ご都合主義と言われないために
今回のテーマは『ご都合主義と言われないために何をするべきか、超初心者はこう考えた』です。また、それに絡めて『伏線』や『設定』を話しに盛り込むことも触れます。
ただ、お含みおき頂きたいのは、このエッセイは超初心者の私が他の作品を読んで感じたことや、自分の作品で実践している手段であり、独断と偏見ですので、これが正解だ! ということを申すわけではありません。
また、全てのご都合主義を払拭できる訳でもありません。
その上で、参考程度にして頂ければ幸いです。
まず、ご都合主義とは何か、それについて考えてみましょう。
様々な意見がありましょうが、私の考えはこうです。
ご都合主義とは――
“伏線や設定の説明なしに、何かしらの超常的手段や事象を用いる、または登場人物の思考や知識に変更を加え、主人公側にとって有利な状況に持っていくこと”
とりあえず私はこう定義して、この定義のものにならない様に試行錯誤したわけです。
では、ご都合主義になりやすい場合を、手段や事象ごとにカテゴリー分けして見ていきましょう。
1.能力やスキル
昨今、ゲームやゲームを舞台にした小説の影響か、スキルという言葉が当たり前になりました。少し古い時代には、特殊能力や必殺技とかいう言葉だったですかね。
さて、呼び方はさておき、ここで問題になるのがスキルの発現のタイミングです。
登場人物がピンチになった時や、敵が強さを見せつけた後など、ここぞという時にすっごいスキルでそれを切り抜けたい……が、ちょっと待ってください。
それ、後出しですよ!
そうご都合主義の原因は、“後だし”にあるのです。
よく推理小説で、「実は犯人は双子だった」とか「犯人は超能力を使った」など、読み手に一切明かされていなかった情報をトリックに使うのはタブーとされています。
これは他のジャンルでも当てはまると私は考えるのです。
作者にとって熱意をもって“ここぞという時”な場面を書いているのであれば、読者にとってもそこは力が入る場面です。
いったいどうやってここから勝つんだ……
そう思っています。
しかし、実は主人公は時間を操るスキルを持っていて、今まさにそれが発現した。そして、その能力で敵のボスを一方的に攻撃して勝った。
または、「俺に皆の力を貸してくれ」と言って、魔力なりエネルギーなりをあつめて、超絶威力の攻撃で勝った。
そんな展開になったら、ご都合主義感が強過ぎるのです。
(皆さんは、こんなちゃちな展開はしないでしょうが……^^;)
決して、スキルの内容を言っているのではありません。
時間を操れるスキルが潜在的にあるなら、主人公がそれを持っている描写を“ここぞという時”の前にしておく必要があるのです。
例えば『日常の中で、テーブルから落ちそうになったリンゴを、時間を止めて咄嗟に掴んだ』とか『他の人物に、特別な能力があることを言わせてスキルの存在を匂わせる』など、なんでもいいので前もって触れておくだけでいいんです。
「みんなの力を――」ってタイプも同様で、『主人公が力を集められるスキル持ちである』や『魔力やらを受渡し出来る世界の設定』を描写した方がいいのです。
これだけで後出しではなくなり、ご都合主義感は断然薄くなります。
考えてみてください。
将棋は相手の駒を奪って、自分の駒として使用できます。
終盤の難しい局面で、奪っていた駒をバンッ!と出してきて、状況をひっくり返したら「そこでそれを出すのか!? やるな!」って気になりますよね?
でももし、ポケットの中から、家から持ってきた駒をバンッ!って盤上に指して、しかもそれがルールとして認められたら「何してんだよ!? 都合よすぎだろ!」ってなりませんか?
妙な例えですみません。
今回は戦闘シーンでしたが、何かを解決するような場面では、後出しはやめた方がいいでしょう。
ちなみに、能力を使うことへのリスクや制限の有無については、ご都合主義というより、物語内の強さのバランスの話になるので、割愛させていただきます。
2.自然現象・物理法則
戦いの中で、知略に加えて地形や自然現象を利用して勝つとかっこいいですよね。
諸葛孔明やハンニバルなど、軍師が活躍する戦術・戦略だけでなく、個々の戦闘でも、足りない力や戦力差を地形や自然現象を利用して勝つと、熱くなるものがあります。
例えば――
山の中で巨大なゾンビの群れと戦っている勇者一向。その圧倒的な数の前に、ゾンビを召喚し、操るボス――ネクロマンサーに近づくことが出来ない状況だ。
「ゾンビどもを何とかしないと、ネクロマンサーに辿り着けない」
唸る勇者の前に突然、土石流が起きた。
その結果、ゾンビが全て流され、ネクロマンサーが孤立した。その勝機を見逃さず、飛び込みざまに放つ勇者の一撃が、ネクロマンサーを切り伏せるのだった。
はい、そこの土石流、OUT!
自然現象も突然起きて主人公たちに有利に働くなら、それはご都合主義ですね。
『その地域の雨季で大雨が多い』とか『その地帯がゆるい地盤だった』とか、前もって描写が必要です。
ただ、もし可能なら、前もって細工などをして意図的に起こした様にするのがいいでしょう。ラッキーはあまり何回も使えない手ですし、ちょっとご都合主義感が拭えません。
また自然現象は大規模なものだけでなく、熱膨張や電解など、科学実験に出てくる様な事象、いわゆる物理法則もあります。
登場人物が、勝ち誇った感じで「なんでお前の技が破られたか理解できるか? それは○○の原理を使ったからさ」って説明する奴ですね。
こういう物理法則的な事象は、起こるべくしてそうなる法則なので突然出しても問題はないでしょう。ただ、前もってその物理法則が出てくるのを匂わせておく方が、物語として説得力が増します。
3.道具
次は、所持品についてのご都合主義です。これについては、たまにしか見かけないですね。
なんでも入るバックとか、水が無くならない水筒とか、発想は自由ですから機能についてどうこう言うわけではありません。問題なのは、それを“どうして持っているのかの理由”です。
(あんまり便利過ぎるスーパーグッズは、ご都合主義以前の問題ですが……^^;)
敵から手に入れたとか、代々受け継がれているなど、持っている理由は様々でしょうが、便利な道具であればある程、しっかりとした理由が必要になります。
極端な例ですが、旅人のマントを道具屋で手に入れたなら問題ないですが、“透明になれるマント”を道具屋で普通に買ったなら、ちょっと待てってなりますよね。
この場合、道具屋で透明のマントが売っている理由もつけてあげないといけなくなります。
つまり、便利度が上がると理由のしっかり度も上がってゆくのです。
4.敵の思考
突然ですが、とても強い敵を描きたいですよね。
でも、これが上手くいった時、陥るのが
――これどうやって勝つんだ、これ……
です。
この時、敵の力を弱くする様な愚行は皆さんはしないでしょう。
でも、ちょっとやりがちなのが、敵の思考の弱体化です。なんだそれ、ですよね。
つまり変身するまで待ってくれる敵ですね。え? 分かんない?
す、すみません。
えっと、要は主人公たちの策や技を、まともに受けちゃう強いキャラですね。
「ふふふ、回復してやろう。そして、全力で掛かってこい」みたいな戦闘狂や武闘派のタイプの性格で描いていたなら、待ってくれたり、真正面から受けたりするのはいいんです。
でも、そんなキャラじゃないのに、真正面から受けたり、はたまた、無意味に止め刺さなかったり、主人公の策に気付かなかったり……
具体的な例をあげられませんが、戦闘の際は、敵の視点に立ってみましょう、そして、『こうするば邪魔できるじゃん』とか『こうしてら主人公の技が効かないな』とか考えられるなら、さらにその敵の考えを封じる状況や設定を考えましょう。
5.最後に
冒頭に『伏線』や『設定』を話に盛り込む方法にも触れると申しましたが、スマートに上手くやる方法をご説明はできません。ごめんなさい、私が知りたいくらいです。
あくまで方法の1つ、いや心構えぐらいを言及するということにさせてください。
さて、ここまで説明したご都合主義と言われないためには、前もっての描写が必要と言いました。つまり、『伏線』や『設定の説明』を前もって行わなければならないわけです。
逆に言えば、ご都合主義を避けようと思えば、自然と『伏線』や『設定』を話に盛り込む形になるのです。
そして、それはト書きで説明するだけでなく、登場人物にセリフで説明させたり、はたまた物語の中に出てくる文献などに記載するなど、あれこれ工夫をすることになります。
え? それが難しいんだ?
まぁ、そうですね。
私も“ここぞって時”に「あ、これについて何も説明してない」ってなって、前の話に戻って『伏線』や『設定』を話しに盛り込みます。
でもそんな時って、ゲームのRPGをやっている様な気分で楽しいんですよね。
「そのスキルはまだ使えません」って言われて、それを使える様に段階を踏んでいく感じが似ていて。
だから、伏線とか設定を盛り込むのは、難しく考えずに、RPGをやるように段階を踏んでいきましょう。そうすれば、最低限の情報しか書かないので、設定過剰になることも少ないかなと思います。
考えて切り抜けてくのは冒険と同じです。だから創作は面白いのではないでしょうか。