09. 微睡みの中で1
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一体ここはどこなのか。鉛が流し込まれたような足取りで階段を上がり、長い廊下を延々と進む。
果たしてこの建物で合っているのか、今がどの時間帯なのか、生きているのか死んでいるのか――、それすらよく分からない。
疲れ切っていた。頭がぼーっとして、まるで考えることを拒否していた。
悟倫は何とか自分の部屋に転がり込むと、部屋の隅までいって、寝袋の上に仰向けになった。
低い天井。部屋の中を漂う淀んだ大気。締め切られたブラインドの隙間からは、ほんのりと夕陽が差し込んでいる。
「…………」
何も考えたくなかった。罪の意識すらもここでは無縁な気がした。
自分がスーを殺した。その事実が変わることはない。いつまで経っても、どこにいようとも自分は罪人であり続ける。
確定した過去は、もうどうやっても取り返すことはできない。
「……仕方が、なかった」
天井に手を伸ばして、小さく呟いてみる。
誰もが用いる、甘く便利な言葉。それを分かっていても、何だか少しだけ救われた気がした。
「スー、さん……」
その呟きは、もう届かない。
全身から力が抜ける。どこか深い場所に落ちていくような、そんな倦怠感を味わいながら、悟倫の意識はそこで途切れた。






