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第十四話 1 VS 高牧

 流石にあんな狭い所から開始したら、平等な状態で始められないから、三月がいる小屋をを気にしながらも、少し広い所へと出た。



「そういえば、お互い自己紹介がまだだったなぁ、俺は高牧 寿人(たかまき ひさと)。メカニズミカルの......おっと、これ以上は抑えておくか。んで、お前の名は......」


「俺は柳水咲斗。高校一年生。もうすぐ二年生だ」


「ほう......咲斗っつーのか。いい名前じゃねぇか、付けてくれた親に感謝にしろよ。んじゃ今から五分間、お互いに隠れる時間を設ける。範囲は半径百メートル以内だ。OK?」


「ああ、いいぜ。んじゃ俺の合図で始めさせて貰う。それじゃ......スタート!!」


「ビビって逃げんじゃねえぞ!」




 俺の合図と同時に、高牧は隠れ始めた。だが俺はすぐ後ろにあった草むらに待機していた。




〔え、そんな所でいいの? それじゃあ、すぐ勝負ついちゃうじゃない?〕




「あえて動かないってのも作戦の内だ。俺は腰抜けなんかじゃないさ。......にしても、三月のやつ大丈夫かな......」


 

 今頃三月は何をしているんだろう。きっと、怯えて怖い思いをしているだろう。一刻も早くこの勝負を終えないと行けねぇ。



〔咲斗くん、今さらだけど、本当に勝負に勝てるの? 自信はあるの?〕


「......勝負に勝つというより、大切な人を守ろうとしてるんだ。たとえ勝てなくて情報を得られなくたって、守れるのであればそれでいい。それに、俺がここに待機している理由だって、裏から小屋に侵入するのを防ぐためでもあるから」


〔......そっか。でも私だって出来る限りの事は成し遂げてみせるから、勝負にも勝つって勢いで挑んでよ?〕



 ナノの言う通りだ。一つだけじゃなくて二つの事を成し遂げて三月の所へ行こう。



〔そろそろ五分経つんじゃない? さっきみたいにならない様に警戒心を持って挑むんだよ?〕


「そんなことわかってる。 あ、高牧はっけ......は!?」



 なんと高牧は、部下らしき物を十人程連れてきたのだ。こいつ......汚い手を使いやがって!



「咲斗、近くにいるのなら聞け! 仲間を連れてきちゃダメなんてことは一言も言ってないぞ。なんなら、ルールにない事をお前がやってもいいんだぜ? さぁ咲斗。どこからでもかかってきな。まぁ、お前が負けるのはわかっているがな!!」


「くっ。。...勝負はやらなきゃわかんねえだろうが!! なめやがってこの野郎!!!」


 俺はムキになって、草むらから飛び出そうとした。


〔まって咲斗くん、挑発に乗らないで! 相手はそうやって咲斗くんを誘っているんだよ。こんなところで勝負ありなんて言わせないんだから〕


 ナノの言葉で、俺は我に返った。勝負は怒った奴がだいたい負けるケースが多いからな。このゴーグルをつけてなくてナノと話せてなかったら。今頃もうやられてただろう。


〔でもじっとしているだけでも勝負はつかないんじゃ......試しに一番後ろの弱そうな奴を狙おうよ!〕



 俺はイマグロガンを構えて、一番後ろの奴に銃を向けた。すると、ゴーグルも敵を読み込んだのか、敵に大きな的が映し出してきた。



〔相手が完全に止まった瞬間がベストショットを撃てるタイミングだよ。私の合図で撃ってみて〕


「了解だ」



 俺らに緊張感が走る。もし外したら敵にばれたら......いや命中してもバレるんだけどさ。でもそんなことを言っている場合じゃない。とにかく集中......集中......。


 すると、敵の一人が木陰に座り始めた。



「ふぅ、疲れた疲れた。少し木陰で休憩っと......」




〔今だ!〕




 油断している敵に、ナノの合図と同時に、俺は引き金をひいた。


「ぐぁぁ!」



 すると目には見えない速さで弾がとび、狙った敵が倒れ込んだ。どうやら命中したようだ。久しぶりに銃なんて持つから緊張したな。あ、勿論おもちゃのね!



「な、なんだよこれ! やられたのかこいつ!」


「でも、血は一滴も垂らしてない......どうなってんだこれ......」




 敵は驚きを隠せないようだ。この調子で敵がパニックに陥っているうちにどんどん撃ってやる。次はあの背が高いやつ......狙いを定めて......。



「どうしようどうしよう! 次は俺がやられるかも......」


「ここだ!」



 敵がしゃがみこんだ瞬間、再びナノの合図で引き金を引くと、「ウッ!」と情けない声をあげながら、仰向けになって倒れ込んだ。



〔やるじゃん咲斗くん! この調子でどんどんとやっつけちゃえ!〕


「あ、ああ!」



 しかし喜ぶのも束の間、この部族のリーダーをまだ倒してないのだ。そういえば高牧の姿が見当たらない。くそ、見逃したか......。



〔ちなみに倒れた敵は、基本三時間後に復活するから安心してね。人殺しにはならないからね!〕


「復活するんだ......よかった......」





「動くな、咲斗」


「......!!!」



 俺の後ろから声が聞こえたと思った瞬間、後ろの草むらから高牧が突然飛び出してきた。




〔咲斗くん!〕


「銃音を手掛かりにここら辺を探したら......前ばかり見てたら背後が危ないだろ? 隙が多いんだよお前はな?」



──高牧の言うとおり俺は高牧の事を見ておらず、隙を見て背後に回られたことに気づかず、高牧に後頭部に銃口を向けられてしまった。俺は本当に反省を生かさないよな......我ながら呆れる。



「お前が一歩でも動いたらこの引き金を引く。言ってなかったが、これはBB弾なんかじゃねえ、実弾さ......嘘ついてわりぃな。さぁ、降参するなら今のうちだぜ、咲斗?」


「......くっ!」


 


 俺は絶体絶命の状況に侵された。よくアニメとかでこういうシーンを見るけど、案外怖いものだ。いつやられるかわからない恐怖に襲われるのだ。



「返事をしないなら撃ってもいいよなぁ? ああ?」


〔ナノ! ......おい、ナノ!?〕


「ハハハハ! 機械にまでも見放されたか! 全く、運の悪い男だな!」



 ナノにも反応がない。故障かな......もうダメかもしれない......三月......俺、成し遂げられないかもしれないごめん......。







「何負けを覚悟してるのさ。覚悟を決めるのはまだ早いんじゃないかな、柳水くん?」



「お、お前は......!!!」


 その声の主は木の上から降りてきた。俺はこの声に聞き覚えがある。いや、この声の主は間違いなく、あいつだ。



「そうだよ。私が泣く子も黙る、短刀使いのサキアイさ!」




 何故か愛佳は、サキアイというおかしな名前で登場してきた。......というか何故愛佳がこんなところにいるんだ? まさか、これを知っててここに来たのか!?



「高牧。早く柳水くんから離れて。さもなければ私の短刀であんたの顔を真っ二つにするよ」


「──まさかサキアイがここに来ているとは思わなかったぜ......まあいいこっちはあと十人いるんだぞ、おい部下共!こっちに来やがれ!」



「「「行くぞぉぉぉぉ!」」」



 高牧が命令すると、俺らを目掛けて部下たちが突撃してきた。



「ふふん。そう上手くいくかな?」




 愛佳がそう言うと、まるで待っていたの様に愛佳の目の前の地面に大きな穴が浮かび上がってきた。そして部下達五人程はその穴へ落っこってしまった。



「「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」」


「全く、ここら辺は誰かが作った落とし穴があるんだから気をつけないと駄目じゃん? 下調べとかしてないの? まあ、私は直感で分かるから、無事回避出来たけどさ」


「くそぉぉぉ! 二度も同じ手に!」



 直感でわかるとか、すげぇ......。愛佳にそんな能力があったなんて......。



「柳水くん、なにボーっとしてるの! 早く残りを掃除するよ!」


「あ、ああ!」


「さてと、そこの子豚......いや、大豚さんかな? こっちへ来て見なよ! ほらどしたどした?」


「なんだとサキアイ!? 今すぐ行ってやる!」




 体形が太い敵は、まんまと愛佳の挑発に乗って、追いかけて行った。ある程度まで走ると、愛佳はジャンプして木に登った。



「木に登るなんてずりぃぞ! ふんぬっ!! ふんぬっ!!」


 敵はジャンプして段々と愛佳が登っている木に近づいていった。



「ふんぬっ! ふんぬっ! あれ、うわああああああ!」


「これが狙いだよ! まんまと引っかかってくれてありがと!」



 敵はジャンプした着地をしたと同時に、穴が浮かび上がり、そのまま落下していった。やっぱり阿保なのかなこの人たち?



「んぐぐ......三十七番! 六十八番! 二人で咲斗にかかれ!」


「「了解!」」




 二人の普通の体格の敵が俺に向かって襲い掛かってきた。ピンチだったので即座に俺は逃げた。



「待て! 六十八番、銃の準備をするぞ!」


「わかってる、三十七番!」


「させないっ!」



 愛佳が木から降りてきて、三十七番と六十八番のズボンのポケットを切り裂いた。そして、二人の銃がポロっと落ちた。



「あぁっ! 早く拾え!」


「やらせねぇ!」




 俺は落ちた銃を拾おうとしてしゃがみこんだ瞬間、そのすきを狙って三十七番の頭を狙い定めて、引き金を引いた。



「んぐっ!」




 またしても三十七番は倒れ込んだ。愛佳の手助けがなかったら、絶対にこんなことはできなかった。感謝するぜ、愛佳!




「うわああああああ! 撃つな!! 撃つなぁ!! 銃口をこっちに向けてくるなぁ!!!」



 どうやら六十八番は弱気な性格をしているようだ。なんでこうなることを知っていてこんな変な組織なんかに入ったんだろう......。阿保の集まりなのか?



「いやぁ、見逃してやってもいいよ? ほら、あっちに逃げ道があるからさ」


「こ、こんな所早く去ってやる! あれ、足が浮いて......うわぁぁぁぁ!!」


「あ、ごめーん? そっち落とし穴あるんだったぁ!」




 またしても愛佳は敵を上手く誘導して、穴に落とさせた。凄いよ、愛佳!



「さぁて、敵はあっさりとやられちゃったよ? これで一対二。私達の方が有利になっちゃったけど?」


「ちっ、俺の力をなめるなよ!」



 そういうと高牧は銃を持ち、四方八方と撃ってきた。しかし、勢いのある音が響くだけで、弾らしきものはあまり見かけられない。もしかして......BB弾?



「おい高牧! 実弾なんて嘘じゃねえかよ!」


「何だよ、脅しのためにそう言ったに決まってるだろ!? 騙される方が悪いんだよ!」




 な、なんだその子供みたいな言い訳は......。阿保な上、精神年齢まで低かったのか。ならもう大丈夫だ。




「なあに! これで突き刺してやる!」


「うわああああああ! ってあれ? 痛くない?」


「後ろを見てみな!」


「あ? うわあ!」



 愛佳が高牧を脅し、油断を与えた隙に、高牧の額に短刀を向けた。あと一歩前へ動けば、血だらけになるだろう。



「柳水くん、今だよ! その銃で高牧をやっつけて! (幻覚ガン)にしてあるから!」


「げ、幻覚ガン?? よく分からないけど、やってやる!」


 俺は愛佳からの支援を受けて、高牧の腰を目掛けて弾を発砲した。そしてとても大きな音と共に小さい弾が飛び出してきた。



「うぉっ! いてて、なんだ大したことねえじゃんかビビらせやがってよお。なあ部下共、ってあれ?そう言えば六十八番、お前ら穴に落ちたんじゃ......っておいなんだよ睨みつけてきて痛った! 何蹴るんだよこの俺に痛った! おいお前ら蹴るな殴るなうわあああああ!」


 高牧は大人数で襲いかかっている様に見えているようだが、実際には誰も手を出してない。第三者の人物が見たら完全にヤバい人に見えるだろう。警察行きだ。



「幻覚ガンは......まぁ説明は要らないよね。ここに使用例がいるんだから」


「ああそうだな、ナノ......あれ、愛佳からナノの声が聞こえた?」




 疑問に思っていると、愛佳がスマホを取り出し、通信機能アプリを起動して、俺に見せて来た。



「えへへー気づかなかった? ナノちゃんなんてこの世にいないよ。全部私が演じてたの。木の上から柳水くんや高牧を見ながらね! いやぁー、バレないように咲斗くんって呼んでたんだけど、慣れないから変な感じだったよー」


「──ナノはいない? 嘘だろ......」




 俺は、虚無に話しかけていたという事実に絶望した。咲斗くんなんて言うから愛佳だっていうのは思いもつかなかった。てかなんでこいつがこのゴーグルやイマジングローブの使い方を知ってんだ? 愛佳は一体何者なんだ?




「しっかし、こんなやられっぷりじゃあ高牧も降参って言うどころか、まともな話すら出来ないねぇ、やりたくないけど、この前奪った幻覚止めスプレーで幻覚から解いてあげよっか」



これまた変な道具を鞄から取り出した。こんな禍々しいやつどこから強奪してんだ?






「お願いだぁ! 誰か助けてくれぇ!」




 愛佳が逃げられないように高牧をツルで木に縛った後、幻覚止めスプレーを高牧の体中ににかけた。




「はぁ、はぁ。ふぅ......助かったぜ。それで、俺はなんで木に縛られてんだ?」


「何とぼけているんだ、高牧? もう負けは確定してんだよ?」


「......あ? まだ俺は降参なんて言ってねぇだろうがよ」


「でもさ、今はそんなこと高牧が言える立場じゃないんじゃない?」




 そう言いながら愛佳は目を光らせて、高牧の首に短刀を向けた。首と刃の距離はわずか二ミリくらいだ。なんだこの怖い人。




「くっ......わかったよ。仕方ねぇな、降参だ。約束通りちゃんと教えてやるよ。影ノ一ってのは、俺らが求めている人でな、そいつは発明品を作るのが得意......いや、天才レベルだったんだ。しかし、数日前からどうやら失踪しているらしく、その事に目を向けた俺らのボスは、この機に影ノ一の発明品や資料をを奪いたいと思ってらっしゃるらしく、それで今日任務を任されてここまで来たんだ。まあ、俺は捨て駒なんだろうがよ......。でも、なんでボスが影ノ一の発明品を欲しいのか、俺らでもわかんないんだ。別に他の奴だっていいのによ」


「ほう......でもさ、あそこにはセキュリティがあって、あんたらじゃ簡単に解除できないのに、なんでここにきたのさ?」



 おい、そこまで既に把握済みなら先に言えよ。お陰で色々とひどい目に合ったんだぞ。



「教えてやる。これだ......」




 高牧は縛られた状態でいるながらもがらも、どこかからとある赤い手袋を取り出した。



「こいつはボスが発明した、感覚解除手袋だ。名前の通り、あのドアを解除する力がある」


「じゃあ、それを頂こうかな?」


「そ、それだけはやめろ! ボスの命令なんだ! ヒッ!」


 高牧がそう言うと、愛佳はまた目を怖くして首狙いで短刀を向けた。だから怖いって。



「わかった! すいません! 渡す! 渡すから刺すのはやめてくれ!」


「ん、じゃあ大人しくそれを地面に置いて」




 脅された高牧はビビりながら、手袋をポイっと地面に投げた。



「投げるなんて態度が悪いなぁ? まあ、特別に許すよ。......はいっと。確かに愛佳、感覚解除手袋頂きました。んで、捨て駒ってのはどういうことなの? ちょっと気になるから教えて?」


「ああ......俺はメカ二ズミカルの幹部の中でも、一番弱いんだ。こんな山奥に行かせるなんて、大体どうだっていい奴をチョイスするだろ? そんなもんだよ」


「......別に、そんなことないんじゃない?」


「......え?」



 意外にも愛佳は、見放す言葉でなく、肯定側にまわるような言葉を高牧に投げかけた。どうしてだ?


「きっと、レイ......ボスくんは、高牧に期待を込めてここに送り出したんじゃないの?」


「......どういう根拠があってのことだよ?」


「高牧の部下への指示力、それにあの脅し具合。あれなら万が一の事があったら何とかするだろう、という見込みでやったんじゃない? まあ、結果的に私らが勝っちゃったんだけどさ!」


「サキアイ、お前は一体どっちを味方にしてるんだよ......」




 ほんとだよ。褒めてから突然の裏切り、こういうのは結構辛いぞ。俺も経験済みだからわかる。



「まあいいや、色々と動機が聞けてよかった。そこまで話してくれるなんてありがたいよ。じゃあもう用はないよね。部下達のように、あんたも落とし穴に入ろっか? きっと今までの屈辱が晴れて楽になると思うよ? じゃあ柳水くん、縄外したら手持ってね」


「え、待て待ておいサキアイ何すんだおい咲斗手を離せバカやめろ」




 俺は愛佳の指示通り、高牧の腕を持った。




「柳水くん、手持った? んじゃあそこら辺の地面に向かって高牧を放り投げるよ! いち、に、ホイ!」


「うわあぁぁぁぁ!!!!!」



 俺らが投げたと同時に、大きな穴が浮かび上がってきた。高牧は呆気なくその穴に落ちていった。そして跡形もなく穴は無くなった。少し可哀そうな気もするが、更生して帰ってこい、という気持ちも込めて、俺は感情を押し切った。



「ふぅ。ひとまず一件落着だね。まあこのエアガンもなんかの資料になるだろうし、一応もらっとこうか。あっそうだ! 三月ちゃんは!?」


「小屋の中にいる! 急ごう!」



 俺達は三月の元へ、真っ先に小屋に向かった。


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