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第二十五話 夏音市に来た訳なんですけども

五月三日、待ちに待ったこの日がやって来た。リズムトレジャーの新曲追加日! …… ではなく、夏音市へ出発する日だ。


夏音市は卯月町から大分離れた場所に存在していて、交通手段は新幹線くらいしかないので、今その新幹線に揺れながら、夏音市へと向かっている。


前に行った春平町でも色々収穫はあったけど、今回はその倍の収穫出来たらいいな、と思っている。


「柳水くん、お菓子食べる?」

「おお、サンキュ」


俺は愛佳から貰ったお菓子を口に入れ、また新幹線の窓を見始めた。それにしても、三月と出会って早一ヶ月半、あっという間だったな。時の流れはこの新幹線の速さと同じくらいに感じてしまうのだな…… ポエマーか俺は?


「…… 咲斗くん、何を考えているんですか? ずっと窓しか見てないじゃないですか」

「三月の記憶が少しでも戻ればいいなと思っているんだよ。俺はそれが達成出来たら最高だよ」

「何言ってんだよ咲ちゃん、私だってそう思ってんだぞ。一人でカッコつけるなよ」

「…… いいじゃないですか別に! 男は僕しかいないんですよ!?」

「「だから?」」

「え……」


愛佳と花宮さんにすっげー謎な発言しちゃった。またしても変な空気を作ってしまった。まだコミュ障は完全に治ってる訳では無いようだ。


「ほら、もう少しで着きますよ。皆さん支度してください」

「「「…… はい」」」


もしかしたら、このグループで一番真面目なのは三月かもしれない……。


新幹線を降りて大体五分後、改札を降りるとそこには卯月町とは全く違う景色が広がっていた。


「ふぅ〜! 着いた夏音市!」

「わああああ! 都会です! 都会ですよ咲斗くん! ほら、いっぱい店があります!」

「う、うん…… 凄いね……」


驚く程の大都会って感じではないが、卯月町より店は沢山あるのは事実だ。もし三月を東京に連れていったらどんな反応すんだろ? いや、多分失神しそう。


「じゃあまずはどこに行きましょう? 服屋さん?」

「三月、まずは用事を片付けるのが先だぞ。咲ちゃん、地図アプリを開いてくれ」

「はい」


花宮さんの指示で、俺は地図アプリを起動した。そして三月から貰ったQRコードを読み取った。


そして、指定された場所は、ここから3キロ先のよく分からない場所だった。


「これまた遠いですね…… そういえば、愛佳さんってよくこういう所来たりするんですか?」

「え…… も、もちろん来ているよ! 私一応JKだもん! 道案内は任せてよね! さぁ咲斗くん、URL送って!」


また無理して張り切っちゃって…… 目が泳いでんぞ…… 。このままにしてたら迷子になるなこれは。俺も一応地図アプリ見てるか……。



歩き初めてから二十分後、やはり彼女達は誘惑に負けて、タピオカ屋へと足を運んでしまった。


「こ、これが最近巷で美味し過ぎて依存性者が出ると噂のタピオカミルクティー!?とっても美味しいです! 現代のJKはこれを飲んで楽しんでいるのですか!?」

「も、もっちろん! 美味しいでしょ?」


愛佳はJKぶってるが、タピオカミルクティーを飲んだ時、初めて飲んだような表情をするのを見てしまった。意外と、こういうの飲んだ事ないんだな……。


「…… 結局こうなるのか…… まあ、美味いから構わないが」

「俺も初めて飲みましたけど、結構美味しいですね。…… 三月や愛佳に出会ってなかったら、こんな体験は絶対出来なかったですよね……」

「だな。私も三月と会ってから人生が変わった気がする。感謝だ」


俺らはしみじみとしながら、また一粒、タピオカを吸い上げていた。


「さてと、後どのくらいだろう? …… おお、だいぶ近くまで来てるんだ」

「よし、あともう少し頑張るぞ、お前ら」

「はい、大家さん!」


そしてまたタピオカを吸いながら、また目的地へと向かっていった。



「着いた…… うん。壁だね」

「壁、ですね……」


地図アプリはここが目的地だと記されているが、目の前にあるのは、眼鏡で見ようとも、双眼鏡で見ようとも、壁である。


「…… デマなんじゃねえか、その情報?」

「で、デマなんかじゃないですよ! 仮にデマだったとしたら、とてつもなくしょうもないデマですよ!? そんな事わざわざ書きますか!?」

「──まあ確かにそうだけどよ……」


三月の熱弁は正解なのかもしれないが、どうか怪しいものがある。パソコンに書いてあった日記もなんかふざけていたし、こんな嘘もつくんじゃねーの? と思ったりもしたが、怒られそうだから口には出せなかった。


「うぅぅ…… ここまで来てこんな事になるなんて…… 七咲さん? 何しているんですか?」

「ちょっと壁にスマホを当てて、何らかの情報を得ているの。ちょっと思い当たりがあってね…… おっなんか出てきた…… !!!」


愛佳はとても驚いた表情をした。何か対策法を見つけたのか?


「──あはは。違った、みたい……」

「違った情報でも構わないです!!」

「いや本当に違うんだって」

「なんだよ、何かしらの情報なら教えてくれよ!」

「え、え、えぇ……」


完全に様子がおかしい。絶対何か隠してるような態度だ。


「いや本当に違うんだってば! あっ! ちょっと柳水くんスマホ返して!」

「…… 壁に手を当てて、リンクオープン! …… と叫ぶ…… ちゃんと書いてあんじゃん。何が違うの?」

「え、いやそのあの」

「もういいよ、リンクオープン!」

「ちょっとおぉぉぉぉ!」


愛佳が止めに入ったが、遅かったようだ。そして、壁から強烈な光が差し込んできて、俺らを飲み込んだ。

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