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第二十七話 花宮さん、涼太くんの技

「…… 柳水くん…… ねぇ柳水くん! 起きてよ!!」

「うう…… ここは……?」


意識が戻ると、大きな壁が目の前に立ちはだかっていた。また夏音市へ無事戻ってこれたようだ。


「咲ちゃん、またビリじゃねぇか。次こそ死んだんじゃねぇかと思った。ホント、しょうがない奴だな」

「それは仕方ないでしょ!! てか簡単に諦めないで下さい!」

「まあまあ、2人も落ち着いてください。また再開しましょうよ」

「でも三月ちゃん、他に手がかりはまだあるの?」

「…… ないです」


愛佳の質問が、俺らは気がづいてはいけないことに気がついてしまった事を悟った。見つけたのはアジトだけで、手がかりはもうなくなって、俺らはもう手も足も出ない状況になってしまった。


「と、とりあえず、こんな所で話してないで、大通りに出てまた考え直そうか」

「そうですね。じゃあ行きましょうか」


亮太くんの提案で、再び大通りに出ていった。




「はい、飲み物買ってきまし…… 買ってきたよ…… 」

「お、ありがとう。まだ敬語が抜けない感じか? まあ無理もないか……」


女子達(一人を除く)は、大通りにあった服屋に向かって行った。そんな俺らは、店の前にあったベンチで休むことにした。


「…… ねぇ、先輩達はどんな感じの人だったの?」

「そうだな…… 俺が加入した時点では、5人先輩がいたんだが、特に印象に残ってるのは、梨々香先輩かな。コスプレが趣味で、よくイベントに行っていたよ…… よく俺も連れてかれて女装されてた……」


こ、こんなエアリーヘアで男らしい亮太くんが女装だと…… 脳内変換したら案外いけるかもと思ってしまった自分がいた。


「それで、俺が入って三ヶ月後、サキアイが加入した。当時はとてもシャイな奴だったんだ。3日だけな」


はぇ…… あの愛佳がシャイ…… 想像つかない。


「加入理由としては、幼馴染みを何とかしたい、かららしい。ちなみにあんなに短刀の扱いが上手なのは、サキアイの家は護身用術を身につける教室、みたいなのを営んでるらしいからだそうだ」


「へぇ、あいつ一切家庭の事とか話したことないもんな…… あれ、花宮さん、もう店から出てきたの?」


店の出入口から、退屈そうな顔をした花宮さんが出てきた。


「ああ、私は特に欲しいものはなかったからし、当分はこのお気に入りのパーカーで十分だ。二人はまだ色々と見て回るそうだから、先に行っててと伝言を頼まれた」

「そうか、じゃああまり遠くへ行かないようにしよう。…… ん、あれは?」


亮太くんは突然目を細めて、遠くの方を見た。俺も亮太くんと同じように目を向けたが、何か怪しげな人影が二人ほど見えた。


「…… あいつら、メカニズミカルの団員だ。急いで追いかけよう」


俺らは急いで、怪しげな人影へと向かった。


「おいお前ら! ここで何をしてる!」


俺らが二人に追いつくと、二人は驚いた表情を浮かべた。

「リ、リョー! …… と、誰だお前ら?」

「名前など語るまでもない。お前らを捕まえるのが先だ!!」


花宮さんは二人に向かって、追いかける構えをした。


「お、おい! 一旦この人通りから離れようぜ!」

「そ、そうだな!」


作戦を立て、怪しげな二人は路地裏へと逃げていってしまった。


「あ、おい待て! 咲斗、花宮さんはあっちから回って! 俺はそのまま追いかけるから、挟み撃ちで行くぞ!」

「了解!」


亮太くんの作戦に従い、俺らは全速力でお互いの場所へ走り、クレープ屋の角を曲がって、路地裏へ駆け込んだ。息を切らして待ち構えてると、怪しげな二人はこっちへ向かってきた。


「咲斗! 花宮さん! これで挟み撃ち出来たぞ!」

「げっ! くそぉ…… 一本道だから他のところから抜け出すことも出来ない……」

「ど、どうするんだよ兄貴!」

「…… ここで戦わないでどう逃げる方法があるってんだ!!」


一人が叫ぶと、いきなりズボンのポケットから銃らしき物を取り出した。俺も危険を感じて、すぐさま「イマグロガン」を取り出した。


「花宮さん、後ろに下がっ…… !!」

「なぁ咲ちゃん、私は何が得意かもう忘れたのか? 忘れん坊だな」


後ろを見ると、花宮さんの右手には、ヌンチャクが構えていた。その顔つきは、獲物を狙うライオンのようだった。


「ごちゃごちゃするな!」


団員の一人が待ちきれなかったのか、とうとう発砲をしてしまった。…… が、その発砲の音と共に、金属が混じり合うような音が聞こえた。


「狙いが良いのは褒めてやる。だが、そんな弱い弾じゃあ、私のヌンチャクも退屈してしまうだろ? そんなんじゃあ、威張れる資格なんて持っちゃいけねぇな」


何と花宮さんは、ヌンチャクで銃弾を弾き返したようだ。…… すげぇ。映画の撮影現場かここは!?


「…… 仕掛けて来たんだから、仕掛け返されても文句は言えないよなぁ? うおるらぁ!!」

「「うぐっ!!」」


花宮さんのヌンチャクは、鎖の部分が伸びて、ムチで叩くように、二人の頬を攻撃した。


「花宮さんナイスだ! じゃあ次は俺の番だ! こいつを使おうか?」

「!! やめて…… それはやめてくれ!!」

「問答無用だ! ロックシード!!」

「うわぁぁぁ!!!」


亮太くんはフラフープのような輪っかを取り出して、団員2人に向かって投げた。地面に着いた瞬間、その輪っかからとても大きい岩が出てきて、二人の服は岩に刺さって、身動きが取れない様になっていた。


「ロックシードは名前の通り、尖った岩を生み出す種だ。生み出すと同時に、こいつらのグループを対象に、岩を再びここから出現する事が出来る。AIが反応するんだ」


凄い…… 仮に人通りの多い所でやったら大問題だ……。


「うぐ…… 兄貴ぃ」

「…… クソがぁ」

「さてと…… 二人は何しに来たんだ?」

「へっ。教えるかよ。ってお前、何でヌンチャクをこっちに?」

「……テメェらが何かしだすとこっちも困るから、動いたらまたこのヌンチャクで痛めんぞ」


花宮さんは、隅に置かれていた瓶をヌンチャクで叩いて粉々にした。愛佳の時もそうだったけど、女はこうやって脅すのが得意なの?


「…… 高牧幹部のようになってしまったな。しょうがない、話してやる。ボスの命令で、夏音市がどんな所なのか偵察して来いと言われてここに来たんだ。観光もしていいと言われて、俺らも色々と楽しんだんだが、お前らがやって来て、もう無茶苦茶だ…… なんでお前らここに居るんだよ……」

「…… なんか俺らが悪者サイドに立ってるような…… でもでも! お前らは悪の協力者だろ! とにかく、この武器は預からせてもらう!」

「え、待って待ってちょっと返せ!」


団員が嘆くと、花宮さんはまた、道端に落ちていた瓶を叩きつけて、パリン、と大きな音を出した。まるで今後の自分たちの比喩だと考えた団員はビビったのか、もう何も言わなくなった。


「でもよ、こいつらどうするんだ、白月さんよ?」

「呼び捨てていいですよ、花宮さん。こいつらは武器を取ればただの一般人だ。好きにさせてやろうぜ」


あ、それでいいんだ。署に渡すとかしないんだ。


「お前らも、さっさと社会復帰してまともな仕事就けよ。じゃあな」


身動きが取れなくなった二人を置き残して、俺達は路地裏を抜けていった。



服屋に戻ると、愛佳と三月が服屋の袋を持って外に出ていた。


「えー!! 3人だけで戦ってたの!? 私も言えばすぐに駆けつけたのに!」

「そうですよ咲斗くん! なんで私を連れていかなかったんですか!」


いや、愛佳はともかく、三月はあそこにいちゃダメだろ……。


「まあいいだろ。それより二人とも、お気に入りの服は見つかったか?」

「はい! 愛佳さんが選んでくれた超おしゃれコーデでバッチリ! ですがお金が……」

「三月ちゃん、半分は私の奢りだよ! だって私三月ちゃんにこの服着せたかったんだもん!気にしないでよ! 」

「…… ありがとうございます」


三月はニッコリと、いい表情を浮かべた。


「七咲さん、三月の面倒見てくれてありがとな」

「いいんですよ! とっても楽しかったんですから!」

「そうか? ならよかったが」


愛佳が面倒見がいいのは、佐田姉妹の面倒も見てるからじゃないかな。結構そういう所はしっかりしてるし。


「さて、そろそろ日も暮れてきたし、俺はアジトに戻るとするよ。アイツらがお腹空かせて待ってるからな」

「ううん、そんな心配は要らないよリーダー。響也先輩にお願いして、アジトに来てもらうよう連絡しておいたから。私達が帰るまでご飯や掃除全てやってくれるってさ。それに、リーダーの分の部屋もあるから…… と言っても柳水くんと一緒だけど」

「ほ、本当にいいのか? 」

「あったりまえだよ! 月魄のみんなが喜んでくれるならなーんだってするよ?」

「…… ありがとな、サキアイ」


愛佳の言葉を聞いて、悔しいが少し心臓が縮み上がるような感覚がした。恥ずかしい事を平気で言っちゃって…… なんて女だ。


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