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1.僕の手紙

僕はパパとママに手紙を書く。

今、僕は天国にいる。

それがあなたにとって救いになるのだと天使が言った。

あなたがパパやママに何を感じていたかを手紙に書いて欲しいと。

そうしたらその手紙をパパとママに届けると。

パパやママに知ってもらいたい。

僕の気持ちを。

だから手紙を書くことにした。


パパへ。

僕はパパが大好きだから。

殴られても、へっちゃらだよ。

だから、パパ笑ってよ。

こんな姿になった僕を。

馬鹿で愚かで、何も出来ない僕を。

パパが笑ってくれるならなんでもする。

勉強も頑張ってするから。

他の人に「殴られてるよ」なんて告げ口してないよ。

安心して、パパ。

僕はパパが言ったことは絶対守るんだ。

もし、僕が忘れたときは。

そのときはお仕置きして下さい。


パパは今日こう言っていたよね。

「笑ってるんじゃない」って。

だから、パパ、笑わないから。

パパが辛いのに、僕だけ笑ってちゃいけないんだ。

僕もパパの苦しみを味わう。

苦しみが分けられたらいいのに。

パパが喜んでいるときは僕も嬉しいけど、心の中で喜ぶんだ。

顔には出さないからね。

お腹空いても我慢する。

パパは食べて。

僕のぶんも食べていいよ。

僕はいらないから。

パパのほうがお腹空いているから、食べて。

絶対わがままなんて言わないから。

パパを困らせたりしないから。

泣いたらうるさいから泣かない。

泣きたいのは僕じゃなくて、パパだから。

反抗なんてしない。

嫌だって言ったり、辛いって言ったりなんかしない。

だって、パパのほうがもっと苦しいもの。

パパはいつも僕の事を殴るけど、それは僕がいけないからだよね。

僕がパパの言いつけを守れなかったから。

僕が悪い子だから。

ごめんなさい、パパ。

パパのために何も出来なくてごめんなさい。

どうしたら、パパを楽にしてあげられるのか分からない。

僕がいなくなればいいの?

僕が死ねば、パパを楽にしてあげることができる?

なら、死にたい。

それでパパが楽になるのなら。

殺して、パパ。


どうしてこんなに僕はだめなんだろう。

頑張っても頑張っても、パパは僕を殴る。

まだまだなんだ。

パパの理想に僕は届かない。

どうしてこんなに僕は馬鹿なんだろう。

「お前が言うことを聞かないからだ」

パパの声がずっと耳に残っている。

どうしたら、パパの怒りは静まるだろう。

ごめんなさい。

ごめんなさい。

パパ、馬鹿な僕を許してください。


ママへ

ママはよく言うよね。

「あんたなんか生まれてこなければよかった」って。

その言葉を聞くと、胸が寒くなった。

どうしてそんなことを言うの?

僕はいらない人間なの?

パパも僕の事を要らない人間だと言う。

僕はどうして生きているのかな。


ママが僕を置いて何も言わずに出かけるときがある。

僕を置いてどこに行くの?

僕を一人にしないで。

寂しいよ、ママ。

僕の事なんか嫌いになっちゃったの?

胸が凍る思いだった。

嫌われたら生きていけない。

「ママ、行かないで」僕は必死にしがみ付く。

ママ、一人ぼっちにしないで。

ずっとそばにいて。

「陸、一人でお留守番してなさい」

泣けなかった。

泣くとパパが怒るから。

「パパのほうがお前より辛いんだよ」とパパが言うから。

ママが出かけていく。

僕はそれを呆然とした表情で見送った。


僕は何とかしてママの気を引こうとした。

嫌われないように、わがままを言わない。

ママの言う「いい子」になるんだ。

もうママに「いい子にしなさい」なんて言われないように、僕はママの言うことを聞く「いい子」になった。

本当は、僕は「いい子」なんかじゃない。

本当は、僕はわがままだから。

でもママが「いい子」になることを望むなら、ママの言うことを聞く。

ママのことが好きだから。

ママが望むことは何でもしてあげる。

もっと僕を見て。

寂しいよ、ママ。

ママが大変なの、僕知っているよ。

だからわがままを言わない。

だから、ママ、僕をほめて。

よくがんばったねって。

それだけで、僕は嬉しい。


書き終えてほっとした。

「じゃあ、手紙を届けますね」

天使はそう言った。


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