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第二十三話 魅力のない町に転校してしまった

── はぁ、いい子気取りの口調で話すのは流石にキツイな......。容姿をバレないようにする為には、こういう細かい所まで注意しなきゃいけないから仕方ないが。


──それにしても、随分と大人しそうだな、咲斗って奴は。こいつコミュ障なのか? 会話が成り立ってんだが。...... まあ、ネット配信とかで、学校で上手く話せないなんてコメントしてくる一人とかもいるからな。気持ちはわからなくもない。


「ねぇねぇ、蓮くんは何か好きな食べ物とかある?」

「最近の韓流アイドルとかわかる?」


やっぱり女子達は質問攻めだ。絶対こういうことになると分かってた、お決まりだし。


こういうセリフを言うのはなんか偉そうだが、この女子達を静かにさせるのはこれしかない。


「待って待って! 一人ずつちゃんと話そ? ちゃーんと聞いてあげるからね」

「わああああ! 」


ちょっとチャラい感じで言ってしまって歓声が起きてしまった。あまり人から注目を浴びたくないのだか、あと少ししたらこんなこと無くなるだろう。


 ......それよりも、まさかサキアイと同じクラスになるとは......。この学校はなんで一学年二クラスしかないんだよ! まあこの町自体ももう賑わってないし、無理はないだろう。うわぁ、またサキアイの野郎じろじろ見てきやがって......。


「蓮くん、タピオカミルクとか飲んだことある?」

「彼女とかいたの?」


今質問している町外のやつはどんな理由でこんなつまんない町に来たんだ? 俺も言える立場ではないが......。とにかく、こいつらとしばらくの間一緒に学校生活を送っていくと考えると先が思い遣られる......。



「はい、今日のホームルームおしまい! じゃあ、解散!」


先生の合図と共に、生徒達は一斉にバックを持って、それぞれの活動場所へと向かっていった。もちろん俺は帰宅部の活動へと急いだ。この学校は俺が好む部活など存在しない。そもそも学校に溶け込んでしまったら、本来の目的を忘れてしまうだろうしな。


俺の家...... いや、俺は家なんてない。里島のキャンピングカーで寝泊まりをしている。里島には七時に迎えに来いと連絡をしてある。それまで、唯一この町の取り柄である、卯月商店街でもするか......。




「ここが、卯月商店街か......」


必要最低限の物はここら辺で揃いそうだが、大した服屋も雑貨屋も無い。女子達は町外で買い物でもしているのだろうか。...... なんだここは? ショット? ゲームセンターか。まあ、久しぶりに音ゲーでもやってくとするか。


「いらっしゃいませ」


店員の元気な声が響いた。さてと、リズムトレジャーは...... お、あるじゃねぇか。筐体はあと一つ空いているから、お邪魔させてもらうか...... あれ、隣でやってんのは咲斗? 一応声を掛けてみるか......。


「やあ咲斗くんじゃあないか! ...... 咲斗くん?」


ダメだ、集中していて周りが見えてないみたいだ。しかもイヤホン付けながらやってるし、肩叩いたらブチ切れられそ...... 。終わるまで待つか。



「ふぅ、この曲ムズいなあ。フルコンいつ出来んだろう...... ってわあ!」


 気づくのが遅いっつーの、って言いたいけど、ここはキャラを保って......。


「やぁ、咲斗くん! ようやく気づいてくれたかい?」

「え、な、え?なんでここに!?」

「僕も君と同じ、このリズムトレジャーが好きなのさ。良かったら、対戦してみない?」

「う、うん! 負けないからね!」


ほう、大分の自身はあるみたいだ。プレイを見た感じ、腕前は確かだし、期待できる勝負が出来そうだな......。




「ふぅ...... 油断したら間違いなく負けてた......」

「つ、強い...... ! すごいよ蓮くん! リアルでこんな強い人初めて会ったよ!」


 咲斗が手を差し出してきたので、俺らは固い握手をした。ホント、これ程の腕前がある人はここら辺ではこいつしかいないだろう。そう考えると、この道町で過ごすのも苦じゃないかもな......。


「あれ、咲斗くん、もう来てたんですね。......そちらは?」

「ああ、紹介するよ、今日俺の学校に転校してきた、幻霊蓮くんだよ」

「あ、どうもはじめまし...... ん?」

「え? どうかしましたか、お客様?」


なんだろう、この少女とは始めて会う気がしない。記憶が脳の隅っこで何だか残っているような、そうでないような...... 実は初対面じゃないのだろうか?


「...... ごめんね。なんか思い当たりがあってね」

「そうですか...... ていうか咲斗くん、今普通に話せてましたよね? 平気なんですか?」

「うん、なんか蓮くんとは上手く話せるんだ。気が合うからかもね」


 気が合う、か......。気恥ずかしいけど、薄々俺もそう感じてた......なんて口が裂けても言えんがな。



「やほーい! 三月ちゃん今日も遊びに来たよー......っ!? ...... あれれー? 蓮くんも一緒なのー?」

「!?」


サキアイ!? 何故こいつがここに来てんだよ!? ...... こいつ、ここを穴場に使っているのか?


「いやー、蓮くんもこんな所来るんだね! あ、そうそう! これ、忘れ物だよ!」


サキアイは鞄の中から本を取り出した。ってかこれ俺が明日も読もうと思って意図して学校に置いてきたやつじゃん! 俺の机の中勝手に漁りやがって......。どんな場面でも迷惑な女め......。ここはガツンと言ってやりたいトコだが、転校初日目でキャラ崩壊するところを咲斗らに見られる訳にはな......。


「あ、ありがとう! いやーこれ忘れてて困ってたんだよね!」

「えへへ、役に立てて嬉しいな!」


 ──!? サキアイがこんな笑顔を俺に!? どうしたんだこいつ? こいつも猫かぶってんのか?


「で、今日も音ゲーで遊んでいくの、愛佳?」

「ううん。今日は蓮く...... ううん、三月ちゃんの顔を見に来ただけ。それじゃあ私、この後用事あるからこれで!」


そう言うとサキアイは、このゲーセンから出ていった。それにしても、もうこんな時間か...... 俺も帰るとするか......。


「あっ、もうこんな時間だ! 僕そろそろ帰んなきゃ! じゃあね、楽しかったよ! 」

「うん! ありがとう!」


咲斗は笑顔で手を降ってくれた。学校で陰キャ成分を出している分、意外とこういう所もあるんだな、あいつ......。


                      ※


いやぁ、あんな実力を持った奴がこの街にいるなんてな。しかも同じ学校で隣の席。ある意味この町に来たのは正解だったかもしれない。


「おや、随分と嬉しそうですね、ボス」

「は!? そ、そんなことねーし! なんも嬉しくないし!」


里島と俺は、人気がない所を探しにキャンピングカーで町をウロウロしてた。まあこの街は店も少ないし、隠れる所なんて山ほどあるだろう。


「まあ、見つかり次第教えてくれ。俺は本を読むから...... ん?」


本を開くと、一枚のメモ用紙が俺の膝を目掛けて落ちてきた。


「どうしましたか、ボス?」

「なんかメモが...... (やあ、レイレン。あんたと少し話がしたいんだよ。今日の十時、卯月高校の前に来てもらえるかな。ちょっとした歓迎会だと思ってさ。愛佳より)──あいつの事だ、何かあるに違いない。行かないするぞ」

「本当にいいのですか? 私は行った方がいいと思います。ゲリラでやってくるサキアイがわざわざ宣告してくるって事は、相当な事だと思いますが?」

「...... 一理あるな」


そう、サキアイの野郎はいつも急に突撃してくる。しかし、今日は違う。何だかまた良からぬ事を考えてんじゃ......。


「速攻で向かえ、里島」

「承知しました。ボス」


里島は一気に車のスピードを上げ、卯月高校へと車を走らせた。


                     


卯月高校の校門の前に着き、車から降りると、サキアイが待ちくたびれていた様子で、こちらへと向かって来た。


「やあ、改めてようこそ、卯月町へ」

「そんな挨拶はいらない。さっさと話したい事を言え。今日は疲れてるんだ。色々あってな!」

「まあまあ、そんな事言わないでさ。 どう? この町素敵でしょ? 私結構気にいってるんだ」

「...... なんだ、そんな事を言いにきたのか?」

「まさか! そんなくだらない事で呼ぶわけないじゃん!」


...... くだらない事じゃないのか。 結構真剣な話か?


「てゆーかさぁ、いつまでそのお面付けてるつもり? 私には既にバレてるのに」

「別にいいだろ! お前以外に悪の時の素顔を晒す必要などない!」

「ふーん。君はもう既に晒してるんじゃない? ()()()()に」

「あ? どういう事だ?」

「実はね...... さっき君と一緒にゲームしていた子、咲斗くんは、この前私が言っていた同級生なんだよ」

「......!」


あ、あの陰キャのあいつが!? サキアイと関わりがあるのがアイツ!?


「やっぱりそんな反応するよね。ただ、こんな都合のいい事わざわざ言うと思う?」


そう言うとサキアイは目を細めた。


「勿論、レイレンは咲斗くんに本当の顔を見てたくないとは思うけど、咲斗くんに何か悪い事に手を出した瞬間、SNSで即レイレンのプロフィールを公開するよ」

「...... ハハハハ、そんな事か。すぐにデマ認定されるだろう。バカなのか?」

「見くびらないでよ、ほら、私のアカウント」


サキアイはスマホを見せてきた。


「フォロワー数…… 一千万、だと! ?」


こいつ! 今どきのJKはこんな所で役立つものを出してきて!


「そう。中には芸能人や公式垢などもフォロワーにいるんだ。だから、デマ認定される事は少ないだろうね...... まあそんな事を話したかったんだよね」

「...... お前らしくないな。こんな真面目な話をしてくるなんてさ」

「...... はい! 録音おしまい!」

「...... は?」


サキアイは服のポケットの中から録音機を取り出した。


「アハハハハ! これでこの前の仕返しが出来たよ! やったー! いざとなった時、この音声を咲斗くんにきかせてやるんだから!」

「く、くそがあああ!」


俺は本当に頭に来て、懐からDiversity gunを取りだした。この女...... ぶっ潰す!


「わああああ! 撃たないでストップストップ!こんな所で発砲したらレイレンの存在バレちゃうよ!」

「もう構わん! お前を潰すまでならなんでもやってやる!」


俺は無我夢中で発砲した。ちなみに今回の玉は(Cutter gun)である。皮膚に当たったら傷を入れることが出来る。


「お止めくださいボス! 女相手にそのアイテムを使ったらいけません!」


キャンピングカーで様子を見ていた里島は、俺の男としての威厳がピンチだと感じたのか、俺の脇を掴んできた。


「はなせ!」

「もう十分な情報は聞けたじゃないですか! 」

「もう! レイレンの...... レイレンの! 変たぁぁぁぁぁい!」


サキアイはポケットに入れていた短刀で、俺に一振りしてきた。


「うわあああああ!」


見事命中された俺は、しばらく麻痺した。


 「レイレンの馬鹿! 何で戻ってくれないのよ! ...... 何で? 何でなの!?」


 俺の耳には、その嘆きの言葉だけがハッキリと聞こえた。とても、今にも泣きそうな声だった。



麻痺状態が解けた俺は、ボロボロになっていた。そして、目の前にはもうサキアイの姿はなかった。


「ボス...... 大丈夫ですか?」

「大丈夫じゃねぇよ! お前どっちの味方してるんだよ!」

「勿論ボスの味方ですよ。サキアイにさらに切り傷を入れたとしたら、もっと弱みを握られることになるでしょうね」

「...... そうか。俺が間違ってた」


里島は情報採取だけでなく、判断能力にも優れていて、いつも俺の想像以上の考えを思いつく。今回もまた助けて貰った...... いや待て、俺の脇を掴んでいた里島は何故無傷なんだ?


「...... あのままボスに捕まったままだと間違いなく電流に巻き込まれてました。離してよかったと思います」

「おい! 俺を助けようとは思わなかったのかよ! ?」

「...... 女にあんな手を使うのは味方の私でも許せません」


確かに気が狂っていて、俺は不適格な行動をとってしまった。そこは反省する。...... でも、何故録音をするためだけに俺を呼んだのだ? あんな事いつでも出来るのに...... いや、来て欲しいとかじゃねぇけどな!


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