chapter3「蠍」
3作目の夢は、蠍。
私は良く夢を見る。大体悪夢だが。
1日の疲れを引きずってのろのろと布団に潜る。思えばこの時からもう悪夢を見る予感はしていた。
私はあまり眠りが深くない上に寝付きが悪い。故に夢を見る。この日は珍しく10分程度で寝たと思う。
一続きの夢だった。忙しなくすぎる、1日の記憶を夢の中で味わっていた。
夢を眺めながらふと気がつくとただただ広い真っ白な空間にいた。その空間に言い表せられない程の恐怖を感じ、どう走ったか自分の家の寝床に着いていた。外はもう真っ暗でとてつもない疲労感だけを感じ、取り敢えず家に帰れたことに安堵の息を漏らしつつ、もう寝ようと布団を持ち上げた時
布団の中の暗闇から黒い蠍が1匹、右の手のひらにゆっくりと乗った。
真っ黒で、毒を持った尻尾がピンとたった立派な蠍だと思った。
不思議な事に恐怖感はなくただひたすら感心と興味心が沸きだった。じっくりと観察をしてみると蠍の顔には蠍らしい顔がなく、代わりに人間の口が付いていた。にたりと笑った意地の悪そうな口だと思ったその時、その口は私の手のひらの親指の付け根あたりを啄んだ。まるで、味見をしているようだった。ゆっくりと咀嚼をし終わった蠍は口を開いて、
「――――――」
反射的に、聞いてはいけないと思った。
全身に力を込め蠍が何かを言う前に目を覚ましバッと飛び起きる。
バクバクと脈打つ心臓を抑えながら右手を確認すると、ちょうど啄まれたくらいの大きさに痣ができていた。
読んでいただきありがとうございました。
黒い蠍は突然の災難に苦しめられる、問題が悪化する、突然と体調不良に見舞われる等があるらしいです。
また、自分の身の回りの人が自分に悪意を持っていて計画しながら危害を加える機会を伺っている等もあるようです。