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1話〜聖剣を探す旅(1)

 幼馴染のリュエナが十六歳の時に聖剣の担い手となり、聖剣と仲間を集める使命を果たす為、リュエナは故郷から旅に出ることを決めた。

 そしてそれに俺もついて行くことを決め、今、俺たちは二人旅をしている。


 そして新しい島、新しい森で、今、オオムカデに襲われていた。


「「うわぁぁぁぁぁ!?」」


 オオムカデ。足の数は約200本。顔は人より少し大きく、長さに到っては約10メートル超。そんなのが5匹、俺たちのことを追い回している。最初1匹だけだったんだけど、逃げてる内に2匹増えてた。

 俺は苦戦するが、リュエナならこんなやつらたぶん倒せるだろう。だが、森の生き物をあまり倒してしまうのはよろしくない。変に生き物を狩ると、植物や他の動物の数に影響が出たり、変な病気が流行ったりするからである。

 命の危機に瀕したらやむを得ないが、それでも、一応新米の冒険者として、無駄な殺生は控えておきたいところだった。

 が、現状を鑑みると、一体の内に倒しておけば良かったと思わなくもない。


「くそっ! 裏目だ畜生!」

「数がどんどん増えてるよ!?」


 取り敢えず、今は渾身の力で逃げている。

 もうどのくらい駆けているかピンと来ないだけは走っている。そろそろ足が痛い。


「はぁ、はぁっ、くそこいつマジで速い、速い速い! それに諦めが悪すぎる!」

「どうしよリン君!? た、倒しちゃう?」


 かつて世界を救ったと言われる聖剣の担い手。そんな称号を継いだ幼馴染が、俺に意見を求めている。ほんのり頼ってもらえてる。

 頼られるのはすげぇ嬉しい。すげぇ嬉しいんだが、あいにくと、応えられるだけの酸素が今俺の脳にはない。

 つまり、もう、酸欠……


「だ、大丈夫リン君!?」

「だ、ダメ、かも……ゲホッ」


 フラッとした。あ、やばい。そう思った時には、既に俺は転んでいた。


「いでっ!」

「リン君!?」


 俺が転んだと見るや、リュエナは止まり、背後に迫るオオムカデと対峙した。

 オオムカデは真っ直ぐこちらに向かってくる。速度を緩めたりはしない。


「もう! あまり、森の生き物は倒したくないんだよ!」


 そう叫ぶと、前に手を伸ばす。


「導きの聖剣、夜明よあかり!」


 途端、リュエナの手には聖剣が握られていた。

 聖剣の担い手を選び、他の聖剣を呼び覚ます力を持つ剣。伝承上、聖剣の担い手が一番最初に手にする最も有名な剣。ただし、これといって戦う力もないので、特に人気がない剣でもある。


「はぁっ!」


 剣を握ると、そのまま駆け出し、眼前に迫るオオムカデを瞬時に5匹全部を縦に両断してしまった。斬撃の衝撃で左右に飛び、わたわた蠢く虫がなんとも見てて辛い。

 その間だ、転んでぶつけた脛を押さえながら、リュエナを見ていることしかできなかった。


「……う、うぅ……森の生き物倒しちゃった。それに大きいから断面すごいえぐい」


 鋭い表情は一瞬で崩れ、情けない顔でこっちにそんな報告をしてきた。死に掛けながらも蠢いてる部分はあまり気にしない辺りタフだな。

 すぐには死なないまでも、もう追ってこれないだろう。そう思ってオオムカデを見る。俺なら1匹でも苦戦するだろう相手に、特別力を持たない剣で5匹を瞬殺。驚いて声も出ない。

 ……ほんと、差が開くばっかりだな。


「あぁ……しょっと。悪いリュエナ。その、逃げ切れなかった」

「うん。いいよ。襲われたら仕方ないよ」


 そういって笑うリュエナは、息も切れていない。俺は息も上がって少し膝が笑うっていうのに。

 昔は俺の方が少し体力もあったのになぁ……素質なのか、聖剣の加護なのか。


「それじゃ、行こう。リン君、足大丈夫?」

「大丈夫、だな。よし行こう」


 オオムカデの死体に何かが集まってこない内に、軽い早足でその場を抜ける。


「ねぇリン君。森の神殿に聖剣はあるかな?」

「どうだろな。そもそも本当に神殿があるかどうか」


 神殿といっても、こんな危険な森だ、わざわざ確認に来る人なんていない。伝承で残っていたって、本当に実在するかどうかは怪しいところだし、崩壊してしまっているかもしれない。こういう危険な場所の遺跡の情報については、良くて五分くらいだろう。


「……意外と地味だよね、聖剣集め」

「まったくだ」

「だよね」


 足で探すしかない。だからこうして、聖剣の可能性を信じていつ襲われるかわからない森を俺たちは歩いている。


 俺は弱いし、襲われたら死にそうだから、正直この旅は怖い。リュエナが明るく笑っているから、リュエナについてきたことになんの後悔もない。

 だからせめて、リュエナの方が後悔しないでいてくれる位には、役に立ちたいんだけどなぁ……

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