第一章プロローグ「大臣就任希望」
よろしくお願いします!
␣␣␣日が既に落ちた深い夜。月が登ってからかなりの時間が経つにも関わらず、未だに街の灯があちこちで夜空を照らしている。流石の王都でも街道はすでに人通りが少なく各地の店を今は暖簾を既に下ろしてしまっている。人通りの少ない深夜だからこそ、今、ある1人の男が少し肩を落としながら歩いていることも、すぐに目についてしまう。
「······」
␣␣␣その青年はじっと地面を見つめながら一言も話さずに歩いていた。季節は冬のがようやっと終わったような季節で、いまだに少し冷たい風が吹く。少し目にかかるくらいの金色の前髪が風になびかれる。その風を受け、彼の止まった時間がようやく動き出す気がした。ゆっくりと顔を上げて満月、とはいかないが少しだけ欠けた月を眺めながら息を吸う。そして、ほぅっと息を吐く―――――――――。
「明日、か······」
␣␣␣神妙な顔で彼は夜空を見上げる。呟いた一言は彼にとってどういう意味を持つのか、それは彼以外には――――とうてい分からないことであった。
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␣␣␣木造建築で、二階建てのそこそこ歴史を感じられる古い宿屋の前に彼――――真田木星は立っていた。彼は少しだけな眠たそうにんんっと唸ると、その観音開きの木のドアを右手で押して開ける。
␣␣␣受付と少しばかりの会話をした後、二階の部屋に受付横の階建を使い、廊下を渡り、指定の部屋に入り、電気を付けず、ベッドにうつ伏せで寝転ぶ。飛び込むという表現が正しいほどに思い切り。
「······」
␣␣␣暫く毛布に顔を埋めてから、その体制のまま窓をぼぅっと眺める。そして――――考える。今までの事、いままでのこと。
――――この世界に来る前に日本という、ニホンというヒトの死ぬ国の事。
――――この世界に来た後出会った、妖精と龍の血を引いていた青年と······。
――――――――虎の女王の死と。
␣␣␣たくさんあったたくさんしんだたくさんきえたたくさんないた············。
␣␣␣木星は目を瞑る。現実から目を瞑る。だが脳裏に焼き付く。だから抗う。運命に。
「はははっ!臭い臭い台詞だな······」
暫く沈黙。
「こうなっちまったらさ、この世界を俺色に、皆色に変えちまおう。変えて塗って染めて、楽しい世界にしてやろう」
␣␣␣がばっと跳ね起きカーテンを閉めに窓に近寄る木星。それと同時に決意を固める。
「変えるなら大臣が良い。大臣になって世界を変えてみたい。そうだな······響きはかっこ悪いけど、俺らしいっちゃあ俺らしいな」
――――そして、眠る。明日に備えて。
「······よし!明日からは忙しいぞ!明日からは······」
眠る。
「大臣だ!」
␣␣␣これは一人の人間が大臣となり異世界を自分色に塗り変える物語。
「やっぱり大臣って響き悪いな、勇者とかの方がかっこよくね?」
――――の、はずだ。
プロローグで伏線っていっぱい作るもんなのかってのが今の気持ちですけど······兎にも角にも、一章スタートです!