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【プロローグ】第一話 組織に終われる少女

──あなたは何か誰にも奪われたくないものはある? 金? ゲーム? トレカ? え、命? ハハハ。面白い事を言うね! 君は多分優等生タイプだよね? 少しは笑いを取りに来てもいいと思うよ? あ、煽っている訳じゃないからね?


......え?なんでそんなこと聞くかって? それはね、私にもあるからなんだ、誰にも奪われたくない発明品の数々がね。私は昔から発明するのが大好きでさ、最初は自作PCとかそういうのを作ってたんだけど、だんだん作っていくうち銃とか刀とか凶器を生み出すようになっちゃったんだよね......。


 どうしてこんな風になっちゃったのか、自分でもよく分からないよ。処分もしたいと思ってるけど、こんな危険物を警察にでも見つかったらとんでもない事になるからね......だから今も幾つかの倉庫に見つからないように、大切にしまっているんだ。


 それに、私以外の誰かには絶対に使われたくない。自分が作った物には勝手に使われたくない。ていうか、私の許可なしに使うことは許されない、そういう風に設計されてるんだ。まあ、私が許可した人なら使えるようになっているんだけど......。今の時代セキュリティをきちんとしておかないと誰かに悪用されるかもしれないからね。


まぁそんな意味があって奪われたくないんだ。あなたもそんな大切なものがあったら奪われないように気をつけてね。


「おい! 今日こそ発明品を頂きに来たぞ、影ノ一!」


突然ドアが開いて、とある男たちが入って来た。はぁ......折角のネットタイムだってのに、またあいつらが来たよ......。窓から出よっと。



                            *



「こっちだ! 逃がすんじゃねえぞ!」



  敵に追われている私は、ひたすらに逃げ回った。発明家だけど、意外と運動も出来るんだぞ、私。でも、こんな白衣で倉庫から出てきちゃったから、足の回転をする速度がいつもより遅かった。いや本当に邪魔だなぁこの白衣。私発明家なんだから仕方ないけどさぁ! とにかく逃げなきゃ......ここを左に曲がれば確か......あっやば......こっち橋だった......。



「そこまでだ! いい加減観念しろ!」



こんな時に方向音痴が発動して、橋に逃げてしまった。運動は出来ても方向音痴じゃ元も子もないよね。後ろは川。私の反対側にも敵が迫ってきて後ろからも迫ってきて、挟み撃ちにされてしまった。まさに背水の陣ってとこかね......。



「さぁ、こっちへ大人しく来い影ノ一! 言うことをきかないと痛い目にあわせんぞ!」



あ、そうそう! 私、影ノ一って呼ばれてるの! 噂ではどっかのおじさんが付けた名前らしいんだけど、ネーミングセンスないよね……。いっぺんそいつと話してみたいわ。


「さぁ、早くこっちに来い!」



「はんっ。逆にこっちへ来てみなよ。あんたらが狙ってるこの代物を壊してやるんだから! ほら、来なよ来なよ!」



「っ......! この野郎!」



──そう。彼らは私が長い間作成してきた発明品「記憶喪失爆弾(きおくそうしつばくだん)」を狙っているの。だから今私は、それを奪われないように逃げてるってわけ。ちなみにこの爆弾の効果は、都合の良いものの以外はキレイさっぱり忘れてしまう。我ながら恐ろしいものを作ってしまったなーって思うよホント。



「それにしてもさ、あんたらって、何度も何度も私を追ってきて失敗してんじゃん?もう諦めたら? ぶっちゃけ才能ないんじゃね? あはははは!」



「このぉ......! お前ら、突撃して構わねぇ! 影ノ一を力ずくでもいいから捕らえろ! そしてあれを奪え!」



 高牧が手下達に命令すると、私を目掛けて皆襲いかかってきた。この瞬間私は、脇のポケットに入っているボタンを押した。



「「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」」



襲いかかってきた人達ほとんどが無様な声をあげて落ちてった。なぜって? 私が作った「Memory Delete Hole(メモリー デリート ホール)」略してMDHっていう落とし穴を、走ってる時に目の前に仕掛けたからね。


効果は、穴に落ちた人は記憶の6割を忘れて、その上見知らぬ場所へ転送されてしまうという、私の一つの発明品なんだ。



「本当、あんたら最低じゃん。こんなか弱い女を力ずくで抑えようなんてさぁ。本当は警察行きだよ警察!」



「何がか弱いだよ! 今だってあんたの落とし穴で俺の仲間を落としてた癖によ! ......まあいい。お前の今の立場としては、前、両側は俺と部下、後ろは川でお前は完全に不利。この状況からお前はどう逃げるんだ?」



「フフン、確かに前も両側も塞がっている。でも川はどうだろう? あんたらの部下は川にはいないよ?」



「な、何当たり前のことを......! おい、まさか!」



「そう! 恐らく高牧の考えている通りだよ! でもさ、そうなるとこの記憶喪失爆弾はどうする?もちろん使えるのは一回だけ。本当はここでは使いたくなかったんだけど......でもこのまま使わない訳にも行かないし......だから......今ここで使うよ」



私は記憶喪失爆弾のスイッチを押し、それを抱いたと同時に、後ろに倒れるように落ちてった。



「──!? あいつ正気か!? あの記憶喪失爆弾と共に落ちたら、あいつの記憶ごとさっぱり消えて、色々聞けなくなっちゃうしまうじゃねぇかよ! おいお前ら!一斉に下に降りろ!」



「私が用意してるのはそれだけじゃないよ、高牧。そろそろアレが起動するから」



 ちょうど私がそう言った瞬間、巨大な穴が川に浮かび上がった。そう、私は川に用意していた巨大なMDHを発動させる為に、こうやって時間稼ぎをしてたのだ。通常の5倍にもなると、起動速度に時間がかかるから大変だよ。ほら、また何人か落ちたよ。本っ当に学習しないよね!



「しまった! あの穴に落ちたら居場所もどこか分かんなくなるぞ! おい! いつもの小型GPSはどした!?」


「ええっと......すみません! 今日は持ってきてないです!」


「何が『今日は持ってきてないです!』だよおぉぉぉ!!! 常に用意しとけよ馬鹿野郎!!!!」



 やっぱり彼らは馬鹿だ、何かが抜けているんだよね......。まあそんなお前らともお別れだ。



「それじゃ、さよなら! またいつかね!」


「くそがぁぁぁぁ!!!」



別れの挨拶を交わしている間に、私もMDHの異次元にに入っていた。この先何処に行くのか、それは私にも知らない。ただ、記憶が無くなるのを待つだけだ。私だってこんな事はしたくなかった。


でもね、これしか方法がなかったんだ、爆弾の被害を抑える方法が。いっそ、記憶を無くして、こんな闘いも忘れる。そして、ある程度の記憶を残しておいて、新たな生活を送っていくんだ。こんな薄暗い人生は今日でおしまいだ。


  あぁ......意識が薄くなってきた.....。もういいや……。でも、一応家族の兄さんに挨拶はしておきたかったな......。 さようなら、過去の私。そして……


 任せたよ、未来の私。


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