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第十八話 こんなタイミングに来るなよ......

「この音からするに、人間だな......お前ら! 施設の裏に回れ! 二手に分かれて挟み撃ちだ!」

「「「はい!!」」」

「乙葉は部下共の指令を頼む!」

「うん、わかった! ......お前らぁ!! 絶対に逃がすんじゃねえぞぉぉ!! 」


 乙葉は部下共を指示するために、部下共の後に回った。さて、俺も応戦の準備をするか......いつもの仮面付けて......と。


「ボス! 私は何をすればいいでしょうか?」

「車で先に卯月町へ向かってろ。後から追いかける」

「そんなの駄目です! ボスを置いてなんていけません!」

「命令を聞けないのか! いいからいってろ!」

「......承知しました。必ず来てください」


 里島は悲しい顔をしながら車に乗り、そのまま卯月町の方向へと走らせた。......俺が応戦しろと言わない理由がわかるか? 打つ手はあるんだ。


                          *

 


 部下共には教えてない極秘ルートを使って、施設の裏へと向かった。実を言うとこっちの方が遠回りになるのだが、昔開発したとある発明品が通り道に眠っているから、わざわざこのルートを選んだのである。さっき思い出した。


「ここの部屋だ! うわぁ......結構山があるなぁ......だが、場所は把握している。ここの引き出しだ。......あった。まだ使えるかな......。悪いな、今は忙しくて、一つ一つ見てられないんだ。また戻って来た時に見てあげるから。それまで、じゃあな......」


 俺は発明品との別れを名残惜しみながら、発明品を胸ポケットに入れ、出口へと向かった。


「さて、そこが出口だ......またお前の仕業か」


 俺の目の前には、無様にやられている部下共の姿と、リュックサックを背中に背負った、厄介者の女、サキアイの姿が月夜に照らされていた。


「あちゃ~。とうとうレイレンまで来ちゃったかぁ。今日こそ上手くいくと思ったら、警報が鳴って驚いて窓ガラス割って抜け出しちゃった。あんなところまでつけていたんだね。まあ、今日はもう用はないから、これでバイバイだね!」


 サキアイは、森の中へと逃げて行った。


「まだ立てる者は、速攻で追いかけろぉぉ!! 逃がすんじゃねえぞぉぉぉ!!!」

「「「はい! 乙葉教官!」」」


 的確な乙葉の指示に従って、残りの10名の部下共は走り出した。


「乙葉! 遅くなってすまん! お前は大丈夫なのか!?」

「大丈夫。まだウチが戦力になる出番じゃないよ。それよりも、サキアイのクソ野郎が!」

「おいおい、女がそんな汚い言葉使うもんじゃねぇ。まあ。あいつには使っていいいいと思うが......俺も追いかける。これが最後の別れだ。ちゃんとうちの施設を守ってくれよ?」

「......わかったよ。ゴールデンウィークには絶対に戻ってきてね」

「ああ。約束だ」


 俺は外していた仮面をまた付けて、サキアイを追っかけた。お前の力を信じてるよ......。



 

「木に登ったぞ! みんな目を反らすな!」

「そこの人、こっちに回って!」

 

 すぐに部下共に追いつくと、一人一人が声を掛け合って、順調にサキアイを追っかけてくれているようだ。


「お前ら! その調子でサキアイを逃がすなよ!」

「き、今日はいつもよりしぶといじゃん。じゃあ、早速回収したこれを使うとしますか!」


 何をしだすかと思った途端、突然何かを下に放り投げた。すると、突然岩が地面から湧き出てきて、目の前に立ちはだかってきた。


「しまった! これじゃあ進めねぇ......」

「ボス! サキアイを追っかけられるのはボスしかいません! 俺らが踏み台になります!」

「部下共......! よし! 今すぐ態勢をとってくれ!」


 こいつらは......! 本当にいい奴らだ! 泣けてくる......。


 

「ポージング完了! いつでもオッケーです!」

「よし! じゃあ行くぞ! ......うぉりゃぁぁぁ!」


 部下共が手を踏み台にして、俺が乗った瞬間、一気に手を上へと上げた。そして、岩を通り越した先へといけた。


「やったぞ部下共! サキアイを絶対捕まえてやる! じゃあな!」

「「ありがとうございました! 元気に行ってらっしゃいませ!!」」


 部下共は別れの挨拶を俺に交わし、岩越しに見送ってくれた。


「レイレン、いい仲間持ってんじゃん。まあそんな仲間ももうお別れかもしれないけどね! てか、さっき私が使ったのってなんて名前なの?」

「ロックメーカーだ。岩を地面から生み出す、俺の作った中の一つの発明品だ。ただ......お前ごときにに使われたくはなかったんだがなあ!!」


 怒りが込み上げてきた俺は、懐から相棒のDiversity(ダイバーシティ) gun(ガン)を取り出した。そして、 Motion seal( モーション シール)弾をサキアイに向かって発砲した。しかし、木を素早く移動していて、中々命中しない。


「私にそんなのは今更聞かないよ!! 昨日ので学んだからね!」

「そうだ! お前、他に何を盗みやがった!?」

「盗むだなんて人聞きが悪いなぁ。私は危険物を回収しに来てるんだよ。でも、リーダーからの命令で、ピンチになったら使っていいって言ってたから使ったんだよ?」

「今はそんな事を聞いてねぇよ! 他に何を盗みやがったって聞いてるんだよ!」

「こ・れ」


 リュックから取り出したのは、里島に燃やせと頼んだはずの【ぼくがかんがえたはつめいひん】だった。


「うわああああああ!!! お前! よりにもよって俺の黒歴史を!!!! 今すぐこっちによこせ!!」

「やだね! これで何か不利になった時に使うんだから! ......それが本来の目的だよ」


 ──くそ......弾を撃っても当たりゃしない。一体どうすれば......。


 すると、突如赤い光線がサキアイの胸に光った。そして、一つの弾がどこからか飛んできた。


「......うぐっ! う、動けない......」


 どうやら、乙葉が自慢のスナイパーライフルで、サキアイに向けて、Motion seal( モーション シール)弾を、施設の屋上から撃ってくれたようだ。あいつは視力もよいから、スナイパー要員として雇ったのだ。最後まで役に立ったぜ! 乙葉!


「こんなの5秒で解いてやる! ......何これ! 全然解けないんですけど!?」

「あいつが使ったのは、5分間も動きを封じるものだ! 動くなよ!」


 俺はサキアイが登っている木に登って、サキアイの服を掴んだ。そして、一緒に木から真っ逆さまになった。


「何するの!? 変態!」

「黙れ偽善者! 今から一緒来てもらう!」


 地面に着地しそうになった瞬間、俺はDiversity gunで、先程裏部屋から取って来たとある弾を地面に向かって発砲した。


「出てこい! Specified(スペシファイド) hole(ホール)!!!」


 叫んだと同時に、何もない地面からいきなりとある穴が出現した。そして、俺とサキアイはその中へと入っていった。


「うわあぁぁ! また私を落とす気なの!? ウッ......zzzz」


 うるさいサキアイに、睡眠弾を撃った。さて、この穴の先は勿論あそこに繋がっている。早く着かないだろうか。女を抱えているのは罪悪感を感じる......。



 

「......ん? 私寝てたのかな? てかどこだろうここ? なんかすごい揺れてる......」

「ようやく気が付いたか。」ホント、こんなタイミングに来るなよ......」


 そう。落ちた先は、里島が運転しているキャンピングカーである。俺が先程撃った弾は、指定場所移動弾で、使う条件は、一度行ったことがあって鮮明に覚えている場所なら、 Specified(スペシファイド) hole(ホール)に落ちてる時にそこへ行きたいと強く思うこと。そうすれば、こうやって行けるというシステムだ。


 こんな便利な道具なのに、何故普段使わないかって? 普段使うタイミングがないからさ。さっきも言ったが、一度行ったことがあって鮮明に覚えている場所でないと使えないんだよこれ。俺は普段から引きこもってゲームしてるし、どこも行く機会なんてなかったから、こいつは没になったんだ。それに、今はTrap(トラップ) hole(ホール)弾の方が主流になってきてるからな。


「まさか、その考えがあったなんて。流石ボスです。それでは、全速力で向かいます」

「ちょっと! 私をどこへ連れて行く気!?」

「お前はここから5km先のパーキングエリアで下ろしてやる。そこに着くまで、色々と盗んだ物を返してもらおうか!!」


 何のためらいもなく、俺はサキアイのリュックを開けた。


「よかった......本当に【ぼくがかんがえたはつめいひん】が帰ってきてよかった......てか里島! お前なんで焼き捨てなかったんだよ!?」

「すみません。ボスが子供の頃に書かれたというので、ご覧になっていたところ、引き込まれてしまって、これはまだ捨てるべきではないと判断いたしましたので......」

「そうそう! 私もさっき見たら、結構面白い事書いていたんだよねー! 確か......キルキルマシーンだっけ?」

「やめろぉぉ!! それ以上言ったら喋れなくするぞ!!」

 

 里島にもサキアイにも見られたとか、もう終わった......。卯月市に行く前に死ぬかも......。


「でもさ? そういう書いてあるののって、今の発明品に反映してたりしない? さっきちらっと見えた、【レインボーピストル】とかさ、今のDiversity gunの原型でしょ?」

「......ああ、いざ作ろうとしたら、七種類だけじゃつまんねぇと思ったから、多様性銃って意味の、Diversity gunってしたんだ。確かに、今の発明品のモデル帳だな......てか言わせるな! お前に知ってもらう必要なんてねえだろが!」

「まあいいじゃん? 私だって動けないんだし、仮に動けたとしても高速道路で出されても困るからね! ちょっとした暇つぶしにさ!」

「ったく、しょうがねぇ奴だ......」


 そして、しばらくの間、車にサキアイを乗せながら、パーキングエリアまでまで走らせた......。


                             *


「いやぁ~、カレーまで奢ってくれるなんてありがとね!」

「ったく、車から降ろした瞬間、「カレーを食わさせるまでは行かさん!」なんて言って、短刀で脅してきやがるから......」


 こいつは本当にわがままな野郎だ。一緒にいて世話が焼ける。てかこんな時間にお互い変な服着てて、更には俺は仮面をつけているから、周囲の人間に変な目で見られる。中には、「あ、ファントムRじゃない?」なーんていう声も聞こえてくる。早くここから出たい......。


「ボス、早く召し上がらないと、ラーメンが伸びてしまいますよ? これ、結構絶品ですよ?」

「俺だって食べたい気持ちでいっぱいだ。だが、仮面を外して素顔をサキアイの前で晒すわけにもいかないしよ......」

「大体さー。その仮面って、付ける意味ってあるの? 素顔は何回も私に見せてくれてんじゃん」

「それは昔の話だろ? だから、今の顔は見られたくないんだよ......うわぁ!」


 サキアイは突然、俺の仮面を外そうと、手を伸ばしてきた。


「おい! 何すんだよ!!」

「じゃあ、今の顔を見せてよ! 別に減るもんじゃないじゃん!」

「やめろ! Diversity gunでまた動けなくするぞ!?」


 俺はDiversity gunをまた懐から取り出そうとした。しかし、いくら手をゴソゴソさせても、見当たらなかった。


「私が預かっています。さっきボスが、トイレに行くと言って服を預かった時に、Diversity gunを抜き取ったのです。ちなみに、サキアイの短刀もここにあります」

「嘘!? え、マジでないんだけど!? いつ取ったの!? 里島さん返してよ!!」

「駄目です。こんな所で争いを起こして、店を滅茶苦茶にしたらどう責任をとるつもりなんですか。ボスたちの今後の事を見通しての判断です」


──確かに里島の言う通りだ。俺らはこれから卯月町に行くというのに、こんなパーキングで警察に捕まるわけにもいかない。それに、周囲の人達が、ファントムRが悪い奴として認識されてしまう。危ない所だった。


「だから、今は食事の時間を楽しみましょうよ。ボスも仮面を外して食べたらどうです? ......私に考えがあります」

「? なんだよそれって?」


 里島は席を外して、サキアイの方へ向かった。そして、ポケットからビスケットを取り出した。


「サキアイ、ちょっとこれを食べてみてください。このビスケット、3時間も並ばないと手に入らないんですよ? 是非サキアイにも食べてもらいたいと思って......」

「え、いいの!? ありがとう里島さん! じゃあ、いただきます! ......美味しい! 流石3時間も並ばない......と......」


 突然、サキアイはパタリと、テーブルで寝てしまった。


「あの中に睡眠薬を入れていたんです。これならサキアイに見られる心配もありません。今のうちにラーメンを頂いて下さい」

「あ、ありがとよ......半分伸び切ってるけど、確かに美味いな」


 サキアイは一向に起きる気配がない。それにしても、ぐっすり眠ってやがる。


「それにしても、なんでサキアイをキャンピングカーに連れてきたのですか? またTrap hole弾で自宅に送還させたらよかったのでは?」

「あいつに痛い目にあってもらう為だ。目が覚めたら一人で取り残されて、手も足も出ないだろう。それに、こいつに卯月町に行くなんて聞かれてないだろうから、俺らの行き先がバレないだろ?」

「なるほど。そのようなお考えをお持ちだったんですねで。でしたら、目覚める前に早く食べ終えて下さい!」

「待ってくれ、麺が伸びて量が多くなってる......食べ残すのはもったったいねぇだろ......」

「ボスはこういう時に限って真面目なんですから......」


                               *

 ラーメンを食べ終えるのに苦戦した20分後、サキアイを置き残して、改めて卯月町へと、車を出発させた。


「ボスは優しいですね。なんやかんや言って、帰りのバスの時刻表を買ってサキアイの傍に置いてあげて」

「や、優しくなんかねぇよ! よく考えたら、あんなものを買っとかないと、後であいつが何かし出した時に、俺まで突き止められる羽目になるかもしれないからな。俺なりに逃げ道を作ってやっただけさ......そういうお前だって、短刀をサキアイのポケットの中に、コッソリ入れていたくせに!」

「私だってあんな物騒な物いつまでも持ってたくありませんし、Diversity gunなら一見、おもちゃに見られると思いますし」


 ──俺のDiversity gunがおもちゃに見えるだと? ......まあ確かに言われてみたらそうかもしれない。


「さて、ボスはお疲れでしょうし、そろそろお休みになられたらどうですか? まだ昨日の傷口だって完治してないでしょうし、ここから卯月市まで大分かかりますし」

「悪いな。本当だったらバスや船で行けた方がよかったのだが、書類を書く時点で、乗車許可が下りなさそうだったんだ。俺が二十歳超えて免許持ってたら、運転変われるのにな。ごめんな......」

「いいんですよ。眠気覚まし飲んでますので、眠いのはバッチリ会費できますよ。後ろの座席でお休みになって下さい。あ、ベットで寝ると違反になってしまうので、注意してくださいね。では、よい夢を」

「ああ、おやすみ。事故には気をつけろよ?」


 里島に甘えて、俺は睡眠を取ることにした。てか、運転中に席に立つのも駄目じゃね? まあいいや。

 卯月市に行って、本当に何か持って帰られるだろうか......まあ、その時は......その時考えれば......いいや......。


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