.みつけれない
「もう、あのひとのことはすきじゃないから」
つよがり、なんて、自分が一番よくわかってる。
だけど、あのひとのことを想えば、痛む。
あなたのなまえすら、狂おしいほどのリアリティをもってあたしを苦しめる。
苦しくて、苦しくて、痛くて、もうだめだった。
弱いあたしは、傷ついてまであのひとのことを想えなかった。
否、想うことはできる。でも傷つくのがこわいのだ。
だから、もうあのひとに興味のないふりをした。
そうしておけば、いつかこの想いは消えるだろう。そう思って。
そうしておけば、いつかこの痛みは消えるだろう。そう思って。
べつに、すきじゃなくなることなんて、たいしたことじゃない。
そう、自分にあたしは言い聞かせた。
弱いあたしの、見えすいた虚勢。
そうしなきゃ、あたしが壊れそうで、怖かった。
だけど、
だけど、できなかった。
手はあなたのぬくもりを。
目はあなたのすがたを。
耳はあなたがあたしを呼ぶ声を。
鼻はあなたのにおいを。
五感が、すべてがあなたを探していた。
否、探さずにはいられなかった。
恋しかった。懐かしかった。
あなたが、ほしかった。
そんな自分に気付いてしまったとき、あたしはまた、壊れた。
虚勢をはることで、護っていた「自分」。
それさえも、あたしは失ってしまった。
結局、いつの間にかあなたはあたしの一部になっていたのかもしれない。
あなたがいないから、心にぽっかり開いた穴が、ほら、こんなにも痛む。
いつから、こんな自分になってしまったのだろうか。
いたい、いたい、いたい、あいたい。
いくら求めても、
もうあなたはもどってはこない。
そう、あたしはただ夢をみていただけ。
ほら、そう思えば、すこし楽になれる。
そうして、あたしはあなたへの想いごと、消えていくのだ。
「ねえ、あたしを見つけてよ」
あなたにすら届かない声は、いったいどこへいくのだろうか。