬鹿ね貴方達は!! 上を見て見なさいよ!! 逃げ道なんてまだ空があるじゃないの!! モーニングスターで壁に穴を空けて登って逃げる事くらい楽勝に決まってるじゃない!! 」


どうやら絵亜は、勝ちを確信したように、俺を嘲笑ってきたつもりらしい。そういう所が、高牧にそっくりなんだよ。やっぱ、似るもんなんだな。


「さあて、さっさと実行して、こんな馬鹿らとはおさらばしちゃおうかしら? 」

「...... 爪が甘い。空を見上げてみろ」

「何よ、私が二度もその手に引っかかると...... あら? 壁が崩れ落ちてきゃあああああ!!」


──成功したようだ。もうみんなは分かったと思うが、俺は壁に弾を打って、絵亜に壁が崩れ落ちてくるという幻覚を見せたのだ。そして、絵亜の声は聞こえなくなってしまった。


「...... ふぅ、一段落着いたようだな。今この岩を解除してやるからさ...... よし解除! って、こいつ気絶してやがる......」


絵亜はみっともない姿で、泡を吹きながら目を白くさせていた。女がしていいのか分からないポーズだ


「とにかく、こいつが目覚めるまでは、ここで待機してやろう。それにしても咲斗、よくやってくれた! この戦いを早く皆にも聞いて貰いたいくらいだ!」

「...... え? 聞いて貰いたいって?」


疑問を投げかけると、亮太くんは服の内ポケットからボイスレコーダーを取り出し、ヒラヒラと...... あああああ!!


「恨むなよ咲斗、これは敵が情報を吐かした時に、音声を記録する為に用意してるんだからな? 音声が録れたのは偶然だからな?」

「ちょ、消して! 結構自分でも恥ずかしかったんだからお願いだから消してえぇぇぇ!!」


例えそういう理由であったって、消したいものは消したいのである。本当に穴があったら入りたい.....。


「さて、モーニングスターも回収するか」


亮太くんがモーニングスターに手を触れた次の瞬間だった。いきなり絵亜の手が動き、モーニングスターを持って立ち上がった。


「...... まだ私がやられたと思ったわけ? 」

「は!? お前、まだ倒れないのかよ!?」


油断した矢先、なんと絵亜は自力で目覚め、また起き上がってきた。


「咲斗...... あんたの使ってるイマグロガンは、本当に強いわ...... もしかしたら、メカニズミカルも潰せるかもしれない。でも、そうやって潰されない為に、私らはあんたより強くなる。覚悟してなさいよね。そろそろ、ワープメーターな溜まった頃かしら。それじゃあ、次は倒される準備をしてくる事ね......」

「おい待て!」


そう捨て台詞を残して、絵亜は突如姿を消した。思い返してみれば、俺も少し酷いことを言ってしまった。でもあいつは、高牧がいい言葉を使ってなかったから、そんな口になってしまったのだろう。いつか、和解出来る日が来たららいいが......それはあと幾つ経ったらできるだろうか。



路地裏から出て、さっき居た場所に戻ると、自販機の近くのベンチで膝を乗せている愛佳と、消毒液を持った花宮さんの姿と、それを心配そうに眺めている三月の姿が見えた。


「イタタタタ......あっ柳水くん! 絵亜は!?」

「追い詰めたんだが...... 逃げられた、ごめん...... ていうかお前! 足に擦り傷負ってるじゃん!! 大丈夫なのか!?」

「大丈夫大丈夫。こんなの蜂に刺されるよりはよっぽどいいよ...... ひっ!」


愛佳は花宮さんが付けた消毒液に反応して、苦しい顔をした。


「動くと余計痛くなるぞ。痛いと思うが、少しだけ我慢してくれ。...... ったく、あの絵亜って奴は、女子の大切な足を遠慮なく傷つける事が出来るのかよ...... ほら、絆創膏貼って終わりだ。学校では長い靴下履いて、その傷を隠せ」

「あ、ありがとうございます!! 私の不注意でこんな事になっちゃって......」

「...... あんな激しい戦いで、擦り傷一つで済む方がよっぽど凄いに決まってますよ」

「そうだ。私が残りの部下を倒せたのだって、七咲さんが体力を削ってくれたからだろ? 自分のやった事に誇りを持ったらどうだ?」

「...... そうだね! みんな、ありがとう!!」


愛佳はもう元気だ。きっと、あの夢の事も今は思い出さないだろう。だって今は、こんなに寄り添ってくれる仲間がいるのだから。


 そして、いつか絵亜には、世界が滅亡する前にちゃんと、愛佳に謝ってもらおう...... と決心しながら、沈む夕日を見つめていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ